教員コラム

文学部には100名を超える教員が在籍しています。一人ひとりのリアルな教育・研究活動を紹介します。

COLUMN

仲間とともに「書くこと」に真剣に向き合う

コミュニケーション表現専攻

言語コミュニケーション学域
教授

清田 淳子

 私のゼミ(専門演習)では文章表現研究に取り組む学生と、小説や紀行文などの文章創作を行う学生がいます。ゼミ生は3回生と4回生合わせて20名ほどで、授業は、学生が順番に研究や作品の構想を発表したり、あるいは論文や作品の本文そのものについて、お互いに意見を伝え合います。これまで小説では、若者の悩みや生き方を描いた作品や、新撰組や花魁が登場する歴史小説、時空を超えたファンタジー小説などの他、東北大震災や留学先での異文化体験に取材した紀行文などが書かれてきました。文章表現研究のテーマも多様で、小説の構造や技巧の分析はもちろん、映画や広告のキャッチコピー、商品のネーミング、さらには国語教材文や役所から届く公用文について調査してまとめた人もいます。また最近ではネットの文章をテーマにする人も増えていて、LINEにおける「断り表現」や「企業の公式Twitter」が取り上げられたこともありました。 

ゼミには「書くことが子どもの頃から好きで、作品を書くために立命館の文学部に来た」という学生もいますが、ここで初めて他の人に読んでもらう文章を真剣に書いたという人も珍しくありません。学生たちが書きあげた作品は、このゼミの卒業論文として一冊にまとめて製本し、最後に全員に配ります。学生たちの作品を読んでいつも感じるのは、「こんなにもみんな真面目に、真剣に人生に向き合っているのか」ということです。文章を書くなかで、学生たちは必然的に自分自身と深く向き合っていきます。書いた文章を仲間に読んでもらうことで、自分と違う視点や考え方を知り、人間としての幅も広がっていくのだと思います。

原稿用紙100枚、4万字にもなる文章を書く経験はほぼ全員が初めてですが、完成したときの喜びは何物にも代えがたいものがあります。作品を通じてそれまで誰にも言えなかった、伝えてこなかった自己(の一部)を開示しても、ゼミの仲間たちは「書き手への敬意」をもってそれを受け止め、感想や意見を返してくれます。私自身、ゼミを運営し続けるなかで、書いて伝えることの素晴らしさを実感することが何度もありました。卒業する頃には、言葉に対する感覚が研ぎ澄まされ、さまざまな文章を読むときに、筆者の意図や思いをより深く読み取れるようにもなります。社会に出てからも、「文章を書く技術」はさまざまな場面で役立ちます。書くことが好き、言葉で何かを創り出すことに興味があるという人は、ぜひ私たちのゼミを訪ねてみてください。

PERSONAL

清田 淳子

専門領域:
文章表現研究、ライティング教育、年少者日本語教育
オフの横顔:
花を育てることが好きで、映画『秘密の花園』に出てくるような庭をいつか作ってみたいと思っています。また、ネコやイヌが大好きですが、自宅では飼えないので、歌川国芳やヒグチユウコの描いたちょっと変なネコの絵に心癒やされています。