アジア・マップ Vol.01 | 韓国

韓国21世紀年表

生駒 智一(立命館大学コリア研究センター・客員研究員)

1999年 6月、黄海の北方限界線付近にて南北の艦艇の間で銃撃戦が発生する(第一延坪海戦)。
12月、1997年末の通貨危機発生以降、韓国はIMFの管理体制下にあったが、経済の急速な回復により、金大中大統領は「IMF時代の終了」を宣言した。
2000年 4月、総選挙が行われる。1月に結成されたばかりの新与党・新千年民主党は改選前よりも議席を伸ばしたものの、過半数の確保はできなかった。
6月、歴史上初めて南北の首脳が顔を合わせる(第一次南北首脳会談)。これを評価され、金大中大統領はこの年ノーベル平和賞を受賞。
2001年 3月、韓国の新しい空の玄関口となる仁川国際空港が開港する。9月にアメリカで9.11テロが発生すると、開港したばかりの仁川空港も厳戒態勢下に置かれた。
9月、金大中大統領の新千年民主党と連合を組んでいた、金鍾泌(キム・ジョンピル)元国務総理の自由民主連合が政権から離脱。
2002年 5月、日本との共同開催によるサッカーのワールドカップが開催される。優勝はブラジルであり、韓国は4位となった。
6月、議政府(ウィジョンブ)市で公道を歩いていた女子中学生が米装甲車に轢き殺されるという事件が起こる。韓国国民の反米感情が一気に高まり、12月には米国大使館前で3万人が参加する、ろうそくデモも起こった。
同じく6月には、1999年に続き、北方限界線付近において南北の艦艇の間で銃撃戦も発生した(第二延坪海戦)。
2003年 2月、盧武鉉が大統領に就任(~2008年)。しかし、その直後から与党内での対立が激化し、盧武鉉支持派は11月に新党・開かれたウリ党を結成。新政権は船出の直後から難しい舵取りを余儀なくされる。
同月、大邱の地下鉄車内で放火事件が発生。200名近い死者を出す大惨事となった。
4月、日本のNHK BSにて韓国ドラマ「冬のソナタ」が放送され、日本において韓流ブームが始まる。
6月の日韓首脳会談で羽田と金浦間の定期チャーター便の実施が決まる。11月から日韓の大韓航空、アシアナ、日本航空、全日空の4社がそれぞれ1日1往復の運行を開始。
2004年 前年からの政治的な混乱は収まるところを見せず、3月には盧武鉉大統領の弾劾訴追案が国会にて可決される。しかし、これに嫌気をさした国民は大統領側を支持し、4月の総選挙で大統領の開かれたウリ党は大勝。5月、弾劾訴追案は憲法裁判所で棄却された。
2005年 3月に開催された愛知万博(愛・地球博)に合わせ、日韓の観光客は互いにノービザで90日の滞在ができるようになる。しかし、同月島根県で「竹島の日」条例が制定されたことをきっかけに日韓関係は逆に悪化。盧武鉉大統領は「対日外交戦争も辞さず」と発言。
11月、韓国人初の自然科学分野のノーベル賞受賞との期待も高かった、生物学者ファン・ウソクの研究不正が発覚。一大スキャンダルとなる。
2006年 4月、日本政府が竹島近海に測量船を派遣する計画を発表。これに対し、盧武鉉大統領は測量船の撃沈を命令する。この危機はその後回避されたものの、8月15日の終戦の日に日本の小泉首相が靖国神社を参拝したため、日韓関係はさらに悪化する。
2007年 この年の1月から韓国人の潘基文が国連の事務総長を務める(~2016年)。
10月、金大中大統領時代の2000年に続いて、第二次南北首脳会談が開催され、「南北関係の発展と平和繁栄のための宣言」が発表される。
2008年 2月、国宝第一号に指定されていた崇礼門(通称:南大門)が放火され、木造部分が消失する。
同月、李明博が大統領に就任(~2013年)。10年ぶりに保守勢力が政権を奪還する。直後の4月の総選挙でも与党が勝利。新政権の行く末は安泰かに見えたが、米国産牛肉の輸入全面開放に国民の反発が広がり、5月以降各地で大規模な反対デモが繰り広げられる。
