教員コラム

文学部には100名を超える教員が在籍しています。一人ひとりのリアルな教育・研究活動を紹介します。

COLUMN

何の変哲もない石に
価値を見つけるのが考古学の醍醐味

考古学・文化遺産専攻

日本史研究学域
教授

長友 朋子

弥生時代から古墳時代にかけて社会がどのように複雑化していったのか、土器生産という視点から研究をしています。遺跡から出土した土器の胎土を分析し、形や仕上げ方などを観察することで当時の野焼き土器の製作技術がわかります。さらに、民族考古学的な研究手法を取り入れ、現在行われている野焼き土器の技術や製作速度との比較検討も行いました。それによって弥生土器の生産量が増加し、分業化していく過程が明らかになりました。このように土器生産から社会がどのように発展していったのかを解明しようとしています。

また、同時期の朝鮮半島の土器についても調査しています。土器の製作技術の違いを比較した結果、朝鮮半島では中国大陸から新技術がもたらされることで製作技術が発達したのに対し、日本列島では窯の導入される以前の弥生時代から古墳時代前期にかけて、大陸からの影響を受けることなく独自に技術の向上や分業化を進展させていったことがわかってきました。

ミャンマーの土器の野焼き風景

遺跡の価値を明らかにし、地域の資源として役立てる

出土した時には何の変哲もない石片に見えたものが、調査・分析によって、思いもよらない意味や価値を発見する。考古学研究のおもしろさはそこにあります。また、研究成果を地域社会に役立てられることも、大きなやりがいです。現在、城陽市教育委員会と協力し、西日本でも最大級の久津川古墳の発掘調査を行っています。これまでの調査でこの古墳には祭祀を行った造出しと、作業道であり儀礼用の道としても用いられた渡り土手のあることがわかってきました。

研究によって遺跡の意味や価値が明らかになって初めて、地域の人が親近感を持って遺跡を大切にし、観光資源として活用したり、地域の活性化に役立てることも可能になります。

現代を生きる私たちが社会のどのような側面を重視するかによって、過去の捉え方は変わります。考古学研究は現代社会を知ることにもつながるのです。

PERSONAL

長友 朋子

専門領域:
考古学
オフの横顔:
旅行が趣味。今は多忙のため、学会や調査を目的とした旅行ばかりなのが残念。中国雲南省の山深い地域の少数民族の村を訪ねたり、坑州で唐代に秘色とされた青磁を見たり、新しいものに出会うのが楽しい!