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ゲスト講義実施報告(元UNHCR駐日事務所 副代表 小尾尚子様)

2026 年5 月15日、Professional Workshop(担当教員:金児真依)の授業にて、UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)に30年以上勤務され、難民保護・法務の分野で豊富なご経験をお持ちの小尾尚子様にご講義いただきました。
小尾さんは、UNHCRのケニア、フィリピン、タイ、日本の事務所、またスイス・ジュネーブ本部で、上級法務官、上級政策オフィサー、女性・子どもの保護やジェンダー平等に関わる職務などを歴任されています。 

ゲストスピーカー(5.15小尾様)②

まず、学生は、世界の強制移動者数が2024年末に日本の人口に匹敵する1億2300万人に達していること、難民だけでなく、国境さえ越えられない国内避難民が圧倒的に多いこと、難民の多くが欧米ではなく低・中所得国に受け入れられている現状を知りました。
国内避難については、気候変動にも起因して、紛争よりも災害によって避難を余儀なくされる人の数が多いとのことでした。また、各地での危機はますます長期化しており、現在、難民が避難生活を送る期間は平均で20年以上に及んでいるとのことでした。 

小尾さんは、自身が難民支援に関わり始めた1980年代に比べても、  難民保護とUNHCRはかつてなく大きな課題に直面していると言います。
自主帰還、庇護国での帰化を含めた定住、第三国定住といった解決策は、国内問題を優先し軍事費を増強する各国による人道支援資金の縮小と難民受け入れへの消極的姿勢により、実現がますます困難になってきているとのことでした。さらに、世界的な人道支援資金の深刻な不足に加え、ガザやウクライナなどの現代の紛争において、民間人、援助関係者、保護されるべき施設が直接の攻撃対象となるなど、国際人道法に対する明白な違反が起きていることも、状況をいっそう悪化させているとのことでした。

ゲストスピーカー(5.15小尾様)③

自発的帰還、庇護国への定住、第三国定住という恒久的解決策がある一方で、紛争の長期化や第三国定住ニーズの拡大により、解決までの道のりが非常に厳しいことが紹介されました。また、近年は紛争の増加、人道支援資金の縮小、援助関係者や医療への攻撃、ジェンダーに基づく暴力、移動する人々の安全への障壁などが、難民保護を取り巻く深刻な課題となっていることが共有されました。 

授業の最後にはケーススタディ形式のグループワークが行われました。
学生たちは、特定のシナリオをもとに、自分がUNHCRの保護担当官としてフィールドに派遣された場合どのような対応をとるかについて、真剣に議論し発表しました。さらに、難民に対する世論や支持を高めるためのアドボカシーについても考え、難民の経験を人間的に伝え、誤解を事実と共有価値に基づいて解きほぐすことの重要性を確認しました。

今回の講義は、難民保護の法的枠組み、現場での人道支援、国際機関でのキャリア、そして受け入れ社会の意識形成について総合的に理解を深める貴重な機会となりました。 

ゲストスピーカー(5.15小尾様)①


プロフィール 小尾尚子 
国際基督教大学行政学研究科(国際法・国際機構論)博士号。およびカナダウィンザー大学国際関係論修士号。UNHCRに約30年にわたりケニア、フィリピン、タイ、および日本などのUNHCR(地域)事務所、及びスイスジュネーブの本部で上級法務官、上級政策オフィサー、国際保護局コミュニティ開発、女性、子どもの保護、ジェンダーの平等担当課長、駐日副代表など、法務・難民保護の分野を中心にキャリアを積む。2005年に神戸で開催された世界防災会議にもかかわる。現在国際基督教大学大学院において「難民・人の強制移動研究I &II」を担当。