8つの学域

地域研究学域

地域研究学域

AREA STUDIES PROGRAM

「千年の都」京都で、
地理・観光を学ぶ

地域研究学域は地理学専攻と地域観光学専攻の2つの専攻から構成されています。両専攻が共通して対象とする「地域」とは、さまざまな現象が相互に影響し、絡み合うなかで、他とは区別される特徴を帯びた空間的な広がりを指します。
地理学をベースとし、空間スケールを自在に変え、多角的な研究視点・手法も交えながら、現代的な諸問題に取り組むことを目指します。そのために地理学が伝統的に重視してきた、フィールドワークに基づく現場主義のアプローチと、地表空間上の諸事象を地図化するアプローチ(地理情報システム(GIS)など)の活用がなされます。

COLUMN

教育・研究の“リアル”を発信、教員コラム

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都市の魅力とは何かを追い続けて

都市の魅力とはなんだろう?これが私の研究の原点です。幼少期、「自分達が日本の産業を支えているんだ」という強い自負を抱いていた職工さんが大勢住む企業城下町で私は育ちました。時は日本の高度経済成長期、通学した小学校は約8割がそうした工場労働者の子供達で構成されていました。近所に何軒もある街の酒屋では、仕事帰りの人達が朝や昼前から「角打ち」を楽しんでいました。社宅(アパート)に住む人達は、ほぼ同じ生活環境で暮らしており、つましいながらも大らかに生活していたと記憶しています。また、春は会社主催の運動会、夏は盆踊り、秋には広域にわたる街をあげての起業祭が開かれ、学校も休みになりました。まさに地域全体が活気に満ち溢れていたといえるでしょう。

しばらくして、日本をオイルショックが襲います。親に連れられ、ひとり1個の洗剤やトイレットペーパーを買いにスーパーにも並びました。その頃から老朽化した工場から大消費地に近接した工場や設備の整った最新鋭の工場へ向け、労働者がひとり去りふたり去り…。気が付くと机を並べて一緒に学び、遊んだ同級生がいつの間にか親と一緒に社宅を離れて行きました。次第に街がさびれて行く姿を目の当たりにしたのです。これにはほぼ軌を一にして進行した郊外化の流れも影響したのだと思いますが、「活気ある街」とは、「それほど裕福でなくてもお互い助け合って豊かな生活を送れる街」とは何だろう、それが持続可能な都市の魅力につながる基盤だと考え、探究し続けています。

時代はさがり、現代の日本はサービス経済、グローバル経済隆盛の時代です。かつて多くの工場労働者で支えられていた都市は、今では多くのオフィスパーソンが行き交う都市へと変貌しています。なかでも大都市では超高層のオフィスビルが林立し、タワーマンションが相次いで建設されています。都市経済はオフィス活動や商業活動、飲食・娯楽産業などの活動で支えられている側面が益々強くなっているといえるでしょう。

少子高齢化、人口減少社会が到来している現代日本にあって、今ほどの超高層オフィスビル、タワーマンションは今後も必要でしょうか。地方商店街の多くがシャッター街化しているなか、コロナ禍以降日本にも定着してきたリモートワークも手伝って、次はシャッターオフィスビルやスポンジ化する超高層マンションなどが今にも増して話題となる時代が到来することを危惧しています。もちろん、新たな時代に合わせて都市は新陳代謝を繰り返し、改造(再開発)されていくのでしょう。しかし、その際には画一化された外観を持つ建物ばかりで構成される街ではなく、写真に示したロンドンの街のように、都市の歴史や遺産を建物にいかす周囲と調和した街づくり、それが都市の持つ魅力にもつながるのではないでしょうか。

古賀 慎二

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