7月、北朝鮮の金剛山で韓国人観光客が北朝鮮の警備兵に射殺される。12月には開城の観光ツアーも中断されるなど、進歩派政権下で緩和していた南北の関係は一気に硬直化する。
2009年 3月、人気女優チャン・ジャヨンが自殺。性的接待を苦にしてのものであるとされ、韓国社会に大きな衝撃を与えた。
不正資金疑惑に関する事情聴取が行われていた5月、渦中の盧武鉉前大統領が自殺し、全国民に衝撃を与えた。8月には金大中も死去し、大統領経験者が相次いで亡くなった。
11月、釜山の室内射撃場で火災が発生。日本人観光客を含む10名が死亡した。
2010年 3月、黄海の北方限界線付近を航行していた韓国の哨戒艦「天安(チョナン)」が突然爆発を起こし、沈没する。乗組員46名が死亡・行方不明となる。合同調査の結果、爆発の原因は北朝鮮からの攻撃と発表される。
11月、北朝鮮が延坪(ヨンピョン)島に砲撃を行う。海兵隊員2名と民間人2名が死亡。南北関係は最悪の状況となる。
韓国のトップアイドルグループであるKARAと少女時代が、この年の8、9月に相次いで日本デビューを果たす。これを契機に、日本において第二次韓流(K-POP)ブームが巻き起こる。
2011年 3月、日本の東日本大震災に対する韓国の迅速な支援により、日韓接近の機運が高まる。しかし、直後に日本の中学校の教科書に「竹島は日本領」と記載されることが発表され、水をさされる。
8月、鬱陵(ウルルン)島を訪問しようとした日本の衆議院議員の入国を韓国入管が拒否。12月にはソウルの日本大使館前に従軍慰安婦の少女像が設置され、日韓関係はむしろ悪化の一途を辿った。
2012年 5月、麗水(ヨス)市で国際博覧会が開催される。8月の閉幕までに累計800万人が入場した。
PSYの「江南スタイル」は、7月にYouTube上にミュージックビデオが公開されるとまたたく間に世界を席巻。再生回数は公開から2ヶ月後には1億回を達成し、年末には10億回に達した。
前年から関係悪化が続いていた日韓関係は、8月の李明博大統領の竹島上陸、天皇への謝罪要求発言により、完全に冷え込む。
2013年 2月、朴正煕元大統領の次女である朴槿恵が大統領に就任(~2017年)。女性が大統領となるのは韓国憲政史上初。
新大統領の誕生で日韓関係の改善も期待されたが、朴槿恵大統領は3月の三一節演説において日本の植民地支配を強く非難。日本側も安倍首相が12月に靖国神社を参拝したことなどにより、日韓関係はむしろ悪化した。
2014年 4月、フェリー船セウォル号が珍島近海で沈没。300名を超える死者・行方不明者を出すという大惨事となった。さらに、その大半が修学旅行で乗船していた高校生だったため、韓国全土が悲しみに包まれた。
12月、乗客として乗っていた大韓航空副社長チョ・ヒョナが、機内提供のナッツにクレームをつけ、離陸のため滑走路に向かい始めた大韓航空機を搭乗ゲートに引き返させるといういわゆるナッツ・リターン事件が起こり、韓国の財閥企業の同族経営に批判が高まる。
2015年 5月、中東帰りの男性からMERSウイルスが発見される。以降12月に終息宣言が出されるまでの間に200名近い感染者と38名の死者を出した。
厳しい対日姿勢を貫いていた朴槿恵大統領の対日外交も2015年に至り、緩和の動きがあらわれる。11月、3年半ぶりに日韓首脳会談が開催され、12月には日韓慰安婦合意の成立が電撃的に発表された。
2016年 4月、総選挙が行われる。与党・セヌリ党は大惨敗を喫し、第一党の座も失った。
10月、朴槿恵大統領とその友人で実業家の崔順実(チェ・スンシル)を中心とした政治スキャンダル、いわゆる崔順実ゲート事件が起こる。12月には国会で大統領の弾劾訴追案が可決され、朴槿恵大統領はその職務上の権限を停止された。
