書評

感染症社会:アフターコロナの生政治

美馬達哉 著

立命館大学大学院先端総合学術研究科教授

人文書院 2020年

この歴史的な瞬間を冷徹な科学者・社会科学者とフロントラインに立ちうる臨床家として複数の目で捉え、見事に描き出した。

私たちが国際協力する理由:人道と国益の向こう側

山形辰史 著

立命館アジア太平洋大学アジア太平洋学部教授

紀谷昌彦 共著

日本評論社 2019年

ODAによる国際協力の限界を示すと同時に、それによってその先にある、多層な社会にふさわしい国境を越える「協力」の可能性を探る必要性も示す、貴重な本である。

貧困・外国人世帯の子どもへの包括的支援:地域・学校・行政の挑戦

柏木智子 編著

立命館大学産業社会学部教授

武井哲郎 編著

立命館大学経済学部准教授

晃洋書房 2020年

現在の偏った「支援」や社会の在り方そのものを問い返す姿勢を読者に与えてくれる。

子どもの貧困と「ケアする学校」づくり:カリキュラム・学習環境・地域との連携から考える

柏木智子 著

立命館大学産業社会学部教授

明石書店 2020年

子どもの主人公としての学びと育ちが阻害される状況にこそ、子どもの貧困問題の本質がある。

人口減少と危機のなかの地方行財政:自治拡充型福祉国家を求めて

平岡和久 著

立命館大学政策科学部教授

自治体研究社 2020年

21世紀の日本が直面する人口減少社会問題、それに加えて新型コロナ禍による重大危機とを統一的に捉えて、地方自治の拡充と地方財政の強化という側面から、問題の根本的な解決の方向性を提議した。

都市・地域のグローバル競争戦略:日本各地の国際競争力を評価し競争戦略を構想するために

久保隆行 著

立命館アジア太平洋大学アジア太平洋学部教授

時事通信社 2019年

経済のグローバル化を経済の活力や都市住民の生活水準の向上にいかに結びつけるのか。

グローバル・ニッチトップ企業の国際比較

藤本武士 編著

立命館アジア太平洋大学国際経営学部教授

大竹敏次 編著

立命館アジア太平洋大学国際経営学部教授

晃洋書房 2019年

差別化を企業内で創生する過程について、詳細で綿密な分析が行われている。

戦後日本、記憶の力学:「継承という断絶」と無難さの政治学

福間良明 著

立命館大学産業社会学部教授

作品社 2020年

本書に通底しているのは、「記憶されたもの」の構築プロセスに迫ることで、「記憶されたもの」の内部から見過ごされてきた事実をあぶり出す姿勢だろう。

海をめぐる対ダイアローグ話 ハワイと日本:水産業からのアプローチ

小川真和子 著

立命館大学文学部教授

塙書房 2019年

ハワイの水産業について日本人移民・日系人史研究の立場からこれほど詳細に調べられ、書かれた研究書は存在しない。

現代経済社会入門

稲葉和夫 著

立命館大学経済学部教授

橋本貴彦 著

立命館大学経済学部教授

本田豊 著

立命館大学食マネジメント学部教授

共立出版 2020年

戦後日本の経済成長を整理した第5章、戦後日本の国際関係を整理した第8章は、とくに戦後日本のあゆみを概観する上で、極めて有用なものとなっている。

「変容の秘密」をめぐるミステリのアンソロジー:変容する都市のゆくえ:複眼の都市論

武岡暢 編著

立命館大学産業社会学部准教授

三浦倫平 共編著

文遊社 2020年

ポストバブル経済期の都市は、あらゆる場所で、それぞれの人たちに、「生き延びるために、主体的に都市を定義し、その使い方を考えなさい」と突きつける。本書は、ポストバブル世代による、その回答集なのである。

