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歴史都市防災研究センター 副センター長  吉越昭久 教授

歴史都市防災研究センターでは研究成果をどのように地域へ還元していますか?

 

歴史都市防災研究センターの研究成果の地域への還元として、地元小学生を対象とした校区のハザードマップ(災害予想図)を製作する企画、地域の自治会の防災計画のサポート、企業からの委託研究をすすめる事業があげられます。

防災は、学術的な研究としてだけでなく、実践してさらに社会に役立たなくては意味がありません。センターでは、京都の歴史的文化遺産として有名な清水寺の防災案を提案。清水寺の地下に水の流れるパイプを通し、災害などがあったときにその水を活用するという案が、実際に採用されています。

また、身近な例としては金閣寺があげられます。昭和30年くらいまで、金閣寺の周辺には住宅はほとんどなく、集中的に防災の対象として保護することができました。しかし、周辺が住宅街となった今では、一軒の火災により文化財が焼失してしまう危険性があります。そのようなことから、特定の文化財だけを保護するのではなく、地域ぐるみで防災の取り組みを行うことが大切であるという発想に基づいて研究を行っています。

これまでは、自然災害からの防災を中心的に取り扱っていましたが、現在では研究対象を人災(放火、テロ、戦争)から文化遺産をどう守るかという点まで視野を広げています。そのためには、国や地域の担当者が防災に対する意識を高めて取り組んでもらわなければなりません。UNESCOの事業の一環として、アジア諸国を中心にその地域の事情を踏まえながら、取り組みを進めています。

設立から3年がたちましたが、このような活動は社会的にどのように受け止められていますか?

 

警察や消防などの行政や自然科学・人文・社会科学の研究者の方々には、良く理解していただいているようですが、一般の方々にはまだまだ十分に浸透していない状態です。しかし、土曜講座などで講義を行い、一般の方々にも多く参加していただいており、手ごたえを感じています。今後は、学術的な難解なテーマの講義だけではなく、一般の方にもわかりやすいような啓発的な文化セミナーを開いていきたいと考えています。より多くの方にホームページや印刷物の広報物を見ていただいたり、展示物などを見に来ていただいたりして、歴史都市防災研究センターをさらに知ってもらいたいと思っています。

学生に対し、伝えたいことはありますか?

 

この活動に学生が関わることのできる機会はいくつかあげられます。 歴史文化財の防災研究に関するシンポジウムやセミナーに参加してもらったり、学生たちが自ら研究したものを歴史都市防災研究センターに展示したいという希望があれば、実現は可能だと考えています。歴史都市防災を研究するサークルや学術系研究会などが結成されることも期待しています。そして、われわれの研究をすすめる際に、調査から研究、発表にいたるまで協力してくれる文化ボランティアが必要になります。これは学生だけでなく、地域の方々も募っていきたいと思っています。地域との連携を通じて、歴史都市防災研究センターを身近な存在として感じてもらいたいですね。

取材・文 伊藤聡子(産業社会学部3回生)
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