立命館大学
男女共同参画推進リサーチライフサポート室

大学があるのはシカゴの
中心部
街歩きを
楽しみながら研究室へ

感覚器の中で唯一の中枢神経系器官である網膜の発生メカニズムや機能について研究しています。網膜において光情報を神経情報に変換する応答回路を解析することで、いまだその全貌が明らかになっていない中枢神経系のメカニズム解明にも迫ろうとしています。

今回の研究滞在先であるノースウェスタン大学とは長く共同研究を続けています。とりわけ同大学には、研究に欠かせない視覚応答実験が可能な環境が整っています。今回も主に実験を行う目的で渡米しました。

1ヶ月間の滞在中は、共同研究相手である研究者の紹介でシカゴ市街にあるマンスリー契約のコンドミニアムに入居し、毎日歩いて大学まで通っていました。初めてアメリカに行った時は生活に慣れるまでにずいぶん苦労しましたが、5年間の留学をはじめ何度も長期

・短期の滞在を経験してきた今は、特に身構えることはありませんでした。

いつもは毎朝10時頃に大学の研究室へ。網膜組織の解析に必要な超高解像顕微鏡は、同大学とは別のシカゴ大学にあり、外部の研究者が使用できるのは早朝6時から9時の間だけ。そのため、顕微鏡の使用を予約した日は、早朝からシカゴ大学へ向かいました。

ノースウェスタン大学医学部のキャンパスは大都市シカゴの中でも街中にあり、通学路は夜遅くでも人通りが絶えることはありません。そのため深夜近くまで研究室で過ごすことも少なくありませんでした。大学までの道のりを歩くだけでシカゴの街並みを観光している気分になれるのがいいところです。時々、気分転換に美術館などを訪れることもありました。

不便さは感じないものの、円安の影響で宿泊費をはじめ滞在費用がかさんだのは想定外でした。そのため食事は、近くのスーパーマーケットで野菜や肉を調達し、ほとんど自炊。昼食は、大学キャンパス内のカフェテリアでピザなどの軽食を取ることがほとんどでした。世界有数の大型店舗だと聞いて試しに入ったスターバックスで、コーヒーとデニッシュが1,500円近くもしたことにはさすがに驚きました。

率直な意見交換を通して
研究をアップデートできた

今回の学外研究では、共同研究相手の教授の研究室に私用デスクを設け、教授をはじめ研究者の方々と一緒に研究する環境を整えていただきました。自分自身の研究を進めるだけでなく、優秀な研究者たちとさまざまな話をすることで情報をアップデートし、研究を活性化できたことは大きな収穫です。

日本社会の枠組みの中では、人間関係を飛び越えて率直に話すことが難しい場合もあります。ところが海外では、そうしたコミュニケーションのハードルがぐっと下がるから不思議です。語学力不足で日本語のように回りくどい言い方ができないこともあって、教授にもまた若い学生にも、自分が疑問に思ったことを率直に尋ねたり、ディスカッションで躊躇うことなく自分の意見を言うことができました。

Thanksgiving パレード

もちろんそのためには、受け入れ先の研究室で円滑な人間関係を築くことが大切です。大学や研究室によって文化や雰囲気が違うのは、日本も外国も同じです。研究室の構成や研究の進め方を理解し、尊重することを心がけています。また研究室の規模などによっては、研究のリーダーである教授と話す機会すら得られないこともあるので、初めて学外研究先を選ぶ時にはよく検討することをお勧めします。

同じ分野の研究者と研究について
深く話せることが学外研究の魅力

私にとって学外研究の一番の魅力は、同じ専門分野の研究者との意見交換やディスカッションの時間をたくさん持てることにあります。ふだん大学では、授業や研究室で学生を指導して一日を過ごすことがほとんどです。研究領域が異なる研究者と連携し、分野を超えて面白い研究に取り組む機会が豊富にある反面、専門分野が近い研究者が少なく、自分の研究に関わる関心・疑問について深く意見を交換できる相手がいないことが、苦しく感じることもあります。今回の1ヶ月間、研究仲間を身近に感じながら、研究だけに集中する時間がいかに得難いものか、改めて実感しました。

何よりトップジャーナルに多くの論文を掲載し、この分野の先頭を走る研究室で、研究に対する考え方を聞き、最前線に触れることは、有用な実験データを得る以上に大きな糧になりました。今回受けた多くの刺激をエネルギーに、私自身の研究をさらに発展させていくつもりです。

シカゴ大学内の試薬ストック置き場内部