書評

食と農のフィールドワーク入門

荒木一視 著

立命館大学食マネジメント学部 教授

林紀代美 共編

昭和堂 2019年

その目的や対象が何であれ、「食と農」に関して何らかの調査をする者にとって、手引書として極めて利用しやすい一冊。

質的研究法マッピング:特徴をつかみ、活用するために

サトウタツヤ 編

総合心理学部 総合心理学科 教授

神崎真実 編

立命館大学立命館グローバル・イノベーション研究機構専門研究員

春日秀朗 共編

新曜社 2019年

本書のマッピングは、質的研究法を用いた私たちの研究活動を理解する軸を与えてくれている。

学校の建築と教育─学校化・教育改革・境界人

四方利明 著

立命館大学経済学部教授

阿吽社 2018年

「〜校舎や校舎と人々との自律的かつ創造的なかかわり」を探った「コンヴィヴィアルな学び」の記録。

家内労働と在宅ワークの戦後日本経済─授産内職から在宅就業支援へ

高野剛 著

立命館大学経済学部准教授

ミネルヴァ書房 2018年

請負契約などによる自営的就業の構造や利用者像の多様な就労支援サービスの模索といったことに関心のある読者には、ヒントになる叙述が多々あろう。

過料と不文の原則

須藤陽子 著

立命館大学法学部教授

法律文化社 2018年

本書は、行政法総論の「過料論」研究におけるきわめて重要なマイルストーンとなるものといえる。

都道府県出先機関の実証研究:自治体間連携と都道府県機能の分析

平岡和久 著

立命館大学法学部教授

水谷利亮 共著

法律文化社 2018年

本書は、重層的な自治制度のもとでの重層的な自治体間連携において主要なアクターの一つと考えられる都道府県出先機関に焦点を当てて、その機能や新たな可能性について実証的に分析している。

政治において正しいとはどういうことか:ポスト基礎付け主義と規範の行方

山本圭 編著

立命館大学法学部准教授

田畑真一・玉手慎太郎 共編著

勁草書房 2019年

読者は、基礎付け主義を放棄した後に、倫理と政治の関係がいかにありうるかについての「実例」を本書に見出すだろう。

病者障害者の戦後:生政治史点描

立岩真也 著

立命館大学大学院先端総合学術研究科教授

青土社 2018年

ここで示されるのは「点描」なのであるが、各点はそれぞれ見逃すことができないーと著者が考えたであろうー事項が描かれている。

外地巡礼:「越境的」日本語文学論

西成彦 著

立命館大学大学院先端総合学術研究科教授

みすず書房 2018年

俯瞰と凝視をリズミカルに繰り返しながら、未発の研究可能性が徐々に立ち上がってくるような文章を読んでいると、新しい知の経験をしているような感覚になる。

思想史で読む史学概論

桂島宣弘 著

立命館大学文学部教授

文理閣 2019年

本書は、徳川時代の歴史的思惟を一つの参照系とすることで、近代以降のそれがもつ特質や問題点を逆照射的に明らかにすることに成功している。

戦後日本ジャーナリズムの思想

根津朝彦 著

立命館大学産業社会学部准教授

東京大学出版会 2019年

戦後日本の「言論・報道やその思想性を主対象とするジャーナリズム史」のまとまった研究成果としては本書がほぼ唯一である。

いかにしてアーサー王は日本で受容されサブカルチャー界に君臨したか:変容する中世騎士道物語

岡本広毅 編

立命館大学文学部准教授

小宮真樹子 共編

みずき書林 2019年

本書の出版によって、学術界と娯楽界の一層の協働が促進されれば、こうした新しい試みの一冊を世に問うた目的が達成されるというものである。

人と文学にひたる喜び:『范成大詩選』

三野豊浩 著

幻冬舎メディアコンサルティング 2018年

実直で優しい范成大の人柄と文学にどっぷりとひたる喜びを存分に味わわせてくれる好著である。

宋人文集の編纂と伝承

萩原正樹 著

立命館大学文学部教授

中本大 著

立命館大学文学部教授

東英寿 編 内山精也・浅見洋二 共著

中国書店 2018年

書写と印刷の環境を背景に形成された「文集」の複雑な生態系を明らかにする試み。

辺境の思想:日本と香港から考える

張彧暋 著

立命館大学国際関係学部准教授

福嶋亮大 共著

文藝春秋 2018年

〔香港という〕失われたパートナーの声に、再び真摯に耳を傾けるための案内役に最適な一冊。

チョンキンマンションのボスは知っている─アングラ経済の人類学

小川さやか 著

立命館大学先端総合学術研究科教授

春秋社 2019年

資本主義経済に贈与や分配の仕組みを導入しようとする現代的な試みが、どのような可能性と問題をはらむのかという普遍的な問いに取り組んだものである。

セキュリティ・ガヴァナンス論の脱西欧化と再構築

足立研幾 編著

立命館大学国際関係学部教授

ミネルヴァ書房 2018年

西欧・非西欧を問わず、各国が安定的で、持続可能な秩序をいかに形成・維持するのかを検討する際に、極めて有益な視座を提供する。

イスラーム主義:もう一つの近代を構想する

末近浩太 著

立命館大学国際関係学部教授

岩波書店 2018年

「待望の書」ー書物を評する場で頻繁に口にされる常套句だが、本書はまさにそれである。

食のハラール入門:今日からできるムスリム対応

阿良田麻里子 著

立命館大学食マネジメント学部教授

講談社 2018年

イスラーム市場への参入を目指す事業者はもちろん、身近な隣人に気づき、その人たちをもっと知りたいと思っている数多くの一般の潜在的読者にもぜひ手にとってほしい。

大学生・社会人のためのイスラーム講座

小杉泰 編

立命館大学立命館アジア・日本研究機構教授

黒田賢治、二ツ山達朗 共編

ナカニシヤ出版 2018年

すでに蓄積のある対象についても新鮮な視点からの議論がなされていることは、得がたい本書の特徴である。

ムハンマドのことば:ハディース

小杉泰 編訳

立命館大学立命館アジア・日本研究機構教授

岩波文庫 2019年

長年イスラーム研究を続けてきた編者渾身の訳業であり、ムスリムの信仰と価値観、着想の根幹を文庫で知ることができることは、日本人読者にとっては大きな財産である。

中沢新一著『レンマ学』

中沢新一 編著

講談社 2019年

この「ポストヒューマン」の時代において、人類にとっての別の知性のあり方を十分な説得力を持って提示している。