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2022.11.18

【レポート】第49回AJI研究最前線セミナーを開催しました!Dr.望月葵(立命館アジア・日本研究所 専門研究員)が “Politics of Naming and Definitions: Reflection on Cases of Syrian, Afghan, and Ukrainian Refugees in Japan”と題して報告

 2022年11月8日(火)、第49回AJI研究最前線セミナーをオンラインで開催しました。今回は、Dr.望月葵(立命館アジア・日本研究所 専門研究員)が、“Politics of Naming and Definitions: Reflection on Cases of Syrian, Afghan, and Ukrainian Refugees in Japan”と題しては英語での発表を行いました。今回の発表は、本国からの移動を余儀なくされた人々に対する日本の対処のあり方をめぐるDr.望月の研究成果をまとめたものです。

 まず、Dr.望月は、日本の難民受け入れ体制が、政治的迫害によって移住を強いられた人々を受け入れることを目的とした時代遅れの法律によって妨げられていることを説明しました。歴史的には、中国や韓国を追われた政治活動家、第一次世界大戦後のロシア難民の受け入れ、あるいは、高度な技術を身につけたユダヤ人難民の受け入れなどがそうした体制のもとで受け入れられてきました。

 その後、日本政府は、人道的な配慮というよりも、国際的な圧力の結果として、日本政府は、インドシナ系の難民の日本への受け入れを1978年に認め、また、成立から30年後の1981年に難民条約に加盟しました。2002年には、協定に従い、難民の再定住を支援する法案が閣議決定されたことで、政府の救援センターでは、難民に対する日本語教育や就職支援などの支援が行われています。

 しかし、ドイツは、10万人のシリア難民を受け入れたが、日本のシリア難民の受け入れは150人にとどまり、さらに、難民ではなく学生として分類することで、大量の中東からの難民の受け入れを避けてきたという経緯があります。2022年8月には、日本大使館に勤務していた98人のアフガニスタン人が難民として認定されましたが、依然として800人以上のアフガニスタン人避難民が難民認定を受けていないのが現状です。また、最近では、ウクライナ危機を受け、日本は一部のウクライナ人に 「難民(refugees)」 ではなく 「避難民(evacuees)」 として「特定活動」のビザを付与し、政府が民間や地方自治体の支援に大きく依存する構図となっています。

 以上の経緯を踏まえて、Dr.望月は、ウクライナからの避難者の受け入れが、日本の難民政策に一定の進展があったことを意味するのか、それとも、難民条約に基づいて難民とみなすべき人々を単に別の名前で呼び続けているだけなのか、という問いを投げかけました。この問いに対して、彼女は、ウクライナ危機によって難民認定を受ける移民は急増しているが、日本の難民認定の方針は、日本の難民問題の実態把握を困難にし、日本の難民研究の発展を妨げていると結論づけました。

 質疑応答では、日本が難民認定をためらう理由や、同様に人道支援を必要としていたシリア難民やアジア難民よりも、なぜウクライナ難民の受け入れに前向きなのかなどの問いに参加者の関心が集まりました。Dr.望月はこれらの重要な問いに説得力のあるかたちで応答しました。難民問題という極めてアクチュアルな問題をめぐって非常に有意義なセミナーとなりました。

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発表を行うDr.望月