書評

人生を語ること、聞くこと、読むことについて『生活史論集』

岸政彦 編

京都大学大学院文学研究科教授(刊行時は立命館大学大学院先端総合学術研究科教授)

ナカニシヤ出版 2022年

すべての論考において、まさに今この瞬間の生活を精一杯生きている一人ひとりのこれまでの人生が、とても丁寧に描写されている。

書く力:加藤周一の名文に学ぶ

鷲巣力 著

立命館大学加藤周一現代思想研究センター顧問

集英社 2022年

周囲の人や物事に対する加藤の「関心や愛」はとてもこまやかで、文章の深さや味わいと一体となっていると言えよう。

学校統廃合を超えて:持続可能な学校と地域づくり

平岡和久 編著

立命館大学政策科学部教授

山本由美 編著

自治体研究社 2022年

公共施設の建て替えに伴う面積の削減を小規模校の廃止によって実現しようとする政策が、教育学的な根拠をもつ合理的なものと言えるのか、また住民の意思を尊重しているのかが争点となっている。

大学のIRと学習・教育改革の諸相:変わりゆく大学の経験から学ぶ

鳥居朋子 著

立命館大学教育開発推進機構教授

山本由美 編著

玉川大学出版部 2021年

本書はきわめて幅広いテーマと事例大学をカバーし、IRと学習・教育改革を巡る世界と日本の動向を知ることのできる類例のない好著である。

精神障害を生きる:就労を通して見た当事者の「生の実践」

駒澤真由美 著

立命館大学大学院先端総合学術研究科プロジェクトマネージャー(研究指導助手)/立命館大学生存学研究所客員研究員

生活書院 2022年

ライフヒストリーを記述していく中で、現在の日本の精神障害者福祉の現場と精神障害者が直面している問題をストレートな形で描き出している。

臨床心理学史

サトウタツヤ 著

立命館大学総合心理学部教授

東京大学出版会 2021年

サトウ氏の文章は何と言っても読みやすい。まるで氏がそこで語る姿が見えるように、文字を追う端から声が聞こえてくるようだ。

「ハーフ」ってなんだろう?:あなたと考えたいイメージと現実

下地ローレンス吉孝 著

立命館大学衣笠総合研究機構プロジェクト研究員

平凡社 2021年

「中学生の質問箱」シリーズとして出版された本書は、わかりやすく、かつ丁寧に「ハーフ」当事者を取り巻く歴史や現状を描き出す、非常に重要な一冊となっている。

昭和五〇年代論:「戦後の終わり」と「終わらない戦後」の交錯

福間良明 編

立命館大学産業社会学部教授

みずき書林 2022年年

歴史が歴史と気づかれないままに風化し、また風化が風化と認識されないままに加速してしまっている現状があると思う。本書は、そのことに目を向けさせてくれる貴重な仕事である。

日本の法科学が科学であるために:改革に向けた提言

平岡義博 編著

立命館大学衣笠総合研究機構上席研究員

現代人文社 2021年

法科学的証拠が人間の手によっていかに作られているかについて詳らかに紐解く本書は、その過程に多くの人間の誤りが含まれうることを示している。

原子力発電の会計学

金森絵里 著

立命館大学経営学部教授

中央経済社 2022年

原発会計という前人未踏の領域に真正面から斬り込み、その制度の全容を明らかにした点に、著者の学術的貢献の新規性がある。

SDGs時代の食・環境問題入門

吉積巳貴 著

立命館大学食マネジメント学部教授

島田幸司 著

立命館大学経済学部教授

天野耕二 著

立命館大学食マネジメント学部教授

吉川直樹 著

立命館大学理工学部講師

昭和堂 2021年

SDGs達成について重要な「食」と「環境」に関する基礎知識〔と(中略)〕、新型コロナ感染症の蔓延によってどのような影響があったのか、さらには今後グリーンリカバリーに向けた多くのヒントが盛り込まれている。

