研究プロジェクト紹介

共生領域

東アジア圏の家族観のもとでの科学的根拠に基づく育児・就労支援の構築

プロジェクトリーダー
総合心理学部

矢藤 優子 教授

Yato

プロジェクト紹介

 東アジア文化圏にある日中韓3ヵ国は地理・歴史・文化的に多くの共通点を有しています。例えば、近年では各国とも女性の社会参加が期待される中、良妻賢母(中国では「賢妻良母」,韓国では「賢母良妻」)という考えは3ヵ国において現在も根強く存在しており、母親の産後の職場復帰と育児の両立が社会課題となっています。日中韓各国の女性はそれぞれの社会文化の下でどのような育児リソースを利用してその課題と向き合っているのか、そして働く母親のwell-beingや子どもの心身発達はどのようになっているのか。本プロジェクトは、国際的視野から近隣3ヵ国の共通点と相違点を比較し、相互に参考になる情報や有効な解決案を提供するため、3ヵ国の研究者や専門家と共同体制を形成し、3ヵ国とも抱えている共通の社会問題を検討・解決していくものです。

 また、現在進行中のコロナ禍は、私たちの生活を直撃することはもちろんですが、これまでの問題を増幅する働きも持っています。例えば、外出自粛、小中高の休校措置、在宅勤務や感染への不安などによるストレスに加えて家族で過ごす時間が長くなることで、配偶者からのドメスティック・バイオレンス(DV)や児童虐待リスクの深刻化が懸念されていることは日中韓に限らず世界的な傾向です。夫と子どもが遠隔ワークをすることによって妻の負担が従来以上に増加し社会的活躍ができないという問題も生じています。このような状況に対して、本プロジェクトでは各国の社会文化的要因(公衆衛生や子育て観など)を踏まえた継続的な調査を実施します。これによって必要な支援をエビデンスに基づいて提供し、withコロナ・afterコロナ時代の新しい生活様式を提案することが可能となります。

 さらに世界の発達心理学において知見の乏しいイスラーム圏の家族の状況について、インドネシアの研究者の協力を得て、日中韓3国の調査スキームを用いて調査を行います。イスラーム圏の中でも特にインドネシアは近年、女性の活発な社会参加が報告されているものの、日中韓および西洋圏との家族観の違いや子どもの保育事情に関して十分な客観的データがあるとはいえず、心理学的アプローチもなされていないのが現状です。そこで本プロジェクトではフィールドワークを行うことで、より現地性の高い(indigenous;インディジーニアスな)研究を遂行します。

中国都市部の家庭訪問による調査の様子 (日常場面における親子の行動を継続的に観察・記録します)

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