Singapore / Thailand

渡航先
シンガポール・タイ
孫 怡
立命館アジア・
日本研究機構 助教
滞在期間
2023年1月9日~2023年1月16日(シンガポール)、
2023年2月13日~2023年2月19日(タイ)
学外研究機関
タイ: Chulalongkorn University、
PraPa Nakhon保育園・幼稚園
シンガポール: Creative O Preschoolers' Bay幼稚園、
Genius Hive Preschool保育園・幼稚園
研究機関と滞在中の研究の概要
①女性の産後育児支援の多様性及び母子のwell-beingへの影響-東南アジアにおけるフィールド調査:②東南アジアの保育園・幼稚園見学

受け入れ先の協力の
おかげで実現した
現地調査やインタビュー

シンガポールの交通機関

現在、子育て中の女性に対する育児支援が母子のwell-beingに与える影響について、日本・中国・韓国で比較研究を行っています。今後は対象エリアを東南アジア諸国にも広げて研究したいと考えています。今回「海外渡航支援制度」を利用してシンガポールとタイに赴いたのは、それを見据えた事前リサーチが目的でした。

学外研究先にこの2ヵ国を選んだ大きな理由は、受け入れ・研究に協力してくださる人がいたことです。かねてから親交のある幼児教育の研究者が調査に必要なさまざまな手配やアテンドを快く引き受けてくださったおかげで、現地の幼稚園・保育所の見学や育児中の母親へのインタビューを実施することができました。

まず2023年1月に約1週間、シンガポールで調査を行いました。都市国家であるシンガポールは、東京都ほどの面積に高層ビルが立ち並ぶ都会的な景観が印象的です。滞在したホテルはその中でも中心地にあり、価格は安くないものの、地下鉄やタクシーなどの移動手段もあって、不便を感じることはまったくありませんでした。多民族国家で、マレー系、中華系、インド系など、さまざまな民族・言語・文化が入り混じっているところも同国ならではです。コミュニティによって第一言語は異なりますが、たいていは共通言語として英語が通じるため、言葉が障壁になることは、ほとんどありませんでした。

もう一つ滞在しやすさを感じたのが、体調を崩した時でした。現地の診療所を受診したところ、保険は使えませんが、パスポートを提示すれば外国人でもスムーズに診てくれます。ドクターの言語も、また明細書などの書類も英語で、不安を感じずにすみました。

現地の生活を垣間見て
日本との環境の違いを実感

シンガポールでは、2ヵ所の幼稚園・保育所(私立)を見学。いずれもビジネス街の高層ビル内にあり、共働き夫婦が朝、子どもを預けていく様子がわかりました。一方で印象的だったのが、インタビュー調査のために訪れた住宅街です。高層マンションには区画ごとにジムやプール、公園、図書室などが併設されており、休日や仕事終わりに、子どもをそこで遊ばせるのが一般的です。またこうした生活エリアには、手ごろな価格の食堂が随所にあり、日常の食事をテイクアウトで調達する家庭が少なくないことも知りました。子育て環境に関心を持っている私にとって、そこに住む方々の生活の一端を垣間見ることができたのは、研究において大きな収穫でした。

続いてタイへ赴いたのは、シンガポールから戻った約1ヵ月後の2月。現地で拠点となったのは、受け入れ先の先生が勤めるChulalongkorn大学です。先生の計らいで大学のインターナショナルハウスに宿泊し、キャンパス内にある大学附属の幼稚園・保育園で見学やインタビュー調査を行いました。

Chulalongkorn大学は、首都バンコクの中心地にありながら広大な敷地を持つ大規模な大学で、周辺にはショッピングセンターやレストランが豊富にあり、暮らしに事欠くことはありません。驚いたのは、タイはシンガポール以上にテイクアウトや宅配が普及していることです。共働きの家庭では、料理をしない、台所に包丁さえ置いていないところもあると聞いて、ここでも日本の子育て環境との違いを強く感じました。

タイの屋台

現地を訪れたからこそ
得られた
新たな視点・研究の
アイデア

学外研究に行って良かったことは、自分の目で見て、体験することを通じて、研究のアイデアや新たな視点を得られたことです。両国でテイクアウトが浸透していることや、居住地にレジャー施設が充実していることなど、リアルな子育て環境を知ることができたのは、現地を訪れたからこその収穫でした。

また受け入れ先の先生方との親交を今まで以上に深められたことに加えて、現地の幼稚園や保育園、幼児教育の研究者などと新たな関係を築き、今後の研究に向けて先鞭をつけられたことも大きな成果でした。次は質問紙(アンケート)を用いた大規模調査や行動観察を実施することを計画中です。すでに今回の訪問で知己を得た幼稚園や保育園に調査を依頼し、快諾を得ています。早速8月にタイ、12月にはシンガポールを再訪する予定です。

今回の学外研究を通じて改めて痛感したのは、受け入れ先の協力がいかに大きな力になるかということです。とりわけ私のように対象者の生活に迫る研究は、現地の先生の協力なしには進められません。今後も大学や国を超えて多くの研究者との交流やネットワークづくりを大切にしていきたいと思っています。

Chulalongkorn University大学見学、幼児教育のSasilak先生と学術交流、保育園・幼稚園見学、育児中母親を対象としたインタビュー調査

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