2026.02.02 TOPICS

社会的養護の子ども・若者を支えるための基盤づくりに向けて ― 阿久津美紀専門研究員・石田賀奈子教授による研究の取り組み ―

 立命館大学では、社会的養護のもとで育つ子ども・若者をめぐる課題に向き合い、その生育環境や権利保障のあり方を多角的に検討する研究が進められています。今回は、三菱財団「2025年度 社会福祉事業・研究助成」に採択された、阿久津美紀専門研究員(衣笠総合研究機構)と石田賀奈子教授(産業社会学部)による2つの研究をご紹介します。




社会的養護における「知る権利」を支える記録管理のあり方
阿久津美紀 専門研究員

 阿久津専門研究員の研究では、児童養護施設などで作成・管理されてきた記録の実態を明らかにし、当事者が自身の記録にアクセスする際に必要な支援のあり方を検討しています。これらの記録は、当事者の人生やアイデンティティを形づくる重要な手がかりである一方、個人情報や第三者の情報を含むため慎重な管理が求められ、「知りたい」という思いが十分に叶えられてこなかった面もあります。本研究は、記録を単なる保存物ではなく当事者の人生と深く結びつくものとして捉え直し、どのように残し、どのように活用していくことが望ましいのかを問い直す研究です。




メディア掲載

 こうした研究の視点は、制度や社会のあり方を考える上でも、多くの気づきを与えてくれます。2026年1月17日付の毎日新聞(総合面)では、特別養子縁組に関する記事の中で阿久津専門研究員のコメントが紹介され、出自を知る権利を支えるためには、記録を一か所で分かりやすく管理することや、当事者に寄り添った形で情報を届ける仕組みが大切だと伝えられました。




研究助成採択

 本研究は、三菱財団 2025年度 社会福祉事業・研究助成にも採択されています。社会的養護のもとで育った人びとが、自身の過去と向き合い、将来を考えるための基盤づくりにつながる研究として注目されています。




乳児院における養育の質を科学的に評価する調査研究
石田賀奈子 教授

 石田教授は、社会的養護の中でも特に乳児院における養育に光を当てています。日本では近年、里親委託を中心とした家庭養育の推進が進められていますが、その一方で、乳児院が担ってきた専門的なケアや役割が十分に評価されないまま議論が進んでいる現状があります。
 石田教授の研究は、

  • 入所している乳児の発達状況の把握
  • 保護者の幼少期逆境体験(ACEs)と現在の生活状況との関連分析

 といった調査を通じて、乳児院の養育が子どもの成長や回復にどのように寄与しているのかを科学的に明らかにすることを目指しています。乳児院で培われてきた支援実践を「見える化(可視化)」し、社会的養護における乳児院の役割や存在意義を示す重要な研究です。




研究助成採択

 本研究もまた、三菱財団 2025年度 社会福祉事業・研究助成に採択されています。乳児院の支援を科学的に検証し、社会的養護におけるより良い支援体制をつくるうえで必要なエビデンスを提供することが期待されています。




おわりに

 阿久津専門研究員と石田教授の取り組みは、「人生の歩みをどのように記述し、保全していくかという視点」と、「生活の場で子どもたちとどのように関わり、成長を支えるかという視点」から、社会的養護を必要とする子ども・若者を支えるための基盤づくりに挑んでいます。それぞれの研究が、当事者の人生に寄り添う支援や、社会的養護の制度をよりよくしていくための一助となることが期待されています。

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