書評

利他と責任:稲盛和夫経営倫理思想研究

劉慶紅 著

立命館大学経営学部教授

千倉書房 2020年

稲盛の経営哲学を、とりわけ中国の儒教思想を背景として意味づけ、詳細な解釈を行った点は、著者の豊かな博識と努力の賜物

人材危機時代の日本の「グローバル人材」の育成とタレントマネジメント:「見捨てられる日本・日本企業」からの脱却の処方箋

守屋貴司 著

立命館大学経営学部教授

晃洋書房 2020年

関連したさまざまな議論を展開する際の参照点のひとつとして、多くの研究者や実務家が最初に手に取る一冊にお薦めしたい。

年金制度の不人気改革はなぜ実現したのか:1980~2016年改革のプロセス分析

鎮目真人 著

立命館大学産業社会学部教授

ミネルヴァ書房 2021年

テーマ別に整理された事実の体系は、このモデルの当否を超え、年金史の再確認にも、その再構築にも非常に有用に思われる。

子育て罰:「親子に冷たい日本」を変えるには

桜井啓太 著

立命館大学産業社会学部准教授

末冨芳 共著

光文社新書 2021年

「子育て罰」に対抗する「子育てボーナス」というアイデアを提示し、日本の政治の課題を浮き彫りにしてみせる。

不登校経験者受け入れ高校のエスノグラフィー:生徒全体を支える場のデザイン

神崎真実 著

立命館大学立命館グローバル・イノベーション研究機構助教

ナカニシヤ出版 2021年

本書は、高校の教師たちがボランティアや対人援助職とともに生徒たちの登校とよりよい学校生活を支える姿を丁寧に描き出している。

「法と経済学」の揺籃

菊地諒 著

立命館大学法学部准教授

成文堂 2021年

前世紀転換期と1960年代以降の経済学との学際研究で、法学は何を得たのか、逆に、リーガル・リアリズムはコモンズからどのような影響を受けたのか。

司法審査の理論と現実

市川正人 著

立命館大学大学院法務研究科教授

日本評論社 2020年

かくも骨格が堅強な本書は、されど牽強付会ではなく「論理的な首尾一貫性、明晰さ、体系性」も妥協していないので、安心して繙くことができる。

社会を知るためには

筒井淳也 著

立命館大学大学院法務研究科教授

日本評論社 2020年

これから社会学を学び始めようとする初学者にとってだけでなく、すでに十分に研鑽を積んできた現役の社会学者にとってもとても有用な図書となっている。

現代社会資本論

森裕之 編

立命館大学政策科学部教授

諸富徹・川勝健志 共編

有斐閣 2020年

「共同社会的条件」としての社会資本について、老朽化対策を含む再構築が必要であるとの問題意識から、その対応について考え、持続可能な社会へ繋ぐことを展望するものである。

私の反原発人生と「福島プロジェクト」の足跡

安斎育郎 著

立命館大学名誉教授

かもがわ出版 2021年

著者の長いライフヒストリーの詳細な記述によって、国立大学の科学者が「反原発」という立場で活動を行うと、いかなる事態に遭遇するかを窺い知ることが出来る

「反原発」のメディア・言説史:3.11以後の変容

日高勝之 著

立命館大学産業社会学部教授

岩波書店 2021年

本書の意義は、何よりも多様な言説・作品群の整理を通して、原発をめぐる報道のあり方、議題設定に決定的な影響を及ぼす「政財産学メディア」の構造的力学を剔抉している点にある。

被爆都市=広島研究の新たな視角:『広島 復興の戦後史:廃墟からの「声」と都市

西井麻里奈 著

早稲田大学先端社会科学研究所助教(出版時:衣笠総研所属)

人文書院 2020年

本書の優れた特徴は、被爆都市=広島の研究において、復興の歴史に隠された陳情書や都市住民の「声」を聴いている点である

地元を生きる:沖縄的共同性の社会学

岸政彦 著

立命館大学大学院先端総合学術研究科教授

ナカニシヤ出版 2020年

ポジティブなイメージとして人びとが―沖縄の人たちでさえも―思い浮かべている「沖縄的共同性」の内実を、生活史の手法を用いて社会学的に考察したのが本書である。

日常生活に埋め込まれたマイクロアグレッション:人種、ジェンダー、性的指向:マイノリティに向けられる無意識の差別

立命館大学教員:中村正 人間科学研究科・産業社会学部教授、金友子 国際関係学部准教授、朴希沙 人間科学研究科・日本学術振興会特別研究員DC2 訳

立命館大学大学院先端総合学術研究科教授

デラルド・ウィン・スー 著

明石書店 2020年

マイノリティ側のリアリティを少しでも理解したいと思うのであれば、ぜひこの邦訳書を手にとってじっくりと時間をかけて読み進んでほしい。

日本近代主権と「戦争革命」

小関素明 著

立命館大学文学部日本史研究学域教授

日本評論社 2020年

戦前から戦後を貫く近代日本の公権力の原理的次元における連続性の追究を試みた画期的著作である。

上代歌謡と儀礼の表現

藤原享和 著

立命館大学文学部日本文学研究学域教授

和泉書院 2021年

王権の書である『古事記』『日本書紀』において、歌謡がどのような意味をもつのか、歴史的な状況や歌謡の表現から丹念にひもといてゆく。

天変地異を受け入れるアジアの人々の共通性を考える:『天変地異はどう語られてきたか:中国・日本・朝鮮・東南アジア』

串田久治 編著

桃山学院大学文学部教授

東方書店 2020年

天変地異に向き合う際の「禍」と「福」との両義性と、 俯瞰的にとらえる国際化の重要性が議論される。

『次の夜明けに』(現代台湾文学選1)

