TOPICS

  • カヌー部

  • SPORTS

  1. home
  2. SPORTS REPORT & TOPICS
  3. Ritsumeikan-Sports Innovation Project成果報告会レポート|カヌー・仲香遥さん

Ritsumeikan-Sports Innovation Project成果報告会レポート|カヌー・仲香遥さん

 本記事は、「Ritsumeikan-Sports Innovation Project成果報告会」レポートの連載企画です。本プロジェクトは、アシックスジャパン株式会社からの寄付金を活用し、さらに株式会社プログリットによる英語学習支援を受けながら、学生が海外のスポーツ現場で学びを深める取り組みです。全3回にわたり、参加学生が現地で得た経験や気づき、そして本学スポーツへどのように還元していくのかを紹介します。第2回は、カヌー部で選手兼主務を務める仲香遥さん。オーストラリアのスポーツ機関で、データ分析に基づく選手サポートや、信頼関係を土台としたチームづくりを学んだ仲さんの挑戦をレポートします。(協力 文:立命スポーツ編集局/写真:mizuto)

カヌースプリントの競技力向上へ、客観的データ活用を学ぶ挑戦

 仲香遥さんはスポーツ健康科学部3回生で、「Ritsumeikan-Sports Innovation Project」に参加した学生のひとりだ。普段はカヌー部に所属し、選手兼主務として日々の練習に励んでいる。

 仲さんの研修テーマは「世界水準のバイオメカニクス技術を学び、国内のカヌースプリント競技力革新へつなぐ」。カヌースプリントとは、水上の直線コースで速さを競う競技だ。パドルを漕ぐというシンプルな動作だからこそ、フォームの追求に終わりはない。現在はマネージャーが撮影した動画でフォームを確認しているが、数値データまでは読み取れずにいた。「客観的なデータからパフォーマンスを支援できないか」という疑問を持ったことが今回の渡航のきっかけだと語る。

NSWISで体感した世界水準の分析・サポート体制

 オーストラリアで約1か月の研修を行った仲さんは「NSWIS(ニューサウスウェルズ州スポーツ機関)」のバイオメカニクス班に帯同した。公式ホームページからその存在を知り、専門家が直接選手にコーチングしている点に興味を持ったという。大学のゼミで同分野を研究している仲さんにとって、現地での滞在は驚きの連続だった。

 研修中は分析チームに帯同し、試合や練習、施設の見学を通じて選手のサポート体制を肌で感じることができた。実際にスタッフとともにボートに乗り込んでサポートの様子を見学したほか、データ分析の流れを間近で見たことは貴重な経験だったと振り返る。分析に使用されていたのはMAKO(メイコー)と呼ばれる器具で、カヌーに取り付けて使用する。こうした目に見える形でデータを即座に活用するシステムはまだ日本に浸透しておらず、大きな衝撃を受けたという。州内の選手とデータを比較できる点や、取得したデータを素早く選手にフィードバックできる機能の充実ぶりも強く印象に残った。

 また、データ分析だけでなく、選手をサポートする設備についても日本とのレベルの違いに驚かされることばかりだった。選手の宿泊も可能な施設には、練習後すぐに栄養を補給できる設備が完備されており、コンディションを整える仕組みが充実していた。他にも、科学的アプローチから脱水症状を把握して次のパフォーマンスに繋げる仕組みなど、日本の大学スポーツでも活用できる可能性のある具体的な取り組みについても語った。

 

設備以上に心に残った、選手とスタッフの信頼関係

 渡航前は「選手の体格、スポーツ自体の規模、予算規模が日本とは根本的に違うのではないか」と考えていたという仲さん。実際に、現地で使用されている器具や設備の充実度は日本と大きく異なっていた。しかし、今回の渡航を通して仲さんが一番強く感じたのは、そうした施設の違い以上に「選手とサポートスタッフとの距離の近さ」だった。コーチと選手という上下関係を感じさせないフレンドリーな会話、気軽にアドバイスを求められる関係こそが組織の強さの要因だと感じたという。専門分野の異なるスタッフたちが様々な面で支え、安心して試合に臨める環境は、日本との大きな違いだった。その信頼関係があるからこそ、分析データを用いてパフォーマンスを支援する仕組みが機能しているのだと実感した。

言語の壁を越え、学びを大学スポーツ全体へ還元する

 そのようなサポート体制に感銘を受ける一方で、仲さん自身は現地で「言語の壁」にぶつかっていた。渡航中は語学学校にも通っていたが、最初の1週間は全くコミュニケーションが取れず、疎外感から心が折れかけたという。「『完璧に話さなければならない』という先入観があって、対面だと緊張して上手く話せませんでした。でも、完璧じゃなくていいからまずは目を見て笑顔で話そう、『伝えたい』という気持ちを大切にしよう、と考えるようになってからは世界が変わりました」。自分が変われば相手も変わってくれると実感したことで、話すことへの抵抗感は消えた。英語力そのもの以上に「まずは日本語でも、自分の意見をしっかり持つこと」の重要性も学んだという。

 そのような環境に身を置いたことで「自主性」も大きく鍛えられた。決まったプログラムをこなすのではなく、スタッフと積極的にコミュニケーションを取りながら、自ら予定を組み立てていった。「漠然と『海外にスポーツを学びに行きたい』という思いから始まりましたが、資金面を含めて自分で一から計画し、行動に移していく過程そのものが大きな学びでした」と振り返る。

 それらの学びをどう還元するかについても話してくれた。選手と主務を兼任し、チームを支えてきたからこそ裏方のありがたさが身に染みてわかると話す仲さんは、「感謝をしながら運営し、まずは自分から行動を起こしてチームを動かしていきたい」と決意を語る。さらにその視野は、チーム内にとどまらず大学全体へと向いている。1月に衣笠キャンパスで行われたコーチサミットに出席した際、大学のピア・コーチプロジェクト(学生同士のスポーツサポート)の存在を知った。今後は、プロジェクトを行っている学生らと協力し「学生レベルの分析班・サポート体制」を形にしていきたいと意気込む。大学のゼミで専攻するバイオメカニクス分野においても、カヌースプリントや他競技に深く踏み込んだ研究を行うつもりだ。

 現地で目にした最先端の器具や設備、そして何より「人と人との信頼関係」に基づいたサポート体制。自身で一から計画し、言葉の壁を乗り越えた貴重な経験は大きな財産となった。所属するカヌー部はもちろん、大学スポーツ全体のサポート体制の発展に向けて、仲さんの挑戦はこれからも続いていく。

関連情報

ページトップへ