研究プロジェクト紹介

共創領域

世界経済の分断と東アジア地域協力の意義:中国の台頭と「二重の双循環」を中心に

プロジェクトリーダー
経済学部

高屋 和子 教授

プロジェクト紹介

 本研究プロジェクトは、中国の台頭に加え、コロナパンデミックとロシアによるウクライナ侵攻を通じて近年強まっている世界経済の分断(デカップリング)傾向のなかで、東アジアと世界の持続的発展に果たす地域協力の意義を、日中欧の国際研究ネットワークを基礎に、「二重の双循環」という分析視角から解明することを目指します。

 「二重の双循環」とは、中国が第14次5ヶ年計画(2021年~2025年)において導入した新たな発展戦略「国内国際双循環」に基づく本研究プロジェクト独自の分析枠組です。1970年代末に改革開放政策へ転換した中国は、グローバリズムを背景に、急速な経済発展を達成しました。しかし、経済成長の地域間格差(南北[東北と華中・華南]など)に直面しています。「国内国際双循環」は、この課題に取り組むために導入されました。

 本研究プロジェクトでは、「国内」および「国際」に加えて、地域(リージョン)概念を追加します。それによって、①地域内国際循環(日中など東アジア域内分業)、②地域間国際循環(一帯一路、欧州や米国との貿易投資関係)、③国内地域間循環(遼寧省と広東省等との経済交流)、④国内地域内循環(遼寧省と吉林省・黒龍江省など東北地域内の経済交流)へと分析のレベルを分解します。つまり、「国内」と「国際」のそれぞれの枠組に、「国内地域内地域間」および「国際地域内地域間」というふうに異なる経済活動の範囲のレベルを見出すわけです。これが「二重の双循環」という分析視角を指します。これによって、中国経済、日本を含む東アジア経済、中国・日本など東アジアと欧米との経済関係を幅広く把握することが本研究プロジェクトの特色です。さらに、こうした分析を通じて、東アジア地域経済協力(東アジアにおける地域内国際循環)が中国、日本、ならびに世界の持続的発展に有する意義を明らかにすることができると考えています。

 また、研究プロジェクトを遂行するにあたって、立命館大学が長期にわたって学術協力関係を築いてきた中国の東北財経大学との連携をはじめとして、東アジアと欧米の様々な研究機関と連携を強化していきます。また、本研究プロジェクトは、若手研究者の育成にも力を入れています。このプロジェクトに参加する若手研究者が、博士論文やその後の研究テーマをより深め、国際的な研究ネットワークを拡大し、さらに、国際的なワークショップやシンポジウムへの参加、ジャーナルへの投稿を行うことを支援していきます。

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