卒業生からのメッセージ
文学部での学びが社会でどのように活かされているかを、卒業生からのメッセージを通じて紹介します。
2024
公務員発掘三昧の学生生活から埋蔵文化財技師へ。県立考古博物館で考古学の魅力を発信。
- 日本史学専攻 考古学コース
(現:考古学・文化遺産専攻) 2015年卒業
兵庫県立考古博物館 事業部 学芸課
文学研究科博士前期課程修了後、埋蔵文化財技師として兵庫県教育委員会に就職し、最初の3年間は発掘現場での調査業務に携わりました。道路をつくったり建物を建てたりする際には地面を掘りますが、その下には遺跡が埋まっている可能性があります。そこで、調査や記録のための発掘を行い、残すべきものをきちんと保存する仕事です。遺跡は日本中どこにでもありますので、各自治体には、私のような文化財担当の採用枠があるのです。
道路建設に伴う古墳の発掘調査-石室および副葬品の刀と壺
立命館大学名誉教授・和田晴吾先生の現場指導
今は、発掘調査や研究の成果を展示する県立考古博物館の学芸員を務めています。展示業務、収蔵資料の管理やメンテナンス、調査研究など、一言で言えば「考古資料の魅力を伝え、未来につなぐ」業務。発掘調査での「より専門的に、深く」とは違い、学術的な正確さは保ちながらも「より幅広く、わかりやすく」が求められる仕事です。
特別展や企画展も、ゼロから自分で考えて実施します。どの展示ケースに何を置いて、どのようなストーリー展開で世界観を組み上げるか。自分の頭の中で考えたことが、さまざまな方の協力のもとで現実の形となり、来館者から「いい展示でした」「多くのことが分かりました」と言っていただけると、大きなやりがいを感じます。
銅鐸の写真撮影
展示のメンテナンス(照明の交換)
日本史学専攻に入学したのは、歴史への興味からです。1回生の時から大学が行っている遺跡の発掘調査に参加していました。掘った土を運ぶなどの下働きをしながら、出土したものを触らせてもらったりしていただけでしたが、何が埋まっているかわからない中で発掘が進み、何百年、何千年前の土器が出てきて、徐々に歴史が明らかになっていく過程がすごく面白いと感じました。その後、授業の合間を縫って自治体の発掘調査にも参加させてもらうようになり、考古学コースでの学びが深まるにつれ、アルバイトとして発掘現場に行くようにもなりました。出土したものをチェックしたり、図面を描いたりする仕事です。今思えば発掘三昧の学生生活でした。
発掘にはチームワークが必要ですし、発掘調査の大きな流れは実際に経験しないと分かりません。数多くの発掘に参加してそれらを体感できたのは貴重な経験でしたし、仕事として発掘現場を回す立場になった際に大いに活かすこともできました。
ゼミでは青銅器が弥生時代から古墳時代にかけてどのように変化していくのかについて研究しました。自由な雰囲気で好きに調査研究させてもらえただけでなく、研究成果報告書のまとめなど実務的なことも経験できたことが、現在の仕事にも活かされていると思います。
ゼミでの発掘調査(京都府五塚原古墳)
ゼミでのフィールドワーク(奈良県石舞台古墳)
立命館大学文学部の強みは、さまざまな専攻があり学びの幅が充実していることだと思います。学生時代、幅広い分野にアンテナを張っていたことが、今、展示業務など本来の専門でない分野の仕事で必要な知識を得るきっかけ、さまざまな物事に興味を持つきっかけになってくれていると感じます。
考古学に関して、一般の方に「モノの声を聴いてみてください」とお話します。ちょっと詩的な表現ですが、勉強すればするほど知識が増え、同じものを見ても読み取れる情報量が増えて、モノ自体がいろんなことを語りかけてくれるように感じるようになるんです。これは考古学を学ぶことの大きな魅力だと思います。私も研鑽を重ね、今日より明日…1年後10年後と、今よりもっと多くの声が聴こえるようになっていきたいと思います。
