地域編

アフリカを知る

1. アフリカ地域研究とは

アフリカ研究を、アフリカの自然と人間にかかわる研究のすべてと捉え、アフリカの動植物やアフリカで行なわれる医療や土木についての研究もアフリカ研究とする見方もありうる。ここでは、地域研究(エリア・スタディ)と呼ばれる見方、つまりアフリカを対象とし、アフリカ全体ないし特定地域(例えば東アフリカ)、さらには特定(諸)国に焦点をあわせて、その政治・経済・社会構造を、複数(マルチ)ないし横断的(トランス)な学問領域(ディスプリン)の方法を活用して立体的に究明しようとする学問的試みとして理解しよう。アフリカを対象とする日本の社会・人文科学研究の中で歴史があり水準が高いのは文化人類学だが、以下は現代アフリカの政治・経済・社会を中心に考えていく。

「アフリカ」といった場合、エジプトなど北部のイスラム諸国は中東とあわせて北アフリカ・中東イスラム圏としてまとめられることが多いため、一般にはサハラ砂漠以南のアフリカを差すことが普通である(「サハラ以南(サブサハラ)アフリカ」と呼び、それとの比較で大陸全体を「アフリカ大陸」と呼ぶこともある)。

20世紀末のアフリカは、「貧困」と「紛争」というステレオタイプ化されたイメージで語られることが多かった。だが、21世紀にはいり、アフリカは確実に変わり続けている。第一には、各地における武力紛争の終結も見られるようになった。まだ暴力の止まない地域があることも事実だが、多くのアフリカ諸国において紛争終結後の社会的和解や統合をいかに実現するかも重要な課題になっている。第二に、一人当たり実質所得などからみると、21世紀になり成長に転じ始めたことである。年平均 10%前後の高成長を遂げる国も出てきた。ただし、すべての国が順調なわけではなく、国ごとの格差が大きくなっている。世界的に需要が高まっている金属、石油、天然ガス等の産出国の成長は著しく、非資源生産国でも堅調な成長を遂げた国も現れた。ただし、近年になり、世界経済を牽引した中国の経済成長の鈍化の影響もあり、資源供給で経済発展を遂げたアフリカ諸国の成長の停滞も目に付くようになった。しかし、その一方で、海外からの投資もほとんど入らず、政情も不安定で、経済の低迷が続いている国もある。第三に、国際社会、とりわけ先進国や大国のアフリカに対する位置づけが変わってきたことである。これは日本にとっても重要だが、その理由としてはさらに三つの観点を指摘することができる。

再評価の第一の観点は経済的なもので、新興工業国とりわけ中国の急成長を背景に生じた資源、エネルギー需要の高まりの中での資源供給大陸としてのアフリカに対する再評価である。もっとも積極的なのは世界第2の石油消費国となった中国で、いまや毎年、中国が輸入する原油の2割~3割はアフリカから来ている。第二の観点は、軍事・安全保障面からのものである。アフリカ連合(AU)による地域平和へむけた自助努力とも対応しながら、アメリカなどは9・11後の対テロ対策の一環として世界戦略の面からアフリカを位置づけし直そうとしている。

2. 学習・研究の方法

まず学内図書館の資料を活用することが学習の第一歩となる。立命舘大学図書館所蔵資料だけをとっても、アフリカに関する単行本、雑誌はかなりある。雑誌について注意して欲しいのは、書庫にある現物のバックナンバーだけではなく、ここ数年、急速に充実してきた図書館管理のデータベースの活用である。利用の仕方をマスターすれば、全文がダウンロードできるものも多い。卒業論文でアフリカを取り上げる場合などは、日本語資料だけによる研究は極めて不十分であり、現地の民族語資料は別にしても、最低限英語の文献を活用することは重要である。

