「日本最先端のエコスクール」を目指し、キャンパス自体を教育の場へ
〜立命館中学校・高等学校 長岡京新キャンパスが2014年9月に誕生〜
国土交通省「住宅・建築物省CO2先導事業(2012年度第2回)」採択案
2014年9月に開校した立命館中学校・高等学校長岡京新キャンパスは、以下の5つの柱を軸に、建築・
設備技術が融合した新しいエコスクールを実現しています。キャンパス自体が環境教育の「教材」となり、
世界に立命館の取組みを発信します。具体的には、環境配慮技術により、空気・調和衛生工学会教育施設消費平均エネルギー約1600MJ/㎡・年から約70%の削減(深草キャンパスからは約40%の削減)が可能であることを試算しています。
エコスクール「5つの柱」
1. 地域性を活かした計画
- 卓越風・伏流水や生態系といった地域の自然特性を活かした、建築・設備の一体的な計画を行っています。
- 周辺地域の生物多様性の保全と、建物の熱負荷低減を両立する屋上緑化を設けています。
2. 自然エネルギー利用
①「ゼロ エネルギー アトリウム」
- 学校の中心となるアトリウム空間をエコスクールの象徴とし、季節に応じた各種自然エネルギー
の活用と建築的対応の組合せにより、年間のエネルギー収支をゼロ化します。
②教室における取り組み
- 昼光利用や高断熱外装など、外部環境に対応する技術を採用し、省エネルギー化を図っています。
- アトリウムと教室群との間でカスケード空調を行い、相互の温熱・空気環境に寄与します。
③体育館における取組み
- アリーナの居住域空調、煙突効果を利用した多層階に亘る自然換気等、大空間に適した計画としています。
3. ピークカットに寄与する電力デマンド低減
- 節電技術の積極的導入により、平時の省エネルギー化を図っています。
- 太陽光発電による「創エネ」と蓄電池による「蓄エネ」やコージェネレーションシステムにより、電力デマンドを低減しています。
4. 災害時の地域貢献と省エネの両立
- 災害時には体育館を避難所として地域開放できる施設計画としています。
- 「創エネ」「蓄エネ」による継続的な電力確保、生活水の提供などの地域貢献が可能です。
5. 学校活動と連携した環境への取組み
- 環境や技術の「見える化」と環境行動を促進する「試す化」を通じ、一層の省CO2効果をもたらします。
- 時間割を利用した省エネルギー化を計画し、学校の特色を活かした取組みを実践しています。
実践的な教育を実現する、上質な教材としての環境教育棟づくり
〜BKC理工学部新棟「Tricea(トリシア)」※〜
環境省「CO2排出削減対策強化誘導型技術開発・実証事業(2013年度)」採択案件
2014年5月にびわこ・くさつキャンパスに誕生したトリシアは、理工系の実践的な教育を実現し、建物自体を教材にするという新たな発想で建てられた環境教育棟です。トリシアには、企業の協力のもと、あえて天井のむき出しにした配管や高性能建築外皮タイルなど最新の省エネルギー・環境負荷軽減等の技術や設備、建築材料など、建築・環境関連の新技術を導入し、教員・学生が「被験者」となり、その効果検証や改善のための研究を進めています。今回は、トリシアに導入されている、最先端の技術・設備・建設材料をご紹介します。
※立命館大学BKC理工学部新棟「トリシア(Tricea)」の名前の由来について
「Tricea」の「Tri」はTrinityから引用し、「教員・職員・学生」の一体や「産・官・学」の連携を表します。また、「cea」には「Communication(人々の交流や共感とそこから生まれる憩い)」、「Experiment(実験や新しい事への挑戦)」、「Acquisition(知識・学問の習得)」の意味が込められています。
快適性を追求しながら省エネ・節電を実現する
パーソナル空調システム
空調機1台で複数の人が執務・居住する空間をコントロールする時は、人によって「暑い」「寒い」の感じ方が異なり、満足のいく温熱環境が実現されません。今回取り入れたパーソナル空調システムは、居住者それぞれに吹出ユニットを設置し、パソコンなどから個人の好みに応じた吹出気流をコントロールできるもので、快適性の向上とともに、省エネ・節電に寄与できます。
壁面緑化システムの開発
「信楽焼タイルの製造技術による外壁冷却タイルの開発」(経済産業省地域イノベーション創出研究開発事業)で開発した打ち水タイルは、外表面塗布の釉薬による打水機能を付加し、タイル表面に打ち水した水を拡散させ、均一かつ効率よく外壁を冷却することができます。今回、トリシアではこのタイルを使用した壁面緑化を図り、景観デザインに活かしています。また再生水利用や、軽量コンクリートにタイル施工面を予め立体成型し、アルミレールを不要とする工法などの検討を行い、低コスト化の検証も行います。
再生可能な自然エネルギーによる
総合的発電システムの開発
風向によらず、わずかな風でも回転する垂直翼式小型風力発電システムをトリシア屋上に設置し、風況や発電性能の計測を行っています。また、トリシアから出る生活排水や屋上に降る雨水の位置エネルギーを利用したマイクロ水力発電技術を開発し、発電性能や有効性を検証します。将来的には太陽光発電を含め、種々の自然エネルギーにより創生された電力のハイブリッド化を図り、人と地球にやさしい発電システムの
確立に取り組みます。
太陽熱・地中熱利用
地中熱や太陽熱を空調に利用するために屋上に配管を巡らし、地中にも配管を埋設して、配管とポンプのみで室内の温熱環境を良好に保つ新しいシステムを導入しました。太陽熱と年間を通じて15~18 ℃程度の地中温度をそのまま利用することから、「夏は地中にいるように涼しく、冬はサンルームのように暖かい」地球に優しい冷暖房システムの研究を行っています。
存心館・興学館大規模改修
教学の充実と施設環境の改善を図るため、存心館と興学館の全面的な改修を行いました。照明・空調の更新、サッシ断熱化などにより、電気・ガスの使用量減少が見込まれます。
特に存心館は、国土交通省「平成28年度(第3回)既存建築物省エネ化推進事業」に採択されており、15%以上が採択対象のところ、建物全体で約21%のエネルギー削減効果が期待できます。
井戸水の上水利用
地下水の有効利用や災害時の水資源確保の観点からBKC内に上水用の井戸を新設しました。BKC水使用量全体における井戸水の割合を、2017年度は10%、2018年度は20%というように毎年度10%ずつ増加させ、2021年度に50%とする取り決めを草津市と交わしました。
清心館大規模改修
2020年度の文学部カリキュラム改革に合わせて、文学部の基本棟である「清心館」の全面的なリニューアルを行いました。より多様で、より充実した教学を展開できる空間の整備を目指し、歴史ある外観の趣は残しつつ、ゾーニングを再編し内装を一新するとともに、老朽化した各種設備を更新しています。外壁・外部建具の断熱化、照明のLED化、空調設備等の更新により、消費エネルギーは改修前と比較し、建物全体で41%削減できる見込みです。
「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律」に基づく「建築物省エネルギー性能表示制度(BELS)」において、
エネルギー消費性能に優れた建築物として☆☆☆☆☆の評価・認証を受けました。