2022年9月23日(金)、福島県双葉町の相馬妙見初發神社にて、「双葉まるごと文化祭」が開催されました。

 「双葉まるごと文化祭」は、双葉町関係者と大学生のプロジェクトチームがタッグを組み、双葉町の地域資源を活用した企画を行う地域文化祭です。双葉町と若者のコラボレーション企画を通して、「たのしそう」を起点に双葉町を知り、多様な人々の新たな対話と交流の場を生み出す「心の拠り所」としての双葉町の再興を目指して開催されました。 本企画は、立命館大学の川上友聖さん(産業社会学部3回生)が共同代表を務めるプロジェクトメンバーと、一般社団法人双葉郡地域観光研究協会(以下、観光協会)、独立行政法人都市再生機構(UR都市機構)の共同で実施されました。

 当日は、まちの伝統文化である「標葉せんだん太鼓」の演奏や、三字芸能保存会による「神楽」が披露されました。また、首都圏をはじめとする10大学と3高校の学生・生徒約50人と双葉町関係者の共同企画による飲食ブースが出展され、都会の生ゴミを肥料にして育てたさつま芋を使った「焼き芋シェイク」やフェアトレードの珈琲、「ふたば焼きそば」などの縁日企画が祭りを彩りました。

 川上さんは、「企画の構想から開催に至るまで、多くの方々に助けていただいたことで無事開催することができました。双葉町の方々が今回のプロジェクトの意義に共感してくださり、多くのご支援をしてくださったこと、「来年もぜひやってほしい」と笑顔で声をかけてくださったことは本当に大きな励みとなりました」と感謝を述べました。

標葉せんだん太鼓

 川上さんが福島県での活動に関心を持ったのは、小学生のとき。東日本大震災の影響により、福島県に住む親族が横浜にある川上さんの自宅に避難してきた際、近親が亡くなり家族が深く悲しむ姿を間近で見たことで、「このまま福島県のことを深く知らずに育ち、何もしないままで良いのか」という思いを抱きました。
 その後も漠然とした気持ちを数年間抱えていた川上さんでしたが、立命館大学に進学後、大学の課外プログラム「チャレンジ、ふくしま塾」の存在を知り、すぐさま応募を決意。オンラインでの講義や双葉町でのフィールドリサーチを通して、被災地の歴史や現在の姿を学びました。

福島のこれまでとこれからに関心を寄せる学生たちと、福島や震災からの復興に関わる教員や専門家と学び、発信活動に取り組むプログラムとして、福島県庁と立命館が連携して2017年度にスタートした課外プログラム。

 プログラム終了後、より主体的に福島県のまちづくりに関わる機会を求めた川上さんは、株式会社リクルートが主催する、地域の課題を解決する事業立案プログラム「WOW! BASE」に参加。双葉町の観光協会の人々と連携し、地域の活性化に向けた事業の立案に奮闘しました。
 そうした過程で、「自分は双葉町をこうしたい」と自分たちの言葉で力強く語る地域住民の姿や、「生まれ育ったまちの風景をもう一度見たい」という福島県出身の祖母の言葉に心を動かされ、中長期的な取り組みで双葉町の再興に取り組むことを決意した川上さん。プロジェクトで関わったメンバーと観光協会の理事とタッグを組み、「SHIBUYA QWS」で「双葉まるごと文化祭」のプロジェクトを立ち上げました。

SHIBUYA QWS(渋谷キューズ):渋谷駅直結直上渋谷スクランブルスクエア15階にある会員制共創施設。「Social Scramble Space / 渋谷から世界へ問いかける、可能性の交差点」をコンセプトに掲げ、社会価値の種を生み出すための活動を支援しています。

双葉町関係者とのミーティング
写真左:川上友聖さん

 川上さんは「双葉まるごと文化祭」の企画を進め、双葉町の人々の文化や思想への理解を深めるなかで、大きく心境が変化したと語ります。「当初は『自分は双葉町で何ができるか』という、自分が主語となる視点で双葉町と関わっていました。しかしある時点から、『双葉町の人々が長く住んでいたいと思う町を実現するために、双葉町の人々とともに町を作っていく』という視点に変化しました。今後も双葉町に関わる人々が、より幸せを感じられるような活動を継続的に行っていきたいです」。

 現在、プロジェクトメンバーは、双葉町の歴史や文化をより多くの人に知ってもらうために、情報発信活動やメディアへの露出を拡大中。北九州や札幌、東京で開催されているSDGsファッションイベント「THAT'S FASHION WEEKEND」にて展示を行い、双葉町の歴史と文化を伝える新たな活動を展開しています。

川上友聖さん(産業社会学部3回生)コメント

 「双葉まるごと文化祭」の開催にあたり、多くのご支援をいただいた関係者の皆さまに厚く御礼申し上げます。運営面で至らぬ部分があり、多くの方々にご迷惑をかけてしまいましたが、地域に根差して活動していくうえでの展望が明確に見えてきたという点は、一つの成果になったと感じています。
 また、今回の企画で特に心に残ったのは、大雨の影響で終了後の撤収作業が難航した際に、地域住民の方々が、ゴミ収集車を用意して現場に駆けつけて作業を手伝ってくださったことです。その際に笑いながら「来年も頑張れよ」と声をかけてくださり、感謝の念に堪えません。
 今後は中長期的なビジョンをさらに磨き、全国各地での情報発信活動を強めていく予定です。多くの方に双葉町を知ってもらい、「楽しそうなまち」だと感じてもらう機会を創出することで、双葉町に多くの方が訪れてもらえるようなきっかけづくりをしていきます。今後とも何卒よろしくお願いいたします。

左から3人目:川上友聖さん

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