風景の人間学:自然と都市、そして記憶の表象

仲間裕子 編

立命館大学産業社会学部教授

竹中悠美 編

立命館大学大学院先端総合学術研究科教授

三元社 2020年

雪景snowscape、海景seascape、都市の風景citycsapeなど、本書では様々なバリエーションの風景が論じられている。

現代日本の司法:「司法制度改革」以降の人と制度

市川正人 編著、

立命館大学大学院法務研究科教授

大久保史郎 編著

立命館大学名誉教授

渡辺千原 編著

立命館大学法学部教授

斎藤浩 編著

日本評論社 2020年

人と制度という両著に共通するキーワードの下で、各法分野の専門家が結集した共同研究の成果が示されている。

司法・犯罪心理学:司法臨床のアプローチ

廣井亮一 著、

立命館大学総合心理学部教授

NHK出版 2020年

読者には「司法臨床」の視点に立って、わが国の司法がどのように変わろうとしているのか変わろうとしていないのかを見極めてもらいたい。

「法と心理学への招待」からさらなるコラボへ:法と心理学への招待

サトウタツヤ 著

立命館大学総合心理学部教授

若林宏輔

立命館大学総合心理学部教授

松本克美

立命館大学大学院法務研究科教授

廣井亮一

立命館大学総合心理学部教授

有斐閣 2019年

現在、改めて法と心理のコラボが求められるのは、ある意味で時代の必然である。

ケーキの切れない非行少年たち

宮口幸治

立命館大学産業社会学部教授

新潮社 2019年

大いに学校教育や発達・知的障害児支援など様々な場面で役立つ視点であると感じました。

民法入門ノート

谷江陽介

立命館大学法学部教授

中山布紗

立命館大学大学院法務研究科教授

法律文化社 2019年

近時の債権法改正はもちろんのこと、相続関係や親族関係等の民法改正にも対応した意欲的な入門書となっている。

「第三の軸」を再配置する:メディア論の地層:1970大阪万博から2020東京五輪まで

飯田豊 著

立命館大学産業社会学部准教授

勁草書房 2020年

世間一般、無味乾燥な論文が多い中で、飯田の論考にはそれらとまったく異質な批評性を感じさせられるのだ。

キャリアデザイン入門:自分を探し、自分をつくる

古田克利 著

立命館大学大学院テクノロジー・マネジメント研究科准教授

ナカニシヤ出版 2019年

学生のキャリア形成支援、進路就職支援に従事する大学職員においても、教育的視座を得るために本書を活用されたい。

映像で学ぶ舞踊学:多様な民族と文化・社会・教育から考える

遠藤保子 監修

立命館大学名誉教授(2021年5月6日逝去)

弓削田綾乃・高橋京子・瀬戸邦弘・相原進 編著

大修館書店 2020年

映像や動画も含めた本書の構成は、初学者向けの教科書や教授方法を作成していくうえで、参考にすべきモデル。

ワードマップ 現代観光学:ツーリズムから「いま」がみえる

遠藤英樹 編著

立命館大学文学部教授

神田孝治 編著

立命館大学文学部教授

橋本和也 共編著、寺岡伸悟・山口誠・須永和博・森正人 共著

新曜社 2019年

「〇〇ツーリズム」と称される新たな社会現象を明示し、その意味を問うていく挑戦的な姿勢には共感を覚える。

酒場の京都学

加藤政洋 著

立命館大学文学部教授

ミネルヴァ書房 2020年

近現代の様々な時期を往来、さらには文学作品ならびに史資料と現実世界の往還を繰り返し、あたかも読者を酔いへと誘うようだ。

日中経済・社会比較論:在日中国人学者による考察

鄭小平 著

立命館大学経済学部教授

日本僑報社 2019年

[ブログという形で書き出して公表した]このような行為は簡単そうに見えるかもしれないが、発信対象国によっては、大きな勇気と覚悟が必要であろう。

東アジア 遭遇する知と日本:トランスナショナルな思想史の試み

桂島宣弘 編

立命館大学文学部教授

金津日出美 編

立命館大学文学部准教授

長志珠絵、沈煕燦 編

文理閣 2019年

本書を一読した読者は、文字どおり東アジア思想史の分野で議論されている「知」の多様性に「遭遇」することができる。

清代小説『鏡花縁』を読む:一九世紀の音韻学者が紡いだ諧謔と遊戯の物語

加部勇一郎 著

立命館大学食マネジメント学部准教授

北海道大学出版会 2019年

天下にかくれない奇書『鏡花縁』の最良のガイドブックであることは間違いない。

宋代文学伝播原論:宋代の文学はいかに伝わったか

萩原正樹 監訳

立命館大学文学部教授

王兆鵬 著 松尾肇子・池田智幸 共監訳

朋友書店 2019年

宋代という時代と社会を反映した文学の様相が、本著のページをめくる度に立体的に明らかになっていく、画期的な研究成果である。

日本帝国の膨張・崩壊と満蒙開拓団

細谷亨 著

立命館大学経済学部准教授

有志舎 2019年

満蒙開拓団の諸側面が次々と展開される様子は、評者にとって脱帽ものであり、著者の研究は高い評価に値する。

教養としての歴史問題

前川一郎 編著

立命館大学グローバル教養学部教授

倉橋耕平・呉座勇一・辻田真佐憲 共著

東洋経済新報社 2020年

日本の植民地支配をめぐる歴史修正主義について考える場合のアルファであり、オメガである。

なぜ朝鮮半島「核」危機は繰り返されてきたのか

崔正勲 著

立命館大学立命館アジア・日本研究機構助教

クレイン 2020年

日本の学界では、朝鮮半島の核危機に関する理論的な分析は皆無に等しい。本書はその状況に一石を投じる力作といえる。

若き医師たちのベトナム戦争とその後:戦後の礎を築いた人たち

黒田学 編著・監訳

立命館大学産業社会学部教授

クリエイツかもがわ 2019年

本書からは、戦争自体の記憶と4人がかかわった医療の輝かしい発展が読み取れる。