SDGs時代のサステイナビリティ学

周瑋生編 著

立命館大学政策科学部教授

法律文化社 2022年

膨大なサステイナビリティ学に関する情報をオントロジーにより整理分析するとともに、AI により最適な政策分析を行い、「死なないための政策科学」を目指す

水環境の事典

惣田訓

立命館大学理工学部教授 編

神子直之

立命館大学理工学部教授 編

日本水環境学会 編

朝倉書店 2021年

水環境に関して過去に何が起こり、今後、どのような社会システムが必要であるか記された書籍であり、良書と言える。

食サービス産業の工業化:外食・中食産業を中心に

田中浩子 著

立命館大学食マネジメント学部 元教授

晃洋書房 2022年

日本における外食・中食研究やレビットやドラッカーの理論的成果に依拠しながら、経営史的な領域を含む多元的で重層 的な事例研究となっている。

日系小売企業の国際展開:日本型業態の挑戦

舟橋豊子 著

立命館大学政策科学部准教授

鳥羽達郎・川端庸子・佐々木保幸 共編著

中央経済社 2022年

日系小売企業の多くが標的とする東南アジアと中国においてユニークな存在として注目を集めている企業をとりあげている

外交交渉四〇年:薮中三十二回顧録

薮中三十二 著

立命館大学理事、大阪大学大学院国際公共政策研究科(OSIPP)特任教授、グローバル寺子屋・薮中塾主宰

ミネルヴァ書房 2021年

本書は日本外交の記録として貴重な史料であると同時に、グローバル社会で生きる若い世代の 人々に対するメッセージとして読むことが可能である。

旅する日本語:方法としての外地巡礼

中川成美 編著

立命館大学文学部名誉教授

西成彦 編著

立命館大学大学院先端総合学術研究科名誉教授

松籟社 2022年

文学言語としての〈日本語〉はもうひとつ(オルタナティヴ)の方法を開示する旅をし続ける。

応円満院殿御詠歌:近衞基Oの家集

川崎佐知子 著

立命館大学文学部教授

古典ライブラリー 2022年

「題・詞書索引」がすばらしい。この索引をながめるだけで、歌題と詞書の面白さに目がとまり、その番号の和歌を引いてみたくなる。

歴史はなぜ必要なのか:「脱歴史時代」へのメッセージ

庵逧由香 著

立命館大学文学部教授

南塚信吾・小谷汪之・木畑洋一 編

岩波書店 2022年

歴史を学ぶことが軽視される昨今、本書によって少しでも多くの人がフェイクニュースに細心の注意を払いつつ、歴史に関する理解を深めることが期待されるだろう。

多文化社会の消費者認知構造:グローバル化とカントリー・バイアス

寺﨑新一郎 著

立命館大学経営学部准教授

早稲田大学出版部 2021年

質的研究×量的研究という混合研究法が採用され、カントリー・バイアスの実態に迫る議論は、(中略)推理小説を読み解くようなスペクタクルを感じさせるものであった。

グローバル秩序論:国境を越えた思想・制度・規範の共鳴

川村仁子 著

立命館大学国際関係学部教授

龍澤邦彦 著

立命館大学国際関係学部特任教授

晃洋書房 2022年

国際関係理論は、今日「世界」を語れていない。その上で本書は、評者の考えるこの「停滞」を打破する可能性を秘めた、歓迎すべき一冊である。

移民の衣食住I:海を渡って何を食べるのか

河原典史 編

立命館大学文学部教授

大原関一浩 編

文理閣 2021年

本書は移民と食をテーマとした他に類のない独創的な書物である。

現代中国の経済と社会

竇少杰 編著

立命館大学経営学部講師

横井和彦 共編著

中央経済社 2022年

本書は新技術や新サービス、話題性に富んだ社会の矛盾、そして再燃する国際摩擦を描写したものであるがゆえに、読者に強烈な印象を与える一冊である。

米中経済摩擦の政治経済学:大国間の対立と国際秩序

中本悟 編著

立命館大学経済学部特任教授

松村博行 共編著

晃洋書房 2022年

米中貿易摩擦を「自由市場資本主義(アメリカン・グローバリズム)」対「国家(党)資本主義(チャイニーズ・グローバリズム)」といった異なる型の資本主義の対立というパースぺクティブの 下で論じている

“新常態”中国の生産管理と労使関係:実態調査からみえる生産現場の苦悩と工夫

竇少杰 著

立命館大学経営学部講師

ミネルヴァ書房 2022年

中国の実情を納得的に分かるための踏み込んだヒアリングを敢行した著者の誠実さと勇気にあらためて敬意を表したいと思う。

中国文学をつまみ食い:『詩経』から『三体』まで

加部勇一郎 編著

立命館大学食マネジメント学部准教授

武田雅哉・田村容子 共編著

ミネルヴァ書房 2022年

読後には、読み手各自の関心に即した「中国文学」へと通じる道筋がいくつも浮かび上がり、読書欲をおおいに刺激される。

中国新出土文献の思想史的研究:故事・教訓書を中心として

草野友子 著

立命館大学衣笠総合研究機構客員研究員

汲古書院 2022年

本書は中国の新出土文献の中から、とくに故事・教訓書に焦点をあてて考察した力作である。

戦争の中国古代史

佐藤信弥 著

立命館大学白川静記念東洋文字文化研究所客員研究員/大阪府立大学客員研究員

講談社現代新書 2021年

戦争にまつわる様々な事物・儀礼・制度の発展・変化を通じて見る中国形成史として位置づける点こそ、本書の本質的特徴である。

中国古典名劇選III

田村彩子 編訳

立命館大学孔子学院中国語講師

後藤裕也・陳駿千・西川芳樹・林雅清 編訳

東方書店 2022年

100 編のうち 30 編を訳したばかりの現時点でも、本シリーズは既に本邦最大の雑劇の翻訳書となっている。

朝鮮近代における大倧教の創設:檀君教の再興と羅喆の生涯

佐々充昭 著

立命館大学文学部教授

明石書店 2021年

近代朝鮮儒学者たちの複雑に絡み合う緊張関係、その生き様を描き出す中に、著者自身の眼差しの在所を潜伏させている