アジア・マップ Vol.01 | 台湾

21世紀年表

 天江 喜久(早稲田大学国際和解研究所・招聘研究員
元長栄大学台湾研究所・副教授)

1999年
7月 李登輝総統、台湾と中国の関係を「特殊な国と国との関係(二国論)」と定義し、中国政府から猛烈な批判を受ける。

同月、台湾全土で大規模な停電が発生。
9月21日 台湾中部でマグニチュード7.3の大規模地震発生(921大地震)。死者2,415人、負傷者8千人以上。
2000年
2月 中国が台湾白書を発表。「一国二制度」による和平統一を掲げるも、統一交渉の無期限の拒絶は武力行使の対象になると警告。
3月 民進党の陳水扁氏が当選。台湾戦後初の政権交代が実現、国民党が初めて野党となる。
10月 政府が第四原発建設の停止を発表。
2001年
1月 中国・アモイと金門島で客船の運行が始まる(中国と台湾の間の「通商」、「通航」、「通郵」を意味する「三通」が地域限定で実施されたため「小三通」と称される)。
11月 台湾、世界貿易機関(WTO)に正式参加が決まる。
12月 立法院選挙(全225議席)で民進党が87議席獲得し、初めて最大政党となる。国民党は68議席、同じく保守の親民党が46議席で第三党。
2002年
2月 内閣改造により民進党の游錫堃が行政院院長に選出される。初の台湾出身かつ史上最年少の行政院院長が誕生する。
5月 台湾桃園国際空港発、香港行きの中華航空機が澎湖島沖で墜落、乗客225人全員死亡。
8月 陳水扁総統、中国と台湾の関係を「一辺一国」と定義し、一国二制度を拒否する。
2003年
5月 SARS感染拡大で84名が死亡。
10月 蒋介石夫人の宋美齡、ニューヨークの自宅で死去(105歳)。
11月 台北で同性愛者を支持するパレードが行われる。華人文化圏で初。

同月、立法院で「公民投票法」が可決され、東南アジアで初の公民投票実施可能の国家となる。
2004年
1月 台湾第二の南北高速道路(全長431.5キロ)が開通。
2月28日 中国からミサイル攻撃の脅威が強まる中、独立派の団体の呼びかけに応じた200万の市民が南北500キロの「人間の鎖」を作り、武力による統一に反対の意思を示す。
3月19日 総統選挙前日、現職の陳水扁総統・呂秀蓮副總統が遊説中に銃撃され負傷する事件が発生。晩の選挙活動はすべて中止される。
3月20日 陳水扁が国民党の総統候補人・連戦を僅差で破り、再選。連戦陣営は選挙の不正と無効を主張、訴訟を起こす(同年11月に敗訴確定)。
8月 アテネ五輪の女子テコンドーで陳詩欣が台湾オリンピック史上初の金メダル獲得。同日、男子テコンドーでも朱木炎が二個目の金メダルに輝き台湾おおいに沸く。
12月 台北101が完成、世界一高いビルとなる。

11日、立法院選挙が行われ、民進党が89、国民党が79、親民党が34議席獲得する。民進党が前回に続き最大政党となるものの、過半数(113)には及ばず。
2005年
1月 春節期間中、中国、台湾間で直行チャーター便が運航。1949年の国共内戦による分断以後初。
3月 中国の「反分裂国家法」可決に抗議するデモが台北で行われ、数十万人が参加する。
8月 台湾観光客へのビサ免除の特別法案が日本の国会で可決。
4月26日-
5月3日
国民党主席・連戦が中国各地を訪問、29日に北京で胡錦濤国家主席と会談。
12月 台湾地方選挙(直轄市の台北と高雄を除く)で国民党が大勝。14の県市長の座を獲得、民進党は6県市長にとどまる。民進党主席の蘇貞昌が引責辞任。
2006年
6月 立法院で陳水扁総統の罷免投票が実施されるが、三分の二の148票獲得に至らず不成立。
8月 汚職疑惑の総統の退陣を求め、台北で大規模なデモが行われる。
9月 陳総統の辞職を求める台北の集会に75万人が参加。

同月、ニューヨーク・ヤンキースの台湾人投手・王健民がシーズン19勝目を挙げ、大リーグでのアジア出身選手の最多勝記録を樹立(ア・リーグ最多勝のタイトルも獲得)。
12月 直轄市市長選挙が実施され、国民党・郝龍斌が台北市長、民進党・陳菊が高雄市長に当選。
2007年
1月 台湾新幹線(高速鉄道)開通。
6月 日本を訪問中の李登輝前総統が太平洋戦争で戦死した実兄が祭られている靖国神社を参拝。
12月 蒋介石を顕彰する中正記念堂が「台湾民主記念館」と改名され、正門牌楼の題字が「大中至中」から「自由広場」に取り換えられる。
2008年
1月 立法院選挙で与党民進党が大敗。国民党が81議席獲得したのに対し、27議席にとどまる。(選挙制度の改正に伴い、今回から全議席が225から113に減る)
3月 総統選挙、国民党・馬英九氏が民進党候補の謝長廷前高雄市長を破り当選。
8月 『海角七号 君想う、国境の南』が上映、タイタニックに次ぐ台湾歴代映画興行成績2位を記録する。
11月 陳水扁前総統、総統府機密費流用及び資金洗浄などの容疑で逮捕。