各国ごとの概要を知りたい場合、世界銀行の『世界開発報告』や国連開発計画(UNDP)の『人間開発報告書』で主要指標を得ることができるが、もう少し詳しいものでは、例えばEconomist Intelligence UnitのCountry Profile(年報)とCountry Report(季報)は、経済情報中心ながら歴史や政治情報も盛られ、正確さで定評がある。外務省ホームページのアフリカ地域情報は、各国の概要と現状を、とくに日本との関係について知りたいときに便利だ。また国際協力機構(JICA)の国別(あるいは南部アフリカなど地域別)援助検討会報告書は、文字通り援助政策文書だが、主要指標などが基本情報として盛られている。

研究が進んだ段階では、学内図書館にない資料を専門の研究機関や資料センターで検索してみることもよい。インターネットでアクセスできるものとして、例えば JICA(図書館ポータルサイト)やアジア経済研究所(図書館)などがある。

日々の情報を得る手段はインターネットを中心とした各種メディアである。アフリカ大陸すべてをカバーし、毎日数百の記事が掲載される代表的サイトとしてはallAfrica.comがある。国際ニュースで定評のある英国のBBC(英語以外での言語でも発信)やフランスのRFI(英語放送も開始)のウェブサイトにはアフリカのページがあり、ラジオ放送と動画にも連動している。国内では、NHKのBSドキュメンタリー番組、欧米以外の視点として、カタールのAljazeeraや中国のCCTVもアフリカに関する充実した情報・動画コンテンツを英語でも発信している。

インターネットを通して、容易に大量の情報を得ることができるようになった現代においても、現地に直接行くことによってのみ得られる情報や事実確認の機会は数多くあり、調査研究の中心的手段であることに変わりはない。情報源の一つはアフリカで協力活動を行っているNGOである。中には現地のスタディ・ツアーを実施しているものもある。NGOの一つ、アフリカ日本協議会の編集した(2002)『アフリカ理解ハンドブック―アフリカと私たち』によると、118の日本のNGOがアフリカで活動している。国際的な NGOとしては英国のオックスファム(Oxfam)などが知られているが、小火器問題、紛争ダイヤモンドなど個別課題ごとに組織されたものも多い。例えば、紛争ダイヤモンド問題を国際社会に認識させるうえでNGO、Global Witnessの果たした役割は大きい。これらNGOのホームページではかなりの資料をみることができる。

3. 入門的な資料など

  1. 1)北川勝彦・高橋基樹編(2014)『アフリカ経済論』ミネルヴァ書房
  2. 2)平野克己(2002)『図説アフリカ経済』日本評論社
    • いずれも経済的な分析が基軸になっているが、わかりやすく包括的な基礎文献。
  3. 3)ポール・コリアー(2008)『最底辺の10億人』日経BP社
    • 現代アフリカが抱える構造的な経済の見取り図が示される。ただし、21世紀に入ったアフリカの資源輸出活性化などの現状については、少し難しいが、平野克己(2009)『アフリカ問題―開発と援助の世界史』日本評論社を参照。
  4. 4)「地域研究」編集委員会(2009)『地域研究―アフリカ<希望の大陸>のゆくえ』昭和堂
    • 雑誌の特集号だが、アフリカの今についてさまざまなトピックを取り上げる。
  5. 5)宮本正興・松田素二編(2018)『新書アフリカ史』講談社(全面改訂版)
    • 奴隷貿易と植民地化という歴史を抜きにして現代アフリカを理解することはできない。コンパクトながら歴史書としてまとまっている。
  6. 6)『アフリカレポート』アジア経済研究所
    • 初心者にもわかりやすく読めるアフリカ研究雑誌として定評があり、一時休刊したが、51号(2013年)からウェブ雑誌として復刊した。バックナンバーも役に立つ。同じ研究所から刊行されている『アジア経済』には本格的論文が、また『ワールド・トレンド』にもしばしばアフリカ関係の記事が掲載される。またアフリカ協会『AFRICA』には、研究者以上に企業や官庁むけの内容が載る。これに対して日本アフリカ学会の機関誌が『アフリカ研究』で、ここ数年、特集を組むなど会員以外にも読みやすくなっている。
      https://www.ide.go.jp/Japanese/Publish/Periodicals/Africa.html
  7. 7)白戸圭一(2019)『アフリカを見る アフリカから見る』ちくま新書
    • アフリカ諸国と日本の関係について考えるための入門書。
      白戸圭一(2021)「「ラストフロンティア」アフリカの胎動」足立研幾他編『プライマリー国際関係』 ミネルヴァ書房

