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ゲスト講義実施報告(赤十字国際委員会(ICRC)駐日代表 榛澤 祥子様)
2026年5月18日と19日、国際機構論・国際人権法ゼミ(担当教員:金児真依)の授業にて、赤十字国際委員会(ICRC)駐日代表の榛澤 祥子様にご講義いただきました。
今回の講義では、ICRCの起源と法的性格、中立・公平・独立という人道原則、国際人道法(IHL)の実務上の意義について、現代の紛争事例を交えながらお話しいただきました。
ICRCは1863年に創設された組織であり、政府間国際機構でも国際NGOでもなくスイスの私的団体でありながら、ジュネーブ諸条約にその役割が明記された独自の形態の国際機構・人道支援機関です。
また、赤十字・赤新月運動の中では、紛争下の保護を担うICRC、各国で活動する赤十字・赤新月社、各国社の連盟であるIFRCがそれぞれ役割を分担していることも説明されました。
続いて、ICRCの活動の根幹にある「中立」について、紛争当事者のいずれにも与せず、継続的に信頼を得ることで、現場へのアクセスを確保する姿勢として説明がありました。
ICRCは武器を持たず、武装護衛を原則として用いず、非公開の対話を通じて当事者の行動変容を促します。収容施設の訪問、被拘束者の処遇改善への働きかけ、医療施設の保護、民間人避難の実施、遺体・捕虜・人質の交換立会い、家族再会支援など、外からは見えにくい活動の一つひとつが、人びとの尊厳を守るための重要な実践であることが紹介されました。
講義の後半では、国際人道法が「戦争の是非」を判断する法ではなく、「戦争の仕方」を規制する法であることが確認されました。
負傷者、捕虜、民間人、医療従事者や医療施設を保護するという基本原則がある一方で、近年の紛争では、ガザやウクライナなどで民間人や医療施設への攻撃、人道支援従事者への危険が深刻化しています。さらに、AI、ドローン、サイバー攻撃、民間人による情報提供や拡散など、現代戦における新しい技術や行為が、誰を攻撃対象とし得るのかという実務的な課題を生み出していることも示されました。
日本での活動については、自衛隊・防衛省とのセミナーや演習への参加等を通じ、平時から国際人道法の理解を広げる予防的な取り組みが行われていることが紹介されました。榛澤代表はICRC主催で毎年行われる国際人道法模擬裁判・ロールプレイ大会国内予選で立命館大学・立命館アジア太平洋大学(APU)が活発に参加し優秀な成績もおさめてきたことにも触れられ、参加を促されていました。
今回の講義は、国際人道法に則ったICRCの活動が、戦時だけでなく戦後の和解や平和構築にもつながることを理解する貴重な機会となりました。また、国際人道法が現場でどのように適用され、どのような限界や課題に直面しているのかを知ることで、学生たちは人道支援の仕事に求められる専門性、粘り強い対話、そして人間の尊厳という人類共通の規範を守るための姿勢について理解を深めました。
講義後、榛澤代表は立命館大学国際平和ミュージアムに立ち寄られました。戦争の記憶と歴史の継承とアーカイブの重要性、現代社会の諸課題に有機的に繋がる展示の構成等について深い関心を示されるとともに、その意義を評価されていました。
(写真は右から榛澤代表、田鍬美紀学芸員、および国際機構論で4月にゲスト講師を務められた千田悦子様)
プロフィール
赤十字国際委員会(ICRC)駐日代表 榛澤 祥子 (はんざわ しょうこ)2019年にICRCに入り、駐日代表部の人道調整顧問として政府をはじめ関係当局との協力を強化。中立・公平・独立の人道の諸原則に基づいたICRCの活動や、国際人道法の普及に努める。2023年6月より現職。ICRC以前は、外務省や国連難民高等弁務官事務所、国境なき医師団に勤務するなど、10年以上人道支援の分野に携わっている。アフガニスタン、イスラエル・パレスチナ、ミャンマーなどにも赴任。米国コロンビア大学で国際関係学の修士号を取得。