7月9日(木)、びわこ・くさつキャンパス(通称「BKC」)にある、2025年に竣工した現実空間と仮想空間を融合する次世代研究拠点「立命館先端クロスバースイノベーションコモンズ(略称:CVIC)」のクロスバースアリーナにて、国際教養科目Liberal Arts Seminar(5)「Multilingual Seminar」の最終授業を行いました。

 本科目は、日本語以外の言語で学ぶゼミナール型教養科目として開講。英語を共通言語としながら、テキストだけでなく表情や視線、ジェスチャー、映像やAIなどを組み合わせた「マルチモーダルコミュニケーション」を実践的に学び、多様な文化や価値観への理解を深めることを目的としています。本授業には7カ国・地域の学生とTA(ティーチング・アシスタント)が参加し、英語に加え、TAの母語であるインドネシア語、タイ語、ヒンディー語などにも触れながら、それぞれの言葉の背景にある人々の暮らしや価値観、多様な文化への理解を深めてきました。

歩いて、見て、聴いて—世界をめぐるミニ・エキスポ

 最終授業では、多様な文化的背景を持つ学生・TAがプレゼンターとなり、自国の文化や暮らしを紹介する「ミニ・エキスポ」を開催しました。
 会場となったクロスバースアリーナは、壁面と床面を合わせた5面に映像を投影し、リアルとバーチャルが融合した空間を創り出す最先端の研究施設です。360度スクリーンと立体音響を活用し、参加者は映像や音、空間そのものを体感しながら異文化に触れる没入型の学びを体験しました。
 授業は担当教員である薬学部の近藤雪絵教授によるオープニングセッションからスタート。AIアシスタントがさまざまな言語で来場者を迎えた後、英語で授業全体を振り返りました。近藤教授は、大阪・関西万博で体験したイマーシブ空間から着想を得て今回の授業を企画。会場全体に大阪・関西万博の大屋根リングが映し出されるなか、「未来のプレゼンテーションは、フラットスクリーンの前で話すものではなく、空間全体を使って人々を引き込み、共に体験を創るものになるだろう。そして、今がその未来だ」と語りました。
 続いて、教育開発推進機構の矢野浩二朗教授が、平安時代の国宝絵巻「伴大納言絵詞」を360度スクリーン全体に投影。参加者は矢野教授の英語での解説を聞きながら空間内を自由に歩き、絵巻の中に入り込んだかのような体験を楽しみました。
 その後、インド出身のTA、DAS Adhipaさん(生命科学研究科博士課程後期課程1回生)とインドネシア出身のTA、ICHDA Arini Dinanaさん(生命科学研究科博士課程後期課程3回生)が、自国の文化や日常生活を紹介。大きな木の下で授業を受けるインドの風景、インドネシアの伝統布バティック、寺院、コモドドラゴンなどが映し出され、参加者は現地を訪れたような感覚で異文化への理解を深めました。
 最後は、NG Yu Tingさん(国際関係学部2回生)が、約40年前に日本でリリースされた「ハーフムーン・セレナーデ」の広東語版を披露。美しい歌声と映像が会場を包み込み、一つの歌が国や言語、さらには世代を超えて人々を結び付ける力を持つことを実感する時間となりました。

没入する学び

 学生からは「授業を全身で感じられて、自分がその空間に存在していることを強く実感した」「映像がとてもリアルだったので、その国を訪れているような気分になった」などの感想が寄せられました。プレゼンターのDAS Adhipaさんは「360度スクリーンだと伝えたいことをリアルに表現できるし、動きながらプレゼンできるので緊張が和らいだ」と振り返りました。

 授業の最後に近藤教授は「言語は単なるコミュニケーションの道具ではなく、新しい文化、新しい人々、新しい世界への扉です。今回のミニ・エキスポを通して、その扉を開いて先に進む楽しさを感じてもらえたなら嬉しく思います。360度空間は、この施設の中だけにあるものではありません。私たちの身の回りにも、多様な文化や価値観、人との出会いが360度広がっています。今日の体験をきっかけに、多文化社会へ積極的に一歩踏み出してほしい」と英語でメッセージを送りました。

イマーシブ空間が拓く、教育と研究の可能性

 近藤教授は今後の教育と研究の展開について「クロスバースアリーナは新しい学びのあり方を検証することもできる研究施設であると考えています。発表者の空間内での移動や、映像・聴衆との位置関係が、理解度や没入感、参加意欲にどのような影響を与えるのかを分析し、得られた知見をもとに、イマーシブ空間における新しいプレゼンテーションデザインや教育手法の確立を目指します」と展望を語りました。

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