Netherlands

渡航先
オランダ
松島 綾
産業社会学部 教授
滞在期間
2021年9月26日~2022年9月25日
学外研究機関
アムステルダム大学
研究機関と滞在中の研究の概要
17~19世紀の死刑囚の身体の表象の考察に基づくコミュニケーション理論の再考

貴重な資料の収集と
研究者との交流を求めて
オランダへ

歴史的に医学や解剖学が盛んで、大学や美術館などに解剖や外科に関する文献や絵画といった貴重な史料が非常に豊富に残っていることが、学外研究先としてオランダを選んだ理由です。とりわけアムステルダム大学のメディア・スタディーズ学部には世界的に著名な研究者が集まっており、そうした方々と研究交流したいという期待もありました。もう一つの大きな理由が、「言語」です。オランダは公用語と同じくらい一般的に英語が使われており、言葉の壁に苦労することなく研究を進められることが決め手になりました。

幸いにも国際関係学部にアムステルダム大学メディア・スタディーズ学部の学部長をご存じの先生がいて、その先生の紹介を受けて応募。客員教授のポジションで受け入られたおかげで、大学図書館や開催されるセミナーにも出入りでき、不自由なく研究することができました。

教員の立場や大学の業務を離れ、1年間、研究だけに集中するのは、初めての経験でした。生活のリズムができるまでに少し時間がかかったものの、慣れてからは当初の計画以上にスムーズに研究を進めることができました。午前中は大学図書館でのリサーチに当て、午後は文献を読んだり、訪問予定の美術館や作品をリストアップするのが日課。それ以外に大学で開催されるセミナーに出席したり、各地の美術館に調査に赴くことも少なくありませんでした。

アムステルダム国立美術館

受け入れ先のサポートの
おかげで
スムーズに
生活に馴染めた

アムステルダムはオランダの首都で随一の商業都市ですが、日本の大都市に比べると小規模な印象を受けます。とはいえ市街地には地下鉄やトラム(路面電車)が縦横に走り、列車の便も良いので、通学や各地への調査移動に困ることはありませんでした。ふだんの生活で最もよく活用したのは、自転車です。町中に自転車専用道路が整備され、市民の多くが自転車を利用しています。私も中古自転車を購入し、通学や買い物に使っていました。

現地の生活に早く馴染めたのは、受け入れ先の学部長をはじめ大学が協力的にサポートしてくださったことが大きいと思います。学部長が好待遇で家を貸してくだったこともその一つです。それがなければ大学の教員・学生向けの仲介センターを通じて、狭くてかつ高額な部屋を借りなければならないところでした。また学内の図書館やオフィスの利用法だけでなく、お得な交通カードの買い方や自転車利用のルールなど日常生活に関わるアドバイスをもらえたことも、助けになりました。

オランダの名物料理「ビターバレン」

生活に不便を感じることはほとんどありませんでしたが、現地には日本の食材を売っている食料品店はほとんどなく、日本食を食べる機会はあまりありませんでした。友人と食事に出かけた時によく利用したのは、中華料理やインドネシア料理、中南米の国スリナム料理の店。スリナム料理以外は日本でもよく食べており、特にアメリカに20年近く住んでいたので、インドネシア料理や中南米の料理には日頃から親しんでいます。オランダではやはりスリナム料理との出会いが新鮮でした。

本物に触れ、間近に見て
多くの有意な知見を得た

最大の成果は、数々の文献や絵画の実物を見られたことです。大学図書館に保管されている16世紀の解剖学の書籍など、貴重な古書を手に取り、ページを繰って解剖の様子が描かれた挿絵を子細に調べ、紙の傷み具合でよく読み込まれたページまで確かめることができました。またすでに知っている絵画でも、間近でじっくり眺めて初めて見えてくる景色や表象があります。本物を見て多くの有意な知見を得ることができました。オランダ各地の美術館の他、イタリアやスペイン、フランスにも足を延ばし、多くの資料を収集。各地を訪れた際には、時間を見つけて観光も楽しみました。

学外研究のもう一つの成果は、多くの研究交流を実現できたことです。アムステルダム大学では数多くのセミナーが開催されており、そこで同じ専門の研究者と意見を交わす他、近い分野の研究者の話を聞き、新たな視点を得たり、興味深い文献を教えてもらうなど多くの学びを得ることができました。またパリで開催された学会で文化表象に関わるヨーロッパ各国の研究者とも知己を得た他、メディア・スタディーズ学部の授業に参加し、学部生や大学院生と話したことも新鮮でした。受け入れてくださった学部長宅に招待された食事の席で学内外の研究者と知り合ったり、また私もホームパーティーを開いて現地でできた知人を招いたり、公私にわたって多くの人と親交を深めたことが、今後の大きな財産になると思っています。

次の1年は、学外研究の成果を論文にまとめ、発表していく年にするつもりです。

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