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ゲスト講義実施報告「軍縮と国連と日本」(国連事務局軍縮部 元政務官 荊尾 遥 様)

2026年4月15日、「国際連合入門」(担当教員:金児真依)の授業にて、国連事務局軍縮部 元政務官の荊尾遥さんに「軍縮と国連と日本」というタイトルでお話頂きました。

ゲストスピーカー(4.5 荊尾様)②

広島の爆心地に近い中高に通われ、高校生の頃から平和のための国際交流活動に参加され、津田塾大学で国際関係を学びながら、9.11の同時多発テロをきっかけに、立命館大学の学生とともに「世界学生会議」を企画された荊尾さん。
津田塾大学で国際関係学修士号を取得後、NGO、国際機関、日本政府(国連代表部・大使館)、そして自治体(広島県)の職員という様々な立場・現場から、ライフワークとして軍縮や平和構築に取り組まれてきました。

荊尾さんが大学生の時に訪れた南アフリカは、アパルトヘイト時代に核兵器開発を推し進めましたが、その後の民主化に伴い、1989年には核兵器を自ら廃棄、1991年には核不拡散条約(NPT)に加入し、核軍縮においてリーダーシップをとり続けていることを紹介くださいました。

ゲストスピーカー(4.5 荊尾様)③

専門調査員として勤められた在オランダ日本大使館化学兵器禁止条約班(2008〜2012)では、化学兵器禁止条約(CWC)を担当されていたとのこと。2013年にシリアで化学兵器が実際に使用されるまでは、常識として化学兵器は「使えない兵器」として認識されており、化学兵器禁止機関(OPCW)で化学兵器保有国の廃棄状況の定期報告がなされ、あとは、産業検証等で不拡散に力を入れれば良いという状況であったところ、まさか本当に現代社会で化学兵器が使用されるとは思ってもいなかったとのこと。

荊尾さんが2012年から2014年まで務めた軍縮部の下にある国連アジア太平洋平和軍縮センター(UNRCPD)では、生物兵器禁止条約(BWC)に関する政府向けワークショップをネパールで実施したところ、ネパールによる同条約批准につながる等の成果があったとのこと。その後荊尾さんは広島県平和推進アドバイザーとしても、2016年のオバマ大統領の広島訪問の実現にも奔走されました。

2017年、国連で「核兵器禁止条約(TPNW)」が採択された歴史的瞬間には、国連軍縮部の大量破壊兵器室の政務官として立ち会われました。核兵器禁止条約は、法的拘束力を持つ核軍縮関連の条約として、長期の機運醸成を経て採択・発効したものです。その際自身のNGOの経験もふまえ、採択のための交渉の過程では国際NGOのICAN(アイキャン、2017年ノーベル賞を受賞)をはじめ市民社会による報告や被爆者による証言が最大限活用されるようにサポートされたとのこと。世界各地で核実験により被爆した「グローバルヒバクシャ」を含めた被爆者の人々をはじめ、市民社会が国連による国際的規範の発展に大きく寄与した例です。

同時に、近年世界の軍事費が過去最高を更新し続けている一方、軍縮関連機関の予算規模は極小であると紹介。昨年から国連全体への拠出金も大幅に削減されかつてない逆風が吹いている中でも、国連は国際規範形成のため、各国の国益調整を引き続き行う「場」であるだろうと述べていました。

ゲストスピーカー(4.5 荊尾様)④

核兵器禁止条約(TPNW)の締結国は、2026年4月時点で74か国(95か国署名)。「日本は唯一の被爆国なのに核兵器禁止条約を締結していないが、日本政府は今後どうすべきなのか」という学生さんの問いには、今の世界情勢の中で各国色々タイミングと段階があること、まずは締約国会議にオブザーバー参加をすることもアイディアとして指摘がなされていることを共有しつつ、本年4月下旬から行われる5年ごとの核兵器不拡散条約(NPT)運用検討会議に向けて、日本政府が中心となり発出されたばかりの軍縮・不拡散イニシアティブ(NPDI)による共同声明も、タイムリーに紹介されました。講義終了後も、質問されたい学生さんの列ができていました。

立命館も舞台に平和に取り組んできた荊尾さんの生き方自体に感銘を受けたとの感想が多くみられました。世界学生会議に参加した荊尾さんの仲間の米国人学生が国連の機能不全を批判する人々に対して発した言葉「(地球規模課題解決のために)あなた自身は何をしているんですか?」が響いたようです。

ゲストスピーカー(4.5 荊尾様)①

プロフィール 荊尾遥(かたらお・はるか)
津田塾大学学芸学部 国際関係学科卒業、津田塾大学大学院国際関係学研究科修了 在オランダ日本大使館化学兵器禁止条約班、国連アジア太平洋平和軍縮センター、広島県平和推進プロジェクトチーム、国連軍縮部大量破壊兵器室、インド工科大学ハイデラバード校(国際協力機構[JICA]専門家)、国際機関日本ASEANセンター、国際連合日本政府代表部、国連訓練調査研究所(ユニタール) 広島事務所勤務等。