卒業生からのメッセージ
文学部での学びが社会でどのように活かされているかを、卒業生からのメッセージを通じて紹介します。
2019
その他私という生き方を貫いて人生の選択肢を示せる大人になる
- 言語コミュニケーションプログラム 2015年卒業
フリーランス文筆業・PRライター・イベントディレクター
文章で表現することに夢中になった学生時代
立命館大学文学部では多様な学びを得られましたが、印象的だったのが授業の中で体験した「ストーリーテリング」です。「クラスメイトの前で好きな作品(小説でも映画でも何でも)について物語のように紹介する」といった課題があり、私のストーリーテリングでクラスメイトが泣いてくれたんです。中学生の頃から表現することは好きでしたが、目の前の人が感動して泣いてくれた体験は初めてでした。高校3年生のときにちょっと辛い時期があって、たまたま読んだ梶井基次郎の『檸檬』に救われたことがあり、そこから、「言葉のちから」を信じるようになりました。表現を学びたくて芸術大学を志望した時期もあったのですが、高校の先生に相談をしたら、もっといろんな人との出会いがあり視野が広がる総合大学を奨められて、立命館大学を志望しました。選択してよかったと思っています。
授業の中でも様々な機会があり、私の言葉で泣いてくれる人を目の当たりにしたり、私が書いた文章を肯定してくれる人たちとの出会いもあり、文章で表現することが好きだと自覚できるようになっていきました。
卒業論文では、卒業制作というかたちで20万字の小説を書きました。「依存型安寧社会の行く末と、人間にとっての幸福とは何か」というテーマで長編のSF小説を書いたのですが、「半年間で20万文字の作品を書ききった」という経験は、その後の仕事の中でも執筆速度の目安や「できる」と判断するための材料・自信として大変役に立っていると思います。
エネルギーの源泉は世の中への違和感
活動のひとつとして所属する一般社団法人でのイベント司会の様子(東京、渋谷)
在学中、就職活動というものに違和感があったんです。多くの友人はリクルートスーツを着て大手企業へのエントリーシートを書いていました。それを否定するつもりはありませんが、「もっと色々な生き方をする大人がいるのでは?」と思うようになりました。選択肢さえ知らないまま、与えられた選択肢の中から選ぶ生き方では、何かがあったときに誰かのせいにしてしまうと思い、自分の目でいろいろな世界を見に行こうと決めました。フリーランス、起業家、NPO法人など、それまで知らなかった様々な生き方をする大人たちに会い、話を聞き、自分にとっての仕事を考え直した結果がフリーランスでした。
フリーランスの仕事は、ライター・PR・イベントディレクターの3つが主な軸です。
ライターとしては、電子書籍の執筆、WEBマガジンでの連載などを行なっています。NovelJam2018秋にて短編小説を執筆し、花田菜々子賞をいただきました。テーマは「家」です。家族について、血縁関係に居場所を見いだせなかった女子高生が、血縁関係のない繋がりに居場所(ホーム)を見出すという内容の物語です。「リトルホーム、ラストサマー」というタイトルで、藤宮ニア名義で電子出版しています。
PRとしては、社会課題解決に特化したコンサルティング・ブランディング/PRの会社を2018年に共同設立し、その会社でも「言葉」の部分を担っています。社会起業家のスタートアップ(起業したての方)は、想いを持っているのに上手く表現することができずPRに困っている方がたくさんいます。想いを持ち、社会的にも素晴らしいことをしているのが伝わらないという課題に対して、その方のもつ「物語」を一緒に紡ぎ届けていくような仕事をしています。この会社の信念として、「恋に落ちるくらい素敵な志を持つ人」と仕事をしたいというものがあります。私個人としても、この感覚はとても大切にしていることです。
イベントディレクターの仕事は多岐に渡るのですが、昨年、ルクア大阪にて「ほめるBAR」というイベントを開催しました。大人って、経験を積むほど褒められる機会が減っていくんです。「やって当たり前」になっていく。それが納得できなくて、まずは東京のバーで小さなイベントを企画しました。それを知って、ルクア大阪さんから出張イベントをやってほしいという依頼をいただいたんです。私からすると、毎日同じ時間に起きて、出社して、家のことをするだけで凄いことだなって思うんです。イベント当日は、数名の「ほめる人」が待機して、事前に予約してくださっていた初対面のお客様を褒めていきます。参加者は一般の方ですが、普段褒める側が多かった看護師や教師、主婦の方などが多く来てくださった印象です。結構ヘビーなお話をしていただけることもあって、途中から、大人たちがボロボロ泣く姿も何度か見ました。素晴らしいことをやっていたり、素敵なところがたくさんあるのに、自分に自信がない大人が多いことを改めて感じました。
言葉を使って表現する者が言葉について諦めてしまってはいけない
活字離れや、エンターテインメントの多様化などを経て「読みやすさ」が重視されがちな時代になりました。だからこそ、私は敢えて、今の時代では使われなくなっていくような日本語(大和言葉と呼ばれるようなもの)も大切にしたいですし、そういったものの美しさに無理なく触れてもらえる機会としての作品制作や場づくりにも挑戦したいです。
また、学生時代から抱いていた人生全体としての目標が「生きる選択肢を示せる大人になる」ということなのは今も変わっていないので、それを達成できるよう、自分自身もいろいろな世界を覗くこと・言葉の力を信じることをやめずにいたいと思います。
立命館大学文学部での学びは、今の私の原点になっています。想いを言語化できる力は社会に出ると痛いほどその重要性さに気づかされます。立命館大学文学部を志望している方や、在学生に伝えたいことは、せっかく文学部にいるのなら、とにかく「色々なものに触れ、書く力や表現を徹底的に磨くべし」ということです。立命館大学文学部は、本当にやりたいことを追求できる環境があります。面白い人もたくさんいると思うので、その環境をぜひ活かし切って欲しいです。