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ゲスト講義実施報告(元UNHCR現地事務所長 / 同志社大学嘱託講師 千田悦子様)

2026年4月21日、「国際機構論」(担当教員:金児真依)の授業にて、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)アフガニスタン、ウクライナ、南スーダン等の紛争地を含むフィールドの最前線で長年ご活躍され、JICA青年海外協力隊、国際NGO、自治体ソーシャルワーカー等としての幅広いご経験もお持ちの千田悦子様にお話し頂きました。

ゲストスピーカー(4.21千田様)②

難民・避難民の緊急人道支援の現場における課題、世界における貧困・圧倒的な格差と富の集中の問題、日本の安全保障、そして国際社会における日本の役割に至るまで、示唆に富んだ講義でした。

UNHCRは国連機関の中でも一番、危険な現場での活動も多い機関の一つです。
元難民高等弁務官の緒方貞子さんの「不完全でも決断をした方が次がある」との言葉、そして千田さんが「心の師」と仰ぐ、ペシャワール会の故中村哲医師の「生きておれ。命さえあれば次がある」との言葉を胸に働いた各紛争地での過酷な体験の数々が共有されました。

2001年の9.11同時多発テロ発生時、千田さんはアフガニスタンのカンダハールで勤務され、報道されない事実も沢山現地で目撃されたとのこと。現場の状況と実際に報道されることのギャップや、世界の国々の貧困と格差だけでなく、アメリカ社会内部における格差も含め、一握りの個人への富の極端な集中を、現在の諸課題の根源的な問題として位置づけました。

2014年、千田さんはケニアのダダーブ難民キャンプで勤務中、武装集団による身代金を狙ったと思われる人質未遂事件にあい、銃撃され誘拐されそうになるも弾が外れ、NGO職員にかくまわれ間一髪で助かったという過酷な経験をお持ちです。銃を向けられ、死を覚悟した千田さん。その瞬間においても千田さんは、自分を撃とうとした貧しそうな身なりのソマリア人らしき男性を見て、こんな行動に訴えるしか道が無くなった境遇に思いを馳せ、申し訳ないという気持ちになったとのこと。ケニアの全国紙に顔写真が掲載され、ダダーブの勤務からの撤退を余儀なくされました。

ゲストスピーカー(4.21千田様)③

この経験はトラウマとなりUNHCR早期退職の一因となりましたが、このままで終えたくないと、2016年、ウクライナへ赴任しました。2022年にロシアがウクライナに本格侵攻する以前からドンバス地域では紛争が続いており、日々防弾車で検問所を越え、緩衝地帯で国内避難民(IDP)を支援された経験を共有くださいました。さらには、貧困や病気や障害のため、国境を越えて「難民」になることも、国内で移動して「国内避難民」になることすらできないまま、紛争地で「家さえあれば生きていく」としている人達に防寒具や家屋修復資材などの物資支援をした経験も生々しく語って下さいました。「国際機関は人間が人間を守るために作った道具である」との言葉が印象的でした。

平和憲法を持ち宗教的多様性に寛容で、比較的中立的であると見られている日本という国の出身者だからこそ国際協力の現場で信頼されてきたこと、日本はそういった独自の価値と平和への貢献のあり方を維持するべきと説かれました。最後には、日々何を食べるか、何を着るか、買うかといった、私たちの日常のすべてのことが世界とつながる「投票」であり選択・意思表示であるということを説き、市民が社会問題に関心を持ち行動することの重要性を、学生の皆さんへのメッセージとして残されました。

千田さんの根底に流れる、人間に対する愛と強さ、平和のために行動する勇気に胸を打たれた、自分も行動しなくてはと思ったとする受講生が何人もいました。

ゲストスピーカー(4.21千田様)①

プロフィール 千田悦子
京都府生まれ。1985 年津田塾大学国際関係学科卒業後、日本国際ボランティアセンター(JVC)ソマリア研修ボランティア、ヒューマンライク総合学園職員、青年海外協力隊西サモア秘書隊員(JICA 事務所)を経て、ボストン大学医学部公衆衛生学科及びハワイ大学ソーシャルワーク学科各修士号を取得。ハワイ州政府福祉省社会福祉局児童保護課で虐待児童及びその家 族のソーシャルワーカー(ケースワーク担当)として勤務。1996年より UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)にて、ジュネーブ本部、ケニヤ、アフガニスタン、ジブチ、ザンビア、モザンビーク、南スーダン等で主に現場 担当官、プログラム担当官、現地事務所主任等を歴任。2016年よりウクライナのキエフ代表事務所恒久的問題解決担当官、2017年よりドニプロ地域事務 所現場担当官として勤務後、2019年8月UNHCR早期定年退職。
2026年3 月現在、京都府嘱託職員(児童一時保護所児童指導員)、岡山大学経済学部非常勤講師、同志社大学グローバル地域文化学科嘱託講師、佛教大学OLC講 師。社会福祉士・精神保健福祉士。

著書:『アフガニスタン祈りの大地』清流出版社(2002年) 
共著:『国際緊急人道支援』(内海成治・中村安秀・勝間靖編)ナカニシヤ出版(2008年)、 『現地と世界とつなぐ私達の仕事』(加納弘勝編)津田塾大学オープンリサーチセンター(2008年)、 『地球を救う仕事(第4巻)』(2008年)汐文社