OIC H棟・
情報可視化

第2回

〈テーマ〉大学や企業が求める人材?

アジャイルに働く

  • 宮原 京子

    ファイザー株式会社 取締役執行役員

私たちはVUCAの時代に生きている

私たちは今、どのような時代に生きているのでしょうか。2020年、新型コロナ感染拡大によって、皆さんの生活も大きく変わったと思います。しかし、2020年の年頭には、コロナがあれほど広がるとは誰も予想していませんでした。権威ある米国のシンクタンクが毎年発表する「今年の10のリスク」予想にも入っていませんでした。

現代は、予測不能のことが起こる時代なのです。しかも、社会の変化のスピードが早く、次々と起きる事象の因果関係も複雑で曖昧です。ビジネスの世界では、こうした時代をVUCA(ブーカ)の時代と呼んでいます。VUCAとは、Volatility(変動)、Uncertainty(不確実)、Complexity(複雑)、Ambiguity(曖昧)の頭文字からなる言葉。私たちは、このVUCA時代を生きているのです。

若い皆さんは、自分が何年働くかを考えたことがありますか。定年が70歳まで延びるとすれば、大学卒業の22歳から48年間です。VUCA時代の半世紀には、社会や環境はもとより、AIの発達によって仕事の内容も種類も劇的に変わるでしょう。そうしたさまざまな想定外の変化に対応しながらキャリアを積んでいくことになります。

アジャイルに生き、ジグザグに成長する

そこで、今日は「アジャイルに生き、ジグザグに成長する」という言葉を紹介したいと思います。

「アジャイル」とは「機敏な」という意味で、変化が起こった時に、自分がどう機敏に対処できるか、そのためのスキルを身につけておく、心構えを持って生きていくことです。ジグザグ成長というのは、キャリアは一本道ではなく、あっちに行ったりこっちに行ったりするけれども、それが成長につながるんですよ、ということです。

私自身の話をしましょう。私は今、ファイザー社の社員ですが、高校時代は大学の研究者になりたいと思っていました。大学では西洋史を専攻し、大学院で国際関係論を学び、修士号取得のためイギリスにも留学しました。その後、方向転換して就職しようとしたら就職氷河期の時代。それまでの学びと全く違うことをやることになりました。最初に就職できたのがマッキーンゼー&カンパニーというコンサル会社、次にゼネラル・エレクトリックというアメリカの金融会社の子会社に移り、2008年のリーマンショックでリストラに遭って、2010年に今の製薬企業へ。3社はそれぞれ業種も職種もバラバラなうえ、どれも大学で学んだこととは関係がありません。転職の度に、学んだこともない財務会計や統計学、金融の金利計算、体や免疫、薬の開発などを一生懸命勉強して、今があります。私は、「ポジティブにジグザグにキャリアを積んで成長してきた」のです。

皆さんが今関心を持っていること、今やりたいことが将来のキャリアにそのままつながらない場合もあります。また、「こうしたかったのに、なんでこんなことになったのだろう」と思うこともあるでしょう。でも、人生は何度でも学び直しができます。やり直す時間もたっぷりあります。

アジャイルに生きるために、
今やっておくべきこと

アジャイルに生きるためにやっておくべきことを3つ挙げます。1つ目は、学校での学びをおろそかにしないこと。これらは常識のベースになるもので、共通の理解のための根源となります。ただ、その中で大好きなことがあれば、全力で取り組んでください。どこかで必ず活きると思います。2つ目は、健康な身体とメンタルを作ること。適切な食生活、適切な睡眠時間を保ち、生活のリズムを守り、体を動かすこと、これが人生100年を健康で生きるための鍵です。3つ目は、社会と関わること。学校以外の社会、つまり友達や両親以外の大人、多様な人と関わることは、社会性を育みます。好奇心を持ち、「なぜだろう、どうしてだろう」と自分の頭で考えて、自分なりの解釈を持つことを心がけてください。

試行錯誤して失敗するのはOKです。ぜひやってください。近道で正解を見つけようとするのはやめましょう。これは最も「アジャイルに生きられないスキル」です。すぐに正解を求めない、試行錯誤して、失敗して、その中で学び、将来に備えてください。

私は少女時代、L・M・モンゴメリの『赤毛のアン』がとても好きでした。物語は、「あの曲がり角の先にはいつもワクワクした素晴らしい人生が待っているに違いない。だから曲がり角を曲がるのが私は大好きなのだ」というアンの言葉で終わるのですが、「きっと曲がり角の先にはもっと楽しいことがあるに違いない、自分はもっとポジティブに対応できるに違いない」という希望を持って、これからの人生をポジティブに、アジャイルに生きていっていただきたいと思います。

講義を終えて

宮原 京子

ファイザー株式会社 取締役執行役員

小中高生の皆さんも、保護者の方も、一生懸命聞いてくださって、大変楽しく授業ができました。将来に希望が持てるな、ワクワクするなと思ってくださった方が一人でもいらっしゃると嬉しいなと思います。とても素敵な学校で学んでいらっしゃるので、今の時間を大切にし、好きなことに全力に取り組んで世界を広げていただきたいなと思います。長い人生、健康と体づくりにも取り組みながら、まずは大好きなことをたくさんやって、将来どんな世の中になっても「アジャイル」に生きられるようにいろんな経験をしてください。

共催

2024年度GPSP(R2030 推進のためのグラスルーツ実践支援制度)採択 「オール立命館で取り組む新しい創発性人材育成プロジェクト「Rising Stars Nexus」の創設」

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