Spain

渡航先
スペイン
有田 節子
言語教育情報研究科 教授
滞在期間
2021年10月1日~2022年9月17日
学外研究機関
バスク大学、サンティアゴ・デ・コンポステラ大学
研究機関と滞在中の研究の概要
論理表現の文法化と多様性に関する研究と欧州における日本語研究の動向調査

住まいや生活に不可欠な
諸手続きが難航

約1年間、スペインのバスク大学とサンティアゴ・デ・コンポステラ大学の2大学で学外研究を行いました。日本語学を専門に研究していますが、大学時代にスペイン語を専攻したこともあって、以前からスペイン語にも関心を持ち、日本語学とスペイン語学の接点を探りたいと考えていました。そのため今回の学外研究は、またとないチャンスでした。

スペインに長期滞在するのは初めてで、現地では、まず渡航・滞在にまつわる諸手続きに苦労しました。渡航前にビザを取得する手はずはすべて整えていたものの、スペインでは長期滞在の場合でも最初は90日までのビザしか発行されず、現地で住所を確定させてから切り替える仕組みになっています。日本でスペインの住まいを見つけて契約することは難しく、やむなく夫と愛犬と共に渡航し、アパートホテルに滞在しながら住まいを探しました。けれど半年以内の短期契約が可能で、しかも犬を飼っても良い物件はなかなか見つかりません。多くの不動産会社を軒並み回った末に、運よく親切な会社に巡り会ったおかげで、どうにかバスク大学にほど近い場所に、アパートを借りることができました。

次の難題は、「TIE(ティエ)」といわれる外国人身分証明カードを取得するのに、約3ヵ月もかかったことです。このカードがなければ銀行口座も作れず、インターネットを契約することさえできません。途方に暮れていたところ、バスク大学でドイツの言語・文化を教えておられる先生が親切にも、代わりにインターネットを契約してくださり、ようやく通信環境を整えることができました。こうして温かく手を差し伸べてくれた人々に助けられ、現地での生活をスタートさせることができました。

最初こそ悪戦苦闘したものの、バスク大学のあるバスク州、サンティアゴ・デ・コンポステラ大学のあるガリシア州は、いずれも暮らすにはすばらしいところでした。山海の恵みが豊富で、食べるものに困ることはありません。町並みは美しく、公園などの憩いの場所も多く、快適な生活を楽しむことができました。

思い出深いのは、世界的に有名なサンティアゴ・デ・コンポステラへの巡礼路を歩いたことです。学外研究の最後、帰国を前に1週間の休みを取り、夫と二人、愛犬を連れて巡礼路最後の115kmを歩きました。真夏の太陽の下、1日20数kmを歩くのは想像した以上に過酷でした。ゴール地点のサンティアゴ・デ・コンポステラ大聖堂にたどり着いた時、それまで半年間暮らしたところとはまるで別世界に思えるほど、街が美しく輝いて見えたことが心に残っています。

巡礼の道で愛犬と

学外研究先の熱意や協力が
研究の充実を左右する

研究面で特に実りが大きかったのが、サンティアゴ・デ・コンポステラ大学での半年間です。受け入れ先の教授が日本語に大きな関心をお持ちで、毎週必ずミーティングの時間を設けてくださいました。毎回日本語学、スペイン語学の両方の視点から言語や文法の共通点や相違点を検討し、双方の専門的見地から意見を交換することで、非常に有意義な知見を得ることができました。学外研究をより充実したものにする上で、受け入れ先の熱意や協力がいかに重要かを実感しました。

ミーティングの後はカフェテリアに場所を変え、お茶を飲みながら話をするのが、いつものコース。準備してきたテーマについて議論を交わす研究室を離れ、さまざまな話題について自由に語り合うことで、研究関心が広がります。こうした硬軟多様な研究交流ができるのも、滞在が長期間に及ぶ学外研究ならではの醍醐味です。

スペインで築いた人脈が
今後の研究につながる

スペイン語学の第一人者から教えを請うことのできる環境で、頭の先までスペイン語に浸かって研究に没頭したことで、念願だったスペイン語学の研究を進展させることができました。またバスク大学では、これまでほとんど知らなかったバスク語についても触れ、自分の研究テーマに関連しそうな言語現象を見出せたことも大きな収穫でした。と同時に、日本語についてほとんど知識のない海外の研究者に日本語や自分の研究についてプレゼンテーションする経験も得難いものでした。

帰国後、立命館大学で共同研究プロジェクトを発足。2023年に学外研究先で知り合った教授らを招聘し、日本のスペイン語研究者と共同で、日本語とスペイン語の対照研究を進めることを計画しています。スペインで築いた研究者との関係を生かし、今後研究の幅を広げていけたらと考えています。

トマス先生とカフェで打ち合わせ

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