OIC H棟・
情報可視化

第3回

〈テーマ〉未来のまなびとは?

進歩するテクノロジーを正しく使いこなそう!
~弁護士が教えるSNSや生成AIとの向き合い方~

  • 田中 敦

    田中敦法律事務所 代表 弁護士・ニューヨーク州弁護士

生成AIと情報漏洩・著作権侵害リスク

生成AIを使うときの注意点の1つが、「人に知られたくない情報が生成AIを通して漏洩するリスク」です。個人情報や健康に関する情報など「人に知られたくない情報」は生成AIに入力しないことが大切です。2つ目が、「生成AIが出力したデータによる著作権侵害のリスク」です。生成AIが作ったものをそのまま使うのではなく、それを参考にして自分で考えたり、手を加えたりしてオリジナリティを上げれば、人の作品の盗用になる恐れはぐっと低くなります。生成AIを過信せず、自分の頭で考えて、手を動かすことが重要です。

日本の法律では、原則として人の作品を生成AIの学習に使っても違法ではありませんが、多くのクリエイターが使われたくないと考えていることに留意する必要があります。思わぬところで炎上するリスクにつながります。

生成AIが作ったものに著作権はあるでしょうか。著作権法には、人間が作ったものしか著作権が保護されないというルールがありますが、海外の裁判では、AIに指示を出した人間に著作権があるとされた例があります。では、他人と似た作品を作り、使用するために、生成AIに他人の作品を学習させてもよいでしょうか。過去に、写真を有名アニメ映画監督のイラスト風画像に変換できるアプリが発表された時に、著作権侵害に当たるのではないかと指摘されたことがあり、これはダメといわれるおそれがあります。

AIにも信頼できるものと信頼できないものがあることにも注意が必要です。また、信頼できるAIでも、時には間違うことがあります。生成AIはとても便利ですが、万能ではありません。AIの出力結果が本当に正しいかどうか、自分で手を動かして検証することで、間違ったこと、法にふれることをそのまま発信してしまうリスクをぐんと減らすことができます。

フリー素材使用時の注意点

インターネット上のフリー素材をめぐるトラブルもたくさん起こっています。その代表が、「フリー素材だと思って使ったのが、実はそうではなかった」というもの。訴えられた場合、勘違いだったとしても許されるわけではありません。つい最近も、島根県の学校で、「学校だより」で使ったイラストが、実はフリー素材ではなかったため、使用料を支払ったケースがありました。「フリー素材」との検索ワードで検索して出てきた画像であっても、実は本当にフリー素材であるとは限りません。また、フリー素材であっても利用規約があることが一般的です。本当にフリー素材かどうかのチェックに加えて、どんな規約があるのかにも注意して、利用規約を守って使って下さい。

フリー素材を組み合わせて出力した物は自由に使ってもいいでしょうか。もとはフリー素材であっても、作者の画像が勝手に改変されると、著作権侵害になるおそれがあります。改変の可否についても利用規約を確認しなければなりません。また、生成AIが出力した画像として使用OKとなっている画像も、他人の作品とそっくりの画像であった場合、使った人が著作権侵害の責任を問われるおそれがあります。生成AIで出力された画像を使う場合も、他の人の作品と似ているものではないか、画像検索などをして、しっかりチェックして下さい。

困った時は決して1人で抱え込まないように

有名人の画像やアニメのキャラクターをSNSのアイコンに使ってもいいでしょうか。有名人の顔は肖像権で、キャラクターは著作権で保護されているので、たとえプライベートのSNSでも勝手にアップロードするのはダメです。無料で使えるものとして配布されている公式アイコンを使うようにしましょう。SNSにも利用規約があるので、こまめにチェックし、ルールを知っておけば、トラブルを少なくすることができます。

皆さんがよく使うInstagramも注意が必要です。例えば有名人になりすまして、嘘の儲かり話をして、お金を支払わせる手口もよくあります。子ども同士でけんかをした時に、相手の子になりすましてアカウントを作り、他の子たちの悪口を言いふらすトラブルも実際にありました。SNSを利用する際は、アカウントは本物なのか、これを言っている人は本当に本人なのか、内容は本当に正しいのか、情報の質を慎重に見極めることがとても大事です。炎上やトラブルで困ったときには、決して自分1人で抱え込まず、学校の先生や保護者など大人に相談してほしいと思います。

講演を終えて

田中 敦

田中敦法律事務所代表 弁護士・ニューヨーク州弁護士

これだけ幅広い年代の方を対象とするのはほぼ初めてでした。法律の難しい話なので、面白くない説明もあったかと思うのですが、皆さん非常に熱心に聞いていただき、本当にありがたかったです。素晴らしい設備を使ってお話しできたのも貴重な経験でした。

インターネットや生成AIで面白いことができるという点については、皆さんもう十分ご理解されていると思います。ちょっと気をつけた方がいいよという点について、私が申し上げたことを少しでも覚えていただけたらありがたいです。

生成AIをはじめ、技術はどんどん進歩していきます。新しい技術が生まれた次のステージでは、また違ったお話をする必要があるかもしれません。このような企画をぜひ継続的に開催していただけたらと思います。

共催

2024年度GPSP(R2030 推進のためのグラスルーツ実践支援制度)採択 「オール立命館で取り組む新しい創発性人材育成プロジェクト「Rising Stars Nexus」の創設」

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