ノースウェスタン大学プログラムが採択されました(研究部)

 2021年8月に、「2021年度 ノースウェスタン大学との協力協定に基づく成果発信プログラム」が採択されました。これは、ノースウェスタン大学バフェット研究所と立命館アジア・日本研究機構の協力協定に基づいて、国際オンラインフォーラムであるMeridian180での成果発信をおこなっていくプログラムです。 本学はMeridian180の日本支部の役割を担っており、本研究所はその事務局を務めています。

 9月3日には、採択されたプロジェクットメンバーの先生方と、Meridian180日本支部を担っている森裕之先生、小杉泰所長が一堂に会し、今年度の活動について相談をいたしました。

 国際オンラインフォーラムでは、グローバルな諸課題に対して、学術・研究と実務の専門家が力を合わせて、どのような問題があり、どのような解決策があるのかについて提言をしていきます。

 今年度は、次のような5つのテーマにおいて、研究活動、国際シンポジウム、Meridian180でのフォーラムの主宰などをおこなっていくこととなりました。

 各テーマではさらに、学内外の先生方や若手研究者に研究協力者となっていただく予定です。シンポジウム、フォーラムではおおいに国際発信していく予定です。皆さまからも、積極的なご参加をお願いいたします。


テーマ概要(背景と問題意識)
1Smart & Shrinking Cities (スマート&シュリンキング・シティ)急速な経済のグローバル化と人口・環境変動の下で、都市のスマート化および縮小という課題に世界が直面している。先進各国では人口減少の進展によって「都市の縮小」をいかに進めるかが大きな政策課題となっており、この現象は今後急速に少子高齢化が進むアジア各国でも不可避となっている。この問題を克服するための重要なツールとしてICTやIoTの活用に大きな期待が寄せられている。
歴史的な人口減少・高齢化過程にある日本においても、これらを統合した「スマートな都市の縮小」 (Smart and Shrinking City)の取り組みが国民的課題として進行している。現代文明の集約現象としての都市の大きな変貌は、人文社会科学と自然科学の学際的融合によって研究されることが不可欠であり、本研究はそのための取り組みである。
2Gerontology and Social Technology(ジェロントロジー(老年学)と社会技術)わが国は2017年には高齢化率27.7%、平均寿命は男性81.09歳、女性87.26歳の超高齢社会となっている。2030年までに「人生第4期(The Fourth Age):75歳以上」人口は急速に増加し、「人生第3期(The Third Age):65歳-74歳」人口をはるかに凌ぐ。2030年には2割の高齢者が認知症、4割が一人暮らしをしているとの予測もある。80~90歳での一人暮らしが、ごく自然な世の中になる。
長寿は人類が追い求めてきた最大の目的である。それが現実となってきたいま、誰もが長寿という幸せを安心して享受し、いきがいを持てる地域社会をつくりあげることが喫緊の課題となっている。そのためには、個人、家族、地域社会、行政、企業・NPOなど社会全体での取り組みが不可欠であり、それらを総合した社会経済や都市・地域のあり方、コミュニティや社会システムに関するグランドデザインを描く必要がある。そして、これを実現するためには、新たな技術とその応用が各領域で展開されていくことが必要となる。
本研究では、超高齢化時代の社会課題を理解し、解決の糸口を探るため、大学、行政、企業など様々なセクターを巻き込んだ学際的かつ包括的な取り組みを実施する。
3Social Development and Science Technology for Food /Agriculture(食・農の社会開発と科学技術)食は人類生存のための根源的な条件である。現在の世界人口は約76億人であるが、今後は発展途上国で人口が激増し、2050年には93億人に達すると見込まれている。その一方で、現在の飢餓人口は8億1500万人に上り、その割合は11%となっている。地球温暖化による気候変動が進めば、現在の耕作地の砂漠化が進むことによって飢餓人口がさらに増大することも指摘されている。
 その一方で、先進諸国では食を支えるための科学技術が急速に発達している。土壌改良、養殖技術開発、植物工場などが進むと同時に、残留農薬や遺伝子組み換え作物といった食の安全に関わる問題も指摘されてきた。わが国では2018年に主要農作物種子法(種子法)が廃止され、安全安心な食糧確保が問題ともなっている。
 「食」とそれを生み出す「農」のあり方は人々の暮らしのあらゆる面に影響を及ぼし、ひいては国家間の争いにまで発展する。本研究では、持続可能な未来へ向けた食・農と地域・社会のあり方とそれらを支えるための科学技術の役割を検討する。
4コロナ禍におけるジェンダー公正な対応策と課題
(Gender Fair Responses to the COVID-19 Pandemic and Urgent Challenges)
 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックは、世界中で人びとの健康だけでなく経済的社会的な安全を脅かし、グローバルな格差の急拡大が大きな問題となっている。パンデミックが露わにしている不均衡な影響のひとつはジェンダー関係であり、DVの増加や、失業・休業の急増、世帯内無償ケア負担の増大、医療・介護従事者の負担など、女性への甚大な影響が指摘されている。
 本プロジェクトでは、普遍的な原則や政策を基盤としながらも、個々の社会の文脈に即したより具体的かつ詳細な分析がますます急務となっている。さらに、社会における不平等なジェンダー関係は、国籍や人種・エスニシティ、階層、職業、居住地、障害など他の社会的関係と独立して機能しているわけではないため、個々の課題領域ごとに、ジェンダーと他の社会関係との交差(インターセクショナリティ)に注目した
 今日、人びとの健康を守り最も脆弱な社会集団への影響を和らげるようなパンデミックへの対応策のみならず、より平等で民主的で持続可能なグローバル政治経済に向けたパンデミックからの回復が、国連や他のアクターが共有するグローバル課題であろう。本プロジェクトでは、より公正なパンデミックへの対応と回復のための国際的協調、東アジアの地域内協力をも視野に入れ、東アジアや日本での現実を分析し、さらにジェンダー視点を組み込んだ研究交流や政策協力を論議する。
5社会的責任を果たす公共調達とそれを活用した障害者雇用の促進
Public Procurement to Fulfill Social Responsibility and Promoting Employment of Persons with Disabilities through it
 少子高齢化Public Procurement to Fulfill Social Responsibility and Promoting Employment of Persons with Disabilities through itはグローバルな現象であり、多くの国において生産年齢人口が減少する中、より多くの高齢者および女性の労働市場への参加が鍵となる。その中で、通常は福祉の対象と考えられている障害者も貴重な労働力として活躍してもらうことが検討されるべきであろう。しかし、障害者が健常者と同様に一般の労働市場において求職活動を行い、民間企業に雇用されるということはたやすいことではない。こうした点を踏まえ、公共政策として公共調達を活用することが非常に重要と考えられる。近年、日本、米国、EU において公共調達を通じた障害者雇用促進に新たな展開がみられる。
 とはいえ、日本は直近の実雇用率等が示すように、これまでの取り組みが日本全体として大きな成果にはつながっていない。米国の取り組み、EU 各国の取り組みをはじめとし、公共調達を通じた障害者雇用促進の制度、実態、効果、解決すべき課題について、国際比較分析を通じて明らかにし、日本の公共調達を通じた障害者雇用のさらなる促進のための示唆を得ることが、本課題の問題意識である。