三須祐介 訳

立命館大学文学部教授

徐嘉澤 著

書肆侃侃房 2020年

厚くはない小説の宇宙に、台湾の20世紀後半から21世紀初頭にかけての、さまざまな記憶かが刻まれた本書には、弱さを抱えながら声を上げてきた人々の姿が描かれている。

フィリピンのサリサリストア:流通構造と人々のくらし

舟橋豊子 著

立命館大学政策科学部准教授

五絃舎 2021年

今後の途上国市場を理解するうえで、そして途上国市場への参入戦略を考える上で極めて重要なものといえ、それらを現地調査によって解明した著者の功績は大きい。

一帯一路は何をもたらしたのか:中国問題と投資のジレンマ

廣野美和 編

立命館大学グローバル教養学部准教授

勁草書房 2021年

第I部、第II部の各章の論文はいずれも一帯一路の現実を抉り出す力作であるが、第III部沿線国各国については、(中略)本書のなかで最も新鮮さを感じた部分である。

東アジアにおける行政法の生成と展開:基本原則の比較研究及び共通原則試論

蔡秀卿編 著

立命館大学政策科学部教授

尹龍澤・稲葉一将 共著

法律文化社 2021年

これまで東アジアをフィールドとしてこなかった多くの行政法研究者はもちろん、この地域の現状を憂いている多くの人々にお勧めしたい書である。

プライマリー国際関係学

足立研幾(国際政治学 教授)・板木雅彦(国際貿易投資論 教授)・白戸圭一(アフリカ地域研究、国際ジャーナリズム論 教授)・鳥山純子(ジェンダー論、文化人類学 准教授)・南野泰義 (比較政治論 教授)編

全て 立命館大学国際関係学部

ミネルヴァ書房 2021年

SNS世代・社会の脆い認識に対して、時代を越えた連続的なものとして国際関係学を継承することで、警鐘を与えることができる良書である。

『現代国際法の潮流I:総論、法源・条約、機構・経済、海洋、南極・宇宙』『現代国際法の潮流II:人権、刑事、遵守・責任、武力紛争』

德川信治

立命館大学法学部法学科教授

西村智朗

立立命館大学大学院国際関係研究科教授

浅田正彦・桐山孝信・樋口一彦 編著

ミネルヴァ書房 2021年

国際法の現代的諸問題に立ち向かう我が国における人的資源のまとまりを示したことが、本書のもう1つの成果といえるだろう。

文明の物流史観

小林ハッサル柔子 著

立命館大学グローバル教養学部准教授

黒田勝彦 共著

成山堂書店 2021年

本書は、世界史的パースペクティブを踏まえて、国際サプライチェーンのパラダイムシフトの重要性を大胆に提言する。

地域研究へのアプローチ:グローバル・サウスから読み解く世界情勢

嶋田晴行 編著

立命館大学国際関係学部教授

児玉谷史朗・佐藤章 共著

ミネルヴァ書房 2021年

グローバル・サウスをキーワードに、現代の地域研究とはどのような学問であり営みなのか/であるべきなのかという問いに対して、わかりやすく、また真正面からひとつの答えを示そうとしている。

宗教復興と国際政治:ヨルダンとイスラーム協力機構の挑戦

池端蕗子 著

立命館大学衣笠総合研究機構准教授

晃洋書房 2021年

随所で最新の研究や知見を踏まえた独創的な分析・考察も行われており、中東政治研究やイスラーム思想研究を専門とする読者にとっても興味深い著作である

現代人のためのイスラーム入門:クルアーンからその真髄を解き明かす一二章

小杉泰 訳

立命館大学立命館アジア・日本研究機構教授

池端蕗子 訳

立命館大学衣笠総合研究機構准教授

ガーズィー・ビン・ムハンマド王子 著

中央公論新社 2021年

イスラームの基礎的な部分の解説から始まり、現代の過激派をめぐる政治情勢まで丁寧に展開されていくこの構成は見事である。

感染症社会:アフターコロナの生政治

美馬達哉 著

立命館大学大学院先端総合学術研究科教授

人文書院 2020年

この歴史的な瞬間を冷徹な科学者・社会科学者とフロントラインに立ちうる臨床家として複数の目で捉え、見事に描き出した

私たちが国際協力する理由:人道と国益の向こう側

山形辰史 著

立命館アジア太平洋大学アジア太平洋学部教授

紀谷昌彦 共著

日本評論社 2019年

ODAによる国際協力の限界を示すと同時に、それによってその先にある、多層な社会にふさわしい国境を越える「協力」の可能性を探る必要性も示す、貴重な本である。

貧困・外国人世帯の子どもへの包括的支援:地域・学校・行政の挑戦

柏木智子 編著

立命館大学産業社会学部教授

武井哲郎 編著

立命館大学経済学部准教授

晃洋書房 2020年

現在の偏った「支援」や社会の在り方そのものを問い返す姿勢を読者に与えてくれる。