立命館大学理工学部の惣田訓教授は、繊維産業などで使用される難分解性のアゾ染料※1について、「脱色=無害化」ではないことを明らかにしました。本研究では、人工湿地から分離した嫌気性細菌(酸素のない環境で働く細菌)を用いてアゾ染料を分解したところ、97%以上の高い脱色率を示した一方で、分解過程で有害な「芳香族アミン※2」が生成され、水生生物への毒性が増加することを確認しました。これにより、染料排水の安全性を評価する際、脱色のみでは排水の安全性を評価できず、脱色後の毒性評価や後段処理による有害物質の除去が重要であることを示しています。

本件のポイント

  • 人工湿地由来の嫌気性細菌が、難分解性のアゾ染料を97%以上脱色することを確認。
  • 染料の脱色が進行する一方で、有害な芳香族アミンが生成・蓄積し、水生生物(ミジンコ)に対する毒性が増加することを明らかにした。
  • 「脱色=無害化」ではないことを実証し、染料排水処理における毒性評価や後段処理の重要性を示した。

研究成果の概要

 繊維の染色などで使われるアゾ染料は、色が消えれば排水に含まれていても安全になったように見えますが、実際には脱色後も有害な物質が残る可能性があります。本研究では、人工湿地から分離した嫌気性細菌「Clostridium sp. T4」を用いて、難分解性のアゾ染料「Reactive Black 5(RB5)」の分解特性と毒性変化を評価しました。その結果、同細菌はアゾ染料を97%以上脱色した一方で、分解過程で有害な芳香族アミンが生成し、水生生物に対する毒性が増加することを明らかにしました。本研究成果は、染料排水処理において脱色率のみを指標とするのではなく、処理後の毒性評価が併せて重要性を示すものであり、より安全な排水処理技術の開発に貢献することが期待されます。

図1 図:Clostridium属細菌によるReactive Black 5の脱色プロセスと毒性生成機構
細菌の持つ酵素によるアゾ基の切断により、Reactive Black 5(アゾ染料)が芳香族アミン(1,7-ジアミノ-8-ヒドロキシナフタレン、4-(エチルシルフォニル)アニリン)へと還元分解される。染料の脱色に伴い、生成した芳香族アミンに起因してミジンコに対する毒性が上昇する。

詳細は、以下のプレスリリースをご覧ください。
https://www.ritsumei.ac.jp/profile/pressrelease_detail/?id=1316

惣田教授のコメント

 インドネシアやマレーシアを訪れ、美しいバティックをお土産にした方も多いと思います。しかし、その鮮やかな色彩を生み出す染色工程が、現地の水質汚濁につながっている可能性があります。そこで、伝統産業の文化的価値を守りながら環境負荷を低減し、その保全と発展に貢献したいと考えています。本研究の意義は、人工湿地における植物、微生物、基質の働きを生かし、低エネルギーで持続可能な廃水処理の実現を目指すことにあります。今後も自然の浄化機構に学び、地域の実情に適した処理システムの構築を進めます。研究を志す方には、身近な製品や産業が環境とどのようにつながっているのかに目を向け、そこから生まれる疑問を大切にしながら、粘り強く研究に取り組んでほしいと思います。

用語説明

  • ※1 アゾ染料
    分子内にアゾ結合(−N=N−)を持つ合成染料の総称である。鮮やかな発色性や耐久性に優れることから、繊維の染色などに広く利用されている。一方で、環境中では分解されにくく、水質汚染の原因となることがある。
  • ※2 芳香族アミン
    アゾ染料が微生物などによって分解された際に生成される有機化合物の一種である。一部の芳香族アミンは生物に対する毒性や発がん性が指摘されており、染料排水処理において安全性評価の対象となっている。

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