2017年 2月、韓国における海運業最大手で、世界第7位だった韓進海運が破産宣告を受ける。
3月、憲法裁判所は朴槿恵大統領の罷免を決定。5月にその後任を決める大統領選挙が急遽行われ、文在寅が新大統領に選出された(~2022年)。
この頃、日本において韓国風メイク、いわゆる「オルチャンメイク」がブームとなる。他にもガールズグループTWICEやチーズタッカルビ、チーズドックといった韓国料理が人気となり、第三次韓流ブームが起こる。
2018年 親北派大統領の誕生により、南北の友好ムードが高まる。2月に平昌で開かれた冬季オリンピックの開会式では、韓国の文大統領夫妻と、北朝鮮の最高指導者である金正恩の実妹・金与正および対外的な国家元首である金永南最高人民会議議長が見守る前で、南北選手の合同入場行進が行われた。同オリンピックでは、韓国は金5銀8銅4の17個のメダルを獲得した。
4月、第3回南北首脳会談が行われる。この時史上初めて北朝鮮の最高指導者が南側の領域に足を踏み入れた。南北会談はその後5月、9月と立て続けに行われた。
友好関係が高まる南北関係とは逆に、10月の徴用工判決、11月の「和解・癒やし財団」の解散、12月の韓国の駆逐艦による自衛隊機への火器管制レーダー照射事件が起こったことなどにより、日韓関係は悪化の一途を辿った。
2019年 10月、スキャンダルまみれとなっていた曺国(チョ・グク)が、就任からわずか一ヶ月あまりで法務部長官を退任に追い込まれる。
日韓関係においては、2月の文喜相(ムン・ヒサン)国会議長による天皇への謝罪要求、7月の日本政府による韓国への輸出管理強化措置、8月の韓国政府による日韓秘密軍事情報保護協定(GSOMIA)の破棄宣言などにより、昨年よりも一層関係が悪化した。
この年公開された『パラサイト 半地下の家族』が、カンヌ国際映画祭で韓国映画初となるパルム・ドールの受賞を果たし、アカデミー賞では作品賞他を受賞した。
2020年 全世界に蔓延した新型コロナウイルスの脅威には韓国も無縁ではいられず、2月の大邱の新興宗教の礼拝堂、5月の梨泰院のナイトクラブにおいて大規模なクラスターが発生した。
7月、セクハラスキャンダルの渦中にあった朴元淳(パク・ウォンスン)ソウル市長が失踪、翌日遺体となって発見される。
昨年末から放送されていた韓国ドラマ『愛の不時着』が、Netflixで配信されたことにより、この年世界的な大ヒットとなる。日本においても、これをきっかけに第四次韓流ブームが起こる。
2021年 4月、ソウルと釜山の市長選挙において、いずれも最大野党の国民の力の候補が当選を果たす。
9月、BTS(防弾少年団)がニューヨークの国連本部でのSDGsの関連イベントで登壇する。
10月、純国産宇宙ロケット「ヌリ」の初打ち上げが行われる。模擬衛星の分離までは成功したが、軌道への投入には失敗(翌年の再挑戦で成功)。
Netflixで配信されていた韓国ドラマ『イカゲーム』が、この年世界的な大ヒットする。
2022年 3月、大統領選挙が行われる。最大野党国民の力の候補である尹錫悦が当選し、5月より執務を開始する(~2027年(予定))。
10月、ハロウィンに沸くソウル・梨泰院で雑踏事故が発生する。日本人2名を含む150名以上が死亡し、100名以上が負傷する大惨事となった。

【参考資料】
日本貿易振興機構 アジア経済研究所『アジア動向年報』各年版。
木村幹、田中悟、金容民編『平成時代の日韓関係:楽観から悲観への三〇年』ミネルヴァ書房、2020年。

書誌情報
生駒智一「韓国21世紀年表」『《アジア・日本研究 Webマガジン》アジア・マップ』1, KR.3.01(2023年8月17日掲載)
リンク: https://www.ritsumei.ac.jp/research/aji/asia_map_vol01/korea/timeline/