研究プロジェクト紹介

共生領域

アジアのジェンダー課題に関する因果推論とジェンダー平等の実現に向けた政策提言

プロジェクトリーダー
経営学部

宮田 幸子教授

プロジェクト紹介

 この研究プロジェクトは、アジア各国に残るジェンダー不平等に関して、個人に焦点をあてながら、一生の内、誕生から人生の様々な段階において発生するジェンダーに関する諸課題を包括的に検証するものです。このとき、公衆衛生、教育、労働、行政への参画格差などの領域に注目します。各領域に注目することで、ジェンダー不平等が根強く存在する状況が明らかになるとともに、こうした課題に取り組むための政策とはいかなるものかを明らかにすることができます。

 20世紀は、ジェンダー不平等が劇的に解消された時代でした。多くの国において選挙権は平等になり、雇用機会均等に関する法整備が施行され、男女の賃金格差は着実に縮小しました。しかし、多くの問題は依然として解決まで多くの時間を要します。例えば、政治や意思決定の場では依然として男性が優位に立ち、インドや中国など多くの国では「ミッシング・ウーマン」問題(生まれる前の女児を選択的に殺害すること)が存在し続けています。女性のリプロダクティブヘルス(安全で健康な生殖に関する権利)や教育へのアクセスについても、アフガニスタンのように急激に悪化する例もあります。

 また、ジェンダー不平等の固定は長い歴史の産物であるため、自然解消は簡単ではありません。そこで政策やプロジェクト介入が求められます。こうした問題に対して、本研究プロジェクトは、参加メンバーが持つ独自の国際ネットワークに基づいて南・東南アジアにおいて調査・入手した家計・個票データを用いて各課題について計量的に格差の現状を明らかにしていきます。それと同時に、現地調査や行政資料の検討を含む質的研究を組み合わせることで考察を行っていきます。この研究手法を通して、普遍性のある政策含意を導出することが最終目標です。

 この研究プロジェクトは、SDGsのゴール5にある、ジェンダー平等の実現、すなわち、性別にかかわらず平等に機会が人々に与えられる社会をつくるための政策立案および実施のために有効な研究となりえます。また、このプロジェクトには、若手研究者も参加しています。特に、本プロジェクトを通じて、若手研究者のメンバーが研究チームのなかで様々な経験を得ることが期待されます。また、プロジェクトで経験した研究コミュニケーションを自身の研究の発展や今後の研究者としてのキャリア形成につなげていくことに力を入れていきます。

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