卒業生からのメッセージ

文学部での学びが社会でどのように活かされているかを、卒業生からのメッセージを通じて紹介します。

2019

サービス

人の営みや歴史が詰まった資料の魅力を伝えたい。何をどう見せるかが腕の見せどころ。

日本史学専攻考古学コース 2014年卒業

株式会社トータルメディア開発研究所(西日本事業本部 事業推進部 4課)

文字も文献もないところから探る縄文時代の人々の知恵や工夫

父は小学校の先生です。歴史学が専攻だったこともあり、子どもの頃から博物館などに連れて行ってもらう機会が多くありました。実際に足を運び、見たり聞いたりすることで、机では学べない知識を得る喜びを感じていました。小学校の自由研究のテーマに博物館を選んだこともありました。

考古学を大学で学びたいと思ったのは、高校の授業で山形県の遺跡にフィールドワークに行ったことがきっかけです。実物の遺跡を目にすることでその迫力や奥深さを肌で感じ興味を持つようになりました。
進学先を考えていたところ、立命館大学には古代から近現代までそれぞれの時代を研究する専門の先生がいらっしゃることを知りました。全ての時代のエキスパートがいる大学は本当に珍しいのです。広く歴史を学んだ上で、専門を絞っていくことが大切だと思っていたため、幅広い時代を低回生のうちに学び、3回生時からの専門演習(ゼミ)で深める研究テーマを決めていけるというカリキュラムも魅力的に映りました。

2回生の時、日本史学専攻の先生に「先の時代を知るためには前の時代を学びなさい」と言われた言葉が強く残っています。私は日本史の文化的な起源とも言える「縄文時代」の研究を深めることを決めました。文字もない、文献もない縄文時代を知りたいと学びの意欲が出てきたのです。縄文時代は何を手がかりに研究するのか。それは、「もの」から学んでいくのです。どのような素材で、どのように作られているのか調べます。例えば木の道具が出土したとしたら、木の種類、切り取り方などを見ていきます。すると、縄文時代に生きた人の知恵や工夫が見えてくるのです。その土地に生えていた木だからという理由だけでなく、例えば住居の柱には硬く水に強い栗の木を使うなど、この時代の人々は意図的に選んでものづくりをしていたことがわかります。

未知の部分を明らかにしたいと大学院へ進学

大学卒業時も、まだまだ勉強したい気持ちがおさまらず大学院(立命館大学大学院文学研究科)へ進みました。大学の4年間で様々な資料の見学はできましたが、実際に発掘したり、研究したりというところが十分でなかったので心残りでした。すでに出土されているものから研究するには限界があります。まだ明らかにされていない未知の部分を明らかにしたいという気持ちが大学院への進学を後押ししました。

発掘調査のアルバイト

発掘調査のアルバイトもとてもいい経験になりました。京都のある場所で高速道路が建設されるにあたり、発掘調査がありました。古墳時代のものだと思われる農具や槽(そう)など約800点近く出土しました。それらを丁寧に洗い、一つ一つ略図を添えて、寸法、特徴などを記録していく作業をしました。根気のいる大変な作業ですが、とてもやりがいがありました。そんなアルバイトがあるのも、京都ならではの魅力かもしれません。

文化施設の調査・構想・計画・展示設計、製作を総合プロデュースする会社へ就職

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会社実績:福岡市科学館(上)三重県総合博物館MieMu(みえむ)(下)

大学時代から博物館関係の仕事がしたいと思っていました。考古学を勉強した人の多くは、行政機関の発掘調査に関わる仕事に就く人が多いのですが、私は在学中、発掘調査に携わった経験から、発掘した文化財の歴史的意味や魅力を分かりやすく伝えることも大切だと感じていました。歴史の一コマや人々の営みが詰まった文化財の魅力を現代に伝えていきたかったのです。魅力的な展示を追及している民間企業で、最先端の展示の視点や手法を学びたいという思いで就職活動を行いました。学芸員の資格を企業で活かそうとする人は稀で相談できる人は少なかったのですが、必死に情報を集め、やりたいことができる会社を探しました。そして出会ったのが今の会社です。

様々な展示方法の中から、どう見せるかをチームや協力先の会社と共に考え、創りあげていくことができるというのが我が社の最大の魅力です。調査・構想・計画・展示設計・製作を総合的にプロデュースすることができます。

弊社は、博物館だけでなく、企業の研修施設や、観光施設など多岐にわたる施設の企画、運営、管理など総合的な提案ができる会社です。山口県のある案件に携わった時は、「外国人の方に地域の観光を楽しんでもらうために、あちこち散策してもらおう」と考えました。起点となる場所で、その地域の歴史をグラフィックで紹介したり、名産物をディスプレイしたり、訪れてほしい場所のマップを置いたりしました。

文字だらけの表示ではなく、大きく迫力のある写真で視線を集め、もっと知りたくなるような導線を作る工夫をこらしました。様々な手法を日々勉強し、肥やしにしています。

学び方を学びたい人、学びたいことに迷いがある人には最適な文学部

離れた場所にある資料や展示でも「自分の目で見て情報を取りに行く」という姿勢を大切にし、研究に取り組んでいました。京都市考古資料館の企画展に携わる機会があり、ゼロから計画を立てたり、最善の展示方法を探ったり、最後の最後まで考え抜きました。展示方法の基本的な扱い、そして見る人の立場になって考えることの大切さが大きく学びとして残ったと同時に、もっといい見せ方があるはずなのに、自分の知識が足りないと悔しく思ったのです。今の仕事にとても活かされていると思います。

学びたいけど、学び方がわからないという人、もしくは学びたいことにまだ迷いがある人にとって、立命館大学文学部は最初のステップが踏み出しやすい学部だと思います。大学入学前にできること、それは、明確でなくてもいいから「ちょっとやりたいこと」を見つけておくことだと思います。

故郷への恩返し いつかは文化施設を作りたい

いつかは自分が生まれ育った山形県に文化施設を作るのが夢です。お世話になった故郷に少しでも恩返ししたいという気持ちです。培った企画や設計、自分なりに考える施設の課題、すべてのノウハウを詰め込みたい、そう思っています。歴史と聞くと構えてしまう人が多いのですが、今までできなかったことを実現するデジタルの新技術の力を借りながら、いかに楽しく、わかりやすい展示にできるのか、チャレンジ精神をもって模索していきたいと思います。既存にプラス1の提案ができるように、これからも貪欲に、たくさんの経験を積んでいきたいと思います。


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