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2022.03.11

アジア日本研究国際シンポジウム2022セッション2 “Traditional Indonesian Drugs and Functional foods for Prevention of Diabetes Mellitus”を開催しました!

Session 2:
https://youtu.be/ttaMkmNdcbU

アジア日本研究国際シンポジウム2022 “Asia Japan Research Beyond Borders: Global Sharing of Local Wisdom towards Human Longevity”におけるセッション2を “Traditional Indonesian Drugs and Functional foods for Prevention of Diabetes Mellitus”と題して開催しました。
本セッションへの参加者は以下の通りです。

司会・開会挨拶・閉会挨拶:西澤幹雄 教授(立命館大学生命科学部副学部長)
モハメド・ラフィ 博士(ボゴール農科大学理学部)
 タイトル:“Metabolomics Approach for Developing Quality Control Method for Indonesian Medicinal Plants”
挨拶:木下博晶 氏(人材育成促進事業[HRDプロジェクト]コーディネーター、ASEAN事務局員)
井上きえ 氏(人材育成促進事業[HRDプロジェクト]アシスタント・コーディネーター、ASEAN事務局員)
 タイトル:“Human Resource Development Project in Collaboration with ASEAN and Japan”
マスルリ 博士(インドネシア・ブラウィジャヤ大学理学部副学部長)
 タイトル:“” Title: “Bioactivity of Indonesian Medicinal Plants as Antidiabetic and Antibacterial Agents”

糖尿病のなかでも、特に2型糖尿病を罹患する成人の数はアジアで劇的に増加しています。心血管疾患、神経障害、網膜症および糖尿病腎症のような糖尿病によって引き起こされる重篤な合併症は、生活の質を低下させ、寿命を短くしてしまいます。西澤教授が組織する本プロジェクトのメンバーは、糖尿病を予防する目的でインドネシアの伝統薬と機能性食品を研究しています。また、立命館大学の研究者らは、日本の第一薬科大学、関西医科大学、インドネシア・ブラウィジャヤ大学の研究者らと共同研究を行っています。この研究チームは、インドネシアでJamuとして知られる伝統医学、および、日本で漢方として知られる成分を単離し、抗糖尿病作用を含む薬理作用を解明するために、それらの活性を分析してきました。

本セッションから、研究者間のネットワークを強化し、インドネシアの伝統薬や漢方薬に関する今後の研究をさらに発展させることが期待されます。司会の西澤幹夫教授による開会挨拶の後、モハメド・ラフィ博士が登壇しました。ラフィ博士は、インドネシアの薬用植物の品質管理法を開発するためのメタボロミクスのアプローチを研究しています。標準化された薬草医薬品を作るためには、薬草の品質管理が不可欠です。品質管理に伴う問題とは、薬用植物の活性化合物の組成または濃度が、生育場所、収穫方法やその後の処理方法、近縁の植物との共存状況などの多くの要因に左右されることです。また、薬用植物は、化学的複雑性を持つため、その品質管理は合成薬物のよりも複雑なものとなります。これらのことから、薬用植物の品質管理法の開発は、薬草製品の有効性、安全性、および品質を確保するための重要な課題となっています。クロマトグラフィーまたは分光学を応用した技術を用いたメタボロミクス・アプローチにおける標的代謝物(化学マーカー)および非標的代謝物(プロファイリングまたはフィンガープリント法)は、原料から最終製品までの薬用植物加工のための品質管理法を開発するためにしばしば用いられます。代謝物のプロファイリングまたはフィンガープリント法による解析から大量のデータが得られますが、データ処理とモデリングのためには計量化学(chemometrics)からの助けが必要となります。以上の知見に基づいて、ラフィ博士は、主に糖尿病の治療に用いられるインドネシア産の薬用植物の利用に基づいて開発された品質管理法について説明しました。

次に、木下博晶氏が登壇し、プロジェクトについて簡単な説明がなされました。その後、井上きえ氏がASEANと日本が関わる人材育成促進事業[HRDプロジェクト]について発表しました。井上氏は、ASEANが食料及び農業分野で一定の経済発展を達成しているが、各産業の発展レベルにはASEAN加盟国間に差があることをまず指摘しました。そうした食品関連産業における管理システムまたは基準の違いは、地域の調和への障壁となる可能性があります。したがって、こうした開発格差の問題に対処することは、経済状況を改善させるために不可欠であるだけでなく、地域の国際競争力を強化するための鍵でもあります。これらのギャップや格差に対処するために、知識と技術の移転と食料と農業基準に関する管理システムにおいて調和を図ることは有用な手段の一つとなります。

このような状況に対処するため、2014年にASEAN事務局に 「アセアン地域の大学と連携した食産業人材育成促進事業(Human Resource Development Project in Food-related Areas through Partnership with Universities in ASEAN)」 が設立され、現在2021年から2023年までの第三段階に入っています。この事業は、農林水産省からの資金のバックアップにより、ASEAN諸国の政府機関、食品関連企業、農協等の関係者をはじめ、農業・食品分野の若手研究者の育成に貢献するものです。くわえて、この事業を通じて、食料・農産物の生産・貯蔵・加工・流通の各要素を連携させ、バリューチェーンの改善を図るため、大学において食料・農産物のバリューチェーンに関する連携プログラムを構築することを目指しています。

最後に、マスルリ教授が登壇し、“Bioactivity of Indonesian Medicinal Plants as Antidiabetic and Antibacterial Agents”と題する講演を行いました。インドネシアは、スマトラ、カリマンタン、スラウェシ、ジャワ、バリ、ヌサ・トゥンガラおよびイリアン島のようないくつかの島嶼から成り、その島嶼分布のために、植物は巨大でユニークな多様性を保っています。また、病気を治療し予防する治療薬として、いくつかの植物が伝統的に用いられてきました。そのなかでもJamuという漢方薬は、今日まで用いられています。マスルリ教授は、ジャワ島産のピヌスメルクシイやビンロウジなどの植物から得られた抽出物に関する最近の研究、化学分析、動物実験について述べ、ビンロウジの抗糖尿病作用と抗菌作用を示し、糖尿病ラットの血糖値を有意に下げる効果があることを示しました。