TOPICS

ゲスト講義実施報告(国連IOMインドネシア事務所 プログラム・政策部長 冨山麻里子様)

2026年度の「Professional Workshop」(担当教員:金児真依)の授業にて、国連IOM(国際移住機関)インドネシア事務所プログラム・政策部長で、立命館大学国際関係学部の第一期生でもある冨山麻里子様にご講義いただきました。

ゲスト(5.22 富山様)②

9か国から集まった受講生へ、大先輩の富山さんから、IOMの理念である“Making Migration Work for All”を軸に、migrationを自発的な留学・就労・家族統合から、紛争、迫害、貧困、災害等による強制移動までを含む幅広い人の移動として捉える視点が示されました。

世界では約3億400万人が国際移住者であり、移民は社会や労働参加を通じて、出身国と受入国の双方を支える存在となっています。こうした移民の貢献は地域社会にとって双方に利益をもたらすものであり、日本も含め世界中で同視点に立った議論が見られるようになってきていることが説明されました。

ゲスト(5.22 富山様)③

IOMは1951年に設立され、170カ国以上で活動する移住分野の主要機関として、人道支援、開発、平和構築を横断し、移動する人びとの命と尊厳を守ること、避難の長期的解決を進めること、安全で秩序ある正規の移住経路を促進することに取り組んでいます。

講義後半では2018年に国連で採択され、人権の尊重を軸に各国の移住課題への取組みと国際協力の枠組である2030アジェンダとともに、「安全で秩序ある正規の移住のためのグローバル・コンパクト(GCM)」について、拘束力を持たないことが広い参加を可能にする一方、実効性をいかに確保するかという課題もあることが示されました。
日本における人身取引被害者支援、自主帰還・再統合支援、第三国定住支援、結核スクリーニング、ビジネスと人権に関する取組みなど、IOMの具体的な活動が紹介されました。

ゲスト(5.22 富山様)①

学生にとって特に印象深かったのは、短編映像や映画を用いたディスカッションを通じて、移住を統計や制度の問題だけでなく、一人ひとりの経験、アイデンティティ、差別、世代間の葛藤、受入社会との相互理解の問題として考え直した点です。
オンライン詐欺によって取り残された移住者への支援や、特定技能労働者をめぐる自治体間協力の事例から、IOMの仕事が政策形成から現場での心理社会的支援まで広がる実践であることも学びました。

日本でも外国籍住民との共生や移民受入れ政策をめぐる議論が注目される中、移民を支援の対象としてのみ見るのではなく、地域社会の一員として尊重し、移民とホストコミュニティが相互に学び合う包摂的な社会を築く重要性が示された講義となりました。

ゲスト(5.22 富山様)④

プロフィール IOMインドネシア事務所プログラム・政策部長 
立命館大学国際関係学部を第一期生として卒業後、米国ワシントンD.C.のアメリカン大学で国際関係論(平和・紛争解決)の修士号を取得。移住、開発、人道支援のさまざまな分野において、リーダーシップおよびマネジメントに関する長年の実務経験を有する。現職以前は、ジュネーブの国連移住ネットワーク事務局に勤務し、加盟国との連携およびIOMとの調整を主導。また、バンコクにあるIOMアジア・太平洋地域事務所では、地域戦略、政策、パートナーシップを担当し、ASEANとIOMのパートナーシップも主導。IOMミャンマー事務所長も務め、その以前には帰還移住および人身取引対策を含む移住者保護の専門家として活動。キャリア初期には、IOMおよびNGOセクターにおいて、政策、プログラム管理、資金調達、パートナーシップ、調査研究などに携わった。