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2023.03.23

【レポート】AJI年次国際シンポジウム2023 セッション1「ベトナムの農業を支える環境技術」のレポートを公開しました!

AJI年次国際シンポジウム2023 “Asia-Japan Research Beyond Borders: Asian Societies Striving for Secure and Sustainable Life”におけるコアセッション1“ベトナムの農業を支える環境技術”を立命館大学アジア日本研究所の主催、日越大学 サステナビリティ研究院、環境工学修士課程の共催で開催しました。

司会:中島淳 教授(日越大学サステイナビリティ学研究院長)

スピーカー・講演タイトル:
惣田訓 教授(立命館大学理工学部):「ウキクサによる養豚廃水中のテトラサイクリンと栄養塩類除去の評価」
Dr. NGUYEN Thi An Hang(日越大学環境工学コース 講師):「農業廃棄物の有効利用に向けた水熱炭化技術の可能性」
Dr. NGUYEN Thi Thuong(立命館大学 立命館アジア日本研究機構 専門研究員):「リサイクル貝殻を用いた人工湿地による重金属除去」
佐藤 圭輔 准教授(立命館大学 理工学部):「タインビン川流域の水資源マネジメント」

AJI「アジア・日本研究推進プログラム」共創領域(2022年度)では、「ベトナムの農畜水産業を支える環境技術」をテーマとし、ベトナムの農業、畜産業、水産業に関わる環境問題の解決のため、「水循環」、「資源循環」、「食糧生産」の3つの視点から持続可能な環境技術の開発を目指しています。そのプログラムに関連する本セッションは、英語・日本語で行われ、同時通訳がされました。10ヵ国・地域から、102人の方(日本66、ベトナム22、他14)にご参加いただきました。

セッション冒頭では、司会の中島淳教授から開会挨拶がありました。共催である日越大学の紹介がされ、本セッションの特徴3点として、(1)本学と日越大学の協力関係、(2)若手研究者の育成、(3)農畜水産業と環境の持続可能性の重要性、が紹介されました。
開会挨拶を行う中島淳教授
開会挨拶を行う中島淳教授

まず、惣田訓教授の講演では、ベトナムにおける養豚業の重要性とそれに伴う水質汚濁問題が説明され、嫌気性生物処理とウキクサを用いた有機物と栄養塩類除去の研究例が紹介されました。さらに、畜産業で多用され、汚染問題が顕在化しつつある抗生物質のウキクサへの影響が議論されました。
講演を行う惣田訓教授
講演を行う惣田訓教授

次にDr. NGUYEN Thi An Hangの講演では、農業大国ベトナムでは、米のもみ殻、とうもろこしの葉や茎、食品廃棄物など、多様な未利用バイオマスが存在し、その有効利用方法として過熱蒸気式炭化技術が注目されていることが解説されました。過熱蒸気式炭化は、水分を多く含むバイオマスであっても、約200℃の低温で炭化物と処理水を生成できる技術です。この処理水から、メタンガス、液肥、バイオディーゼルを生産する研究事例が紹介され、その将来性が議論されました。
講演を行うDr. NGUYEN Thi An Hang
講演を行うDr. NGUYEN Thi An Hang

次に、Dr. NGUYEN Thi Thuongの講演では、ミスハマグリ(Meretrix lyrata)の貝殻を人工湿地の基質として利用する研究例が紹介されました。ベトナム産のミスハマグリは有名であり、世界各国に輸出されています。貝殻は産業廃棄物として処分しなければなりませんが、その主成分である炭酸カルシウムは、酸性鉱山廃水を中和するのに適しています。植物の育成にも適し、日本とベトナムの鉱山廃水からの金属の除去への応用性が議論されました。
講演を行うDr. NGUYEN Thi Thuong
講演を行うDr. NGUYEN Thi Thuong

最後に佐藤圭輔准教授からは、ベトナム北部を流れるタインビン川流域の水資源マネジメントに関する講演をしていただきました。タインビン川流域には、水田や茶畑が広がり、雨季と乾季では、水の需給バランスが大きく変化します。水問題を量と質の両面から捉え、シミュレーションモデルによって、水ストレスと水質インデックスを評価した事例を紹介していただきました。
講演を行う佐藤圭輔准教授
講演を行う佐藤圭輔准教授

最後の総合討論では、ベトナムにおける農畜産業が、日本をはじめアジアの多くの国々において影響力を有しており、それを持続可能とする環境技術の重要性が議論されました。セッション終了後のアンケートでは、内容に関して95%の方に満足または大いに満足との回答をいただき、「ベトナムの農畜水産業を支える環境技術」のプロジェクト遂行の励みとなる評価をいただきました。
総合討論の様子
総合討論の様子