Korea

渡航先
韓国
佐藤 真由子
産業社会学部 助手
滞在期間
2022年9月14日~2022年9月24日
学外研究機関
春川教育大学校
研究機関と滞在中の研究の概要
日韓伝統音楽教育に関わる国際共同研究

小学校の音楽教育を日韓比較
韓国の音楽教育の
実態調査に赴く

韓国の初等教育、その中でも音楽教育について研究しています。韓国では、小学校低学年(1・2学年)は、国語と算数以外は「統合教科」といわれる総合的な教科が設けられており、音楽教育もその中に含まれています。この「統合教科」で、とりわけ韓国の伝統音楽である国楽がどのように教えられているのか、授業の参与観察や教員へのインタビューを通じて調査し、日本の音楽教育と比較・検討したいと考え、「海外渡航支援制度」に応募しました。

今回の調査研究は、受け入れ先となった春川教育大学のシン・ヘヨン教授の多大な協力があったから実現したものでした。シン・ヘヨン教授は、同大学音楽教育科の教授であるとともに、韓国伝統楽器の一つ玄琴(コムンゴ)の著名な演奏家でもあります。日本の教育にも深い関心をお持ちで、私が本研究について相談したところ、二つ返事で共同研究の依頼に応じてくださり、春川教育大学附属小学校で調査できるよう骨を折ってくださいました。コロナ禍で、韓国でも活動の多くが制限されている中、ゆかりのない外国人研究者が小学校に入って調査することは、シン・ヘヨン教授の助力なしには到底かなわなかったと思います。

今回は夫と5歳の子どもを日本に残し、単身渡韓しました。子どもが幼い間は、長期間家を空けて国際研究に取り組むのは、非常に難しい状況にありました。しかし、本制度の申請を採択いただいたこと、また、私が不在の間、サポートで駆けつけてくれた親を含め、家族からの協力を得られたことから、国際研究のチャンスを掴むことができました。

研究に集中することを最優先に
大学近くのワンルームに滞在

今回訪れた春川市は、韓国北部江原道に位置し、ソウルから列車で数時間の距離にあります。大学院時代に交換留学で1年間を過ごして以来、17年ぶりの訪問でした。街は様変わりしていましたが、見覚えのある場所もあり、懐かしい思いが沸き上がりました。

滞在中は、大学近くにワンルームを借りて生活しました。当初は、大学敷地内の寄宿舎のゲストルームを利用する予定でしたが、コロナ禍の影響から直前になって利用する事が不可となってしまいました。ホテル宿泊を考えていたところ、シン・ヘヨン教授が知人のマンションオーナーにかけ合ってくださり、通常は短期間の貸出しが難しいワンルームを借りることができたのは、非常にありがたかったです。ワンルームの立地は、春川教育大学と附属小学校の中間地点にあるため、徒歩で行き来する事ができたので、非常に便利でした。食事については、部屋に料理できるようなキッチンは備わっておらず、新型コロナウイルス感染防止を考えて外食を控えたため、滞在中の食事はほとんど近所のコンビニで調達していました。普段の旅行では、外食を楽しむところですが、10日間の短い滞在期間で研究成果を挙げることを最優先に考えていたので、全く不便には感じませんでした。

現地での移動は、ほとんど徒歩。車やバス、電車などの交通機関もありましたが、目を引いたのが、電動キックボードのシェアサービスです。街のあちらこちらにある駐輪場所で自由に乗り降りできるので、多くの学生が通学や街中の移動に利用しているのを見かけました。

滞在研究後にも続く
関係を築けたことが収穫

滞在中は、寸暇を惜しんで大学と小学校に通い、情報収集や調査に没頭しました。前半は、主に春川教育大学に通い、音楽科教員養成課程の授業に参加。シン・ヘヨン教授の熱意溢れる講義から多くを学ぶとともに、小学校教師を目指す学生と意見交換できたことも有意義でした。

週末もシン・ヘヨン教授のご自宅に招いていただき、さまざまな話を聞くだけでなく、玄琴の演奏を聴く機会にも恵まれました。一番心に残った言葉は、「伝統文化は、装いや動作の一つひとつにも表れることから、私たちは、音楽のみならず広い視野で文化を捉えなくてはならない。私たちは、他国の音楽を知る上では自国の音楽、文化についてよく知っておく必要がある。」という言葉です。密接な関わりの中で、知識だけではない学びを得られたのも、現地を訪れ、対面したからこそだと思います。

研究面での大きな成果は、春川教育大学附属小学校で調査を行ったことです。毎朝1限から放課後まで、「統合教科」を中心にさまざまな授業を参与観察しました。1週間以上通ううちに先生方とも打ち解け、音楽教育や「統合教科」についてどのように考えているのか、またどのような思いで子どもたちに音楽を教えているのか、考えや意見を深く掘り下げて聞くことができました。

子どもの学ぶ姿や大学の教員養成課程の授業を通し、これまで文献研究でしか知らなかった教育の実態を垣間見られたことが大きな収穫です。調査で得た知見をもとに、研究論文をまとめています。

もう一つ良かったことは、今回の研究滞在をきっかけに新たな研究交流が始まったことです。2022年12月に、今度はシン・ヘヨン教授が来日することとなり、立命館大学の授業にも参加してくださり、演奏とレクチャーを行っていただきました。シン・ヘヨン教授をはじめ、今回の研究滞在で出会った研究者の方々と今後も長く関係を築いていけたらと思っています。

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