8つの学域
言語コミュニケーション学域
言語コミュニケーション学域
LANGUAGE AND COMMUNICATION PROGRAM
ことばとコミュニケーションに関わる
多様な問いを探究し実践する
コミュニケーション表現専攻では、多様なコミュニケーションの分析と実践を行います。また、新しいメディア環境における小説や歌、アナウンス、広告など、言語表現も対象とします。
言語学・日本語教育専攻では、“ことば”を用いた思考やコミュニケーションを客観的に分析します。また、日本語を外国語として学ぶ人たちへの言語教育を、異文化間コミュニケーションの考えに基づいた実践から学びます。
こうした学びから、自己と他者との関係性を再発見し、グローバル社会や新しいメディアに対応できる次世代型コミュニケーション能力を養います。
教育・研究の“リアル”を発信、教員コラム
読む、書く、歩く、「ことば」で世界の平和を紡ぐ――AIと共存する時代だからこそ、人に会い、本を読み、町に出よう。
私は、詩や小説はどのように生まれるのかというシンプルな問いを、ずっと探究しています。新しい表現方法を探して、人に会い、本を読み、町に出ます。近年は、表現の未来を見据えて、他の言語の文学研究者や実作者たちと連携しながら新たな書き手を育てる「文学レジデンシー活動」にも参加しています。
世界の争いはやまないし、自分のせいでもなく悲しい思いをしたり、大切な人を失ったり、命を奪われたりする人もいる。私にできることはないだろうか。本を読み、教室やパン屋で友達と語らうごく普通の生活を送りながら、高校生の頃はいつもそんなことを考えていました。弱い立場の人の力になりたいと、高校 2 年生くらいまでは法律家を目指していましたが、あるときふと、自分が興味のあるのはむしろ、どうにもならない悲しみや苦しみに寄り添える「ことば」を探すことだと気づきました。直感的に「学ぶなら文学か哲学だ」と思い、両方学べそうなフランス文学科に進みました。そこで詩人のボードレールや小説家のモーリアック、ジッド、カミュや福永武彦、遠藤周作などを読み、一方で「人生の階段図」というフランスの民衆版画との出会いから、日本の絵解きや紙芝居などの口承文芸や高畑勲のアニメーションにも関心を広げました。そんなさまざまな学問との出会いを経て、現在は小説や脚本の創作や表現の研究をする学生の教育に携わっています。
私のゼミ(専門演習)では、小説や脚本やエッセイなどの文章創作を行う学生と文章やメディア表現の研究に取り組む学生とがともに学んでいます。ゼミ生は3回生と4回生が合わせて30名ほどで、そのなかには留学生もいます。授業では、学生が作品の構想や研究計画を発表したり、制作物や論文などについて互いにアドバイスしあったりしながら、卒業制作や卒業論文を準備します。表現を自ら創りたい人と表現の仕掛けを解読したい人との問題意識が絶妙に絡み合い、互いに刺激しあって、よい相乗効果が生まれています。教育現場での学生との対話は、私にはいつも教わることの宝庫です。「先生にとって一番悲しいことってなんですか」「三宮駅の近くに大きな穴があって空襲の後だと教わりました。戦争はそんなに遠い時代のことでもないのですね(アジア圏留学生)」など、学生の「ことば」でこちらが立ち止まって自己を振り返ることがしばしばです。
西岡 亜紀