8つの学域

国際コミュニケーション学域

国際コミュニケーション学域

INTERNATIONAL STUDIES AND ENGLISH COMMUNICATION PROGRAM

英語圏地域の文化を学び、
英語の多様性と奥深さを極める

国際共通語としての英語学習を軸とし、英語圏の地域と文化、国際言語としての英語や教育について広く学ぶことができます。英語圏の文化と言語に関する諸科目や、それらと連携した学術英語(EAP、English for academic purposes)科目、英語で開講される専門科目や長期・短期の留学プログラムなどを通して、学びの集大成である卒業論文を英語で執筆できる運用能力を育てるカリキュラムを提供します。
実践的な英語運用能力に加え、グローバル化時代を牽引する、批判的な思考力を備えた人材の育成を目指します。中学校・高等学校の英語教員免許を取得しやすいカリキュラム編成も魅力のひとつです。

COLUMN

教育・研究の“リアル”を発信、教員コラム

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使い慣れた母語を土台に、外国語を学ぶ。 バイリンガル教育は、言語教育の新たな挑戦。

みなさんは、日本に来た外国の子どもたちに日本語を教えるとしたら、どんな方法がいちばん効果的だと思いますか?日頃使っている母語をシャットアウトし、朝から晩まで日本語の本を読んだり、テレビを見たり、日本語に囲まれた環境をつくれば、早く上達できるでしょうか。

私が研究するバイリンガル教育は、そんな今までのやり方とは正反対のアプローチを行なう言語教育の手法。子どもたちが大きくなる過程で身に付けた母語や継承語※を、これからの成長のために必要な土台(言語資源)として大切にしながら、それをむしろ積極的に活用して第二言語の習得に結びつけていきます。
※継承語:両親・祖父母とのやり取りの中で身に付けた言葉


私が研究の一環で支援を行なうある小学校を例に、もう少し具体的にお話しましょう。その小学校には、日本人に混じってガーナから来た児童も通っています。子どもたちは、家庭ではガーナの公用語である英語やファンティ語を使うため、日本語をまだ自由に使えず、授業についていくのに苦労します。そこで、原作が英語の読み物を国語で学習する際に、英語での読み聞かせをしたり、日本語、英語、挿絵などの情報を駆使しながら説明するなど、さまざまな工夫をしています。

こうした取り組みは、英語を母語・継承語としない児童・生徒の指導にも広がっています。子どもたちは、今まで学校で使ったことがなかった自分たちの母語で話せることがうれしくて、自信も生まれ、自分の感じたことをイキイキと話すようになり、先生との会話を通じて日本語のより深い意味まで理解するようになります。2つの言語・文化を持つことを誇りに思い、自らが持つ言語資源をフル活用し、主体的・対話的に学ぶことによって思考力を高め、自分の言いたいことを適切に表現できる人を育てることがバイリンガル教育のめざす目標です。

また意外に思われるかもしれませんが、バイリンガル教育は、ろう教育の場面でも活用されています。「聴覚に障害がある子ども」とネガティブに捉えるのではなく、「日本手話と日本語を使うバイリンガル」とポジティブにとらえるところから、バイリンガルろう教育は始まります。ろう者が使う日本手話は、日本語とはまったく異なる固有の言語ですが、書記言語がないため、日本手話で育つ子どもたちは必然的に2つの言語を習得する必要があります。ここでも、重要な言語である日本手話の発達を基盤に日本語の力を育てるというバイリンガル教育のアプローチが有効に作用します。

佐野 愛子

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