OIC H棟・
情報可視化

第1回

〈テーマ〉グローバル人材って何?

多様性ってなんなん?

  • 柏原 誠

    シャリテ・ベルリン医科大学

人種も文化も異なる人が交じり合うドイツ

私は今、ベルリンのシャリテ・ベルリン医科大学国際課でコーディネートの仕事をしています。海外から視察団が来たり、他大学の方と共同研究の打ち合わせをしたりする時に、調整を行うのが私の役割です。シャリテ・ベルリン医科大学の創立は1710年。ノーベル賞受賞者をたくさん輩出し、ニューズウィーク誌「世界の病院ランキング2024」でも6位に入っている有名な大学です。日本とのつながりも深く、明治政府の招きで訪日したシャリテ・ベルリン医科大学とも関係の深い2人の医師が、日本の明治維新後の大学医学教育の基礎を築きました。有名な細菌学者の北里柴三郎もこの大学に留学して感染症の研究をしていましたし、森鴎外もここで公衆衛生を勉強しています。

世界地図を見ると、ドイツはヨーロッパの中心的な位置にあります。どこからもアクセスしやすく、陸続きで電車や車で簡単に入ることができるので、外国人が集まりやすい所です。ベルリンの人口は386万人で、そのうち外国人が25%、私もその1人です。両親のどちらかが外国人であるなど、外国背景を持つドイツ人が15%いるので、人口の40%が外国人、もしくは外国背景を持ったドイツ国籍の人となります。60%がドイツ人ですが、そのうちの半分は、30年ぐらい前まで社会主義国の東ドイツに属していたので、人種的には同じでも文化的には全く違う人たちです。私の職場も非常に国際色豊かで、いろんな人種が混ざって仕事をしています。

自分とは違う倫理や正義感で
生活をしている人がいる

多様性とは、どういうことを言うのでしょうか。日本だと「個性を大事にする」「個人を確立する」などといいますが、ドイツでは、個人があること、個人はそれぞれ違うということが大前提としてあります。その上で、個人は家族や人種、国などに属しています。同じ国に属していても、人種が異なれば文化や生活習慣が違います。つまり、個人は家族、国、人種といった属性、さらに文化、生活習慣、宗教などによって分かれていて、異なるところも共通するところもある。それが多様性ということなのです。個人の中に文化や宗教、家族、人種、国が内包されているという考え方もできますね。そういうさまざまな属性や背景を持つ人たちをベルリンという一つの都市、ドイツという一つの国として運営していかなくてはならない、職場としてチームを作らなくてはならない、そういう時のキーワードが多様性であると私は理解しています。ドイツでは、「それぞれみんなバラバラだけど、多様性っていう名の元にまとまらないといけないよね」という言葉として使われているように思います。

大阪に住む外国人の割合は6%。日本とドイツでは多様性のレベルが異なります。教育の違いも多様性に大きく影響しますが、日本では、皆がおよそ同じ教育を受けるので、似たような思考形態、考え方の人が多くなります。宗教の違いも多様性を形成する一つの要素です。ドイツの外国人ではトルコ人が一番多いのですが、イスラム教を信仰するアラブ圏の人たちは、私たち日本人やドイツ、ヨーロッパ文化圏の人達と考え方が違うことが多々あります。2001年にアメリカで同時多発テロが起こった時、私は強いショックを受け、悲しい思いをしたのですが、アラブ出身の学生が私に「これはいいことなんだ」と話しかけてきた際には、とても驚きました。この経験は、自分の見ている世界とは単なる一面であって、違う世界観、違う倫理や正義感で生活をしている人がいるということに気づくきっかけとなりました。

皆さんは、将来、海外の人たちと一緒に仕事をしたり、海外で仕事をしたりするかもしれません。そうすると、日本にいる時とは違う種類の人とつき合うことになります。価値観が異なる人とつき合うには、自分の許容の幅を広げ、考え方のバリエーションを増やしておく必要があります。そのためには、さまざまな属性や背景を持つ人と出会い、いろんな経験をすることが大事です。言い方を変えると、いろんなカルチャーショックを受けておいた方がいいということです。そのためにも、留学できる機会があるのなら、ぜひ挑戦してもらいたいと思います。

共催

2024年度GPSP(R2030 推進のためのグラスルーツ実践支援制度)採択 「オール立命館で取り組む新しい創発性人材育成プロジェクト「Rising Stars Nexus」の創設」

キーワード

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