4. 発展的な資料など

  1. 1)John Harbeson and Donald Rothchild eds.(2009)Africa in World Politics(4th.)(Boulder : Westview)
    • 定評ある入門書。
  2. 2)川端正久・落合雄彦編(2006)『アフリカ国家を再考する』晃洋書房
    • 国家を軸としたアフリカ政治の論集。
  3. 3)武内進一編(2000)『現代アフリカの紛争―歴史と主体』アジア経済研究所
    • アフリカの地域紛争についての代表的な研究。予防外交の視点から、NIRA・横田洋三編(2001)『アフリカの国内紛争と予防外交』国際書院、人間安全保障論から望月克哉編(2006)『人間の安全保障の射程―アフリカにおける課題』アジア経済研究所、がある。
      人類学の視点からは、栗本英世(1996)『民族紛争を生きる人びと―現代アフリカの国家とマイノリティ』世界思想社が、スーダンを主な事例にアフリカの紛争を論じている。
  4. 4)平野克己編(2001)『アフリカ比較研究-諸学の挑戦』アジア経済研究所
    • アフリカ地域研究をとりまく状況をディスプリン、イシューごとに比較分析する。
  5. 5)アイリス・バーガー、 E・フランシス・ホワイト(2004)『アフリカ史再考―女性・ジェンダーの視点から』未来社
    • 特定のテーマやディスプリンにそってアフリカを取り上げる研究もある。これはジェンダーの視点からのアフリカ史。このほか例えば教育開発については澤村信英編(2003)『アフリカの開発と教育―人間の安全保障をめざす国際教育協力』明石書店、がある。
  6. 6)白戸圭一(2009)『ルポ資源大陸アフリカ』東洋経済新報社
    • 毎日新聞元ヨハネスブルク特派員によるルポルタージュ。内戦は縮小しつつあるが、形を変えた暴力はなくならず、経済を通じてわれわれの生活とも結びついている。
国や地域ごとの研究もある。例えば7)から10)は南アフリカについての研究。
  1. 7)峯陽一編(2010)『南アフリカを知るための60章』明石書店
  2. 8)平野克己編(1999)『新生国家南アフリカの衝撃』アジア経済研究所
  3. 9)レナ-ド・トンプソン(1998)『南アフリカの歴史(新版)』明石書店
  4. 10)峯陽一(1996)『南アフリカ-「虹の国」への歩み』岩波新書
  5. 11)佐藤誠編(1998)『南アフリカの政治経済学-ポスト・マンデラとグローバライゼーション』明石書店
  6. 12)平野克己編(2006)『企業が変えるアフリカ―南アフリカ企業と中国企業のアフリカ展開』アジア経済研究所
    • 注目されるアフリカの国際関係の中でも中国との経済関係を丁寧に追いかけている。
  7. 13)African Affairs
    • 立命舘大学図書館で読めるアフリカ関係雑誌の代表的なもの。ほかにもReview of African Political Economy, Journal of Modern African Studiesなど。最近のものはデータベースでの利用が中心になる。
  8. 14)Africa South of the Sahara (http://www-sul.stanford.edu/depts/ssrg/africa/guide.html)
    • Stanford大学のアフリカ研究サイト。ほかにもスウェーデンのウプサラにあるThe Nordic Africa Instituteや国連大学などのホームページは、研究機関についての情報だけでなく、アフリカで進行中の出来事を知るうえでも便利。
  9. 15)アフリカ連合(https://au.int)、各国政府(例:南アフリカ、http://www.gov.za/)の公式サイトも重要な情報源。
  10. 16)『アフリカ研究』(日本アフリカ学会の機関誌)
    学会ウェブサイト(https://african-studies.com/journal/jaas_backnumbers/)から閲覧できる。
執筆者:佐藤 誠
執筆日(最新更新日):2013年2月29日(2021年12月15日、更新者:白戸圭一・岩田拓夫)