同月、中国特使・陳雲林訪台。急速な中台接近を危惧する民衆が各地で抗議活動を展開。
12月 中国と台湾で「三通」が全面解禁。
2009年
1月 台北市立動物園で中国から贈られたパンダの一般公開始まる。
2月 陳水扁前総統の初公判。
2月28日 馬英九総統が高雄市で二・二八事件の追悼式典に出席。国民党の外省人系総統として初めて事件の責任を認め、謝罪する。
8月 台風8号による記録的豪雨で大規模水害が発生(八八水災)。土砂災害で村が埋没、462人の死者を出す。
2010年
6月 中国と海峡両岸経済合作架構協議(ECFA)を正式に締結する。
10月 台北-羽田便が31年ぶりに復活。
11月 広州で行われたアジア競技大会で女子テコンドーのスター選手・楊淑君が不可解な判定により失格となる。その判定に韓国系の審査員が関わっていたため一時韓国に対する感情が悪化する。

同月、直轄市市長選挙。前回までの台北市、高雄市に新たに新北市、台中市、台南市が加わり「五都」となる。
12月 陳水扁前総統、汚職の罪で懲役11年以上の実刑が確定、台北監獄に移送され、収監される。
2011年
3月 東日本大地震発生、台湾で200億円以上の義援金集まる。
9月 1930年の霧社事件を題材にした長編映画『セデック・バレ』が上映。台湾映画史上最高額となる7億元かけて制作される。台湾アカデミー賞と称される金馬奨で「最優秀作品賞」を受賞。
10月 中華民国百周年を祝う記念行事が催される。
2012年
1月 馬英九総統再選。同日に行われた立法院選挙では国民党が64議席、民進党が40議席獲得。
6月 中国銀行、台北に支店をオープン。中国の金融機関としては初。
8月 馬英九総統、「東シナ海平和イニシアチブ」を提唱、領土争いを棚上げし、天然資源を共有するメカニズム構築を呼びかける。
2013年
3月 反原発デモに22万人が参加。
4月 「日台漁業取り決め」合意。
7月 徴兵中の陸軍下士官が訓練中に死亡、市民が事件の真相解明と責任者の処分を求めデモを起こす。馬英九総統が遺族に謝罪、国防大臣は引責辞任。
2014年
3月 中国とのサービス貿易協定調印に反対し、学生らが立法院を585時間占拠する(ひまわり学生運動)。
8月 高雄でガス爆発事故、死者32人、負傷者300人以上。
11月 直轄市および県市長選挙(統一地方選挙)実施。民進党が14席獲得し躍進、国民党は8席。
2015年
1月 服役中の陳水扁前総統、健康上の理由で保釈される。
2月 台北で国内線旅客機墜落、43人死亡。
11月 馬英九総統と習近平国家主席がシンガポールで会談。1949年の国共内戦による分断以後初の首脳会談。
2016年
1月 民進党の蔡英文氏当選。台湾初の女性総統が誕生。同時に行われた立法院選挙で民進党が初めて過半数を超える68議席を獲得。
8月 蔡英文総統、台湾先住民族に謝罪する。
12月 蔡英文総統、アメリカ合衆国次期大統領のドナルド・トランプと電話会談を行う。1979年断交以来初。
2017年
1月 日本の対台湾窓口機関の名称が「交流協会」から「日本台湾交流協会」に変更。

同月、蔡英文総統、中央アメリカ4か国を歴訪。
12月 台中市と高雄市で大気汚染の改善を訴えるデモ行進が行われる。
2018年
2月 アメリカ連邦議会、アメリカと台湾との高級官僚の相互の訪問を促進する「台湾旅行法」を可決。
10月 台湾東部で特急脱線、転覆事故発生、18人死亡、187人負傷。
11月 統一地方選挙、民進党惨敗。県市長選で民進党6席のみ、国民党15席獲得。
2019年
5月 台湾立法院、同性婚認める法案可決。アジア初。
6月 香港での「逃亡犯罪人引き渡し条例」改正反対デモへの国際的な関心が高まる中、蔡英文総統が談話を発表、民主台湾は「一国二制度を断じて受け入れられない」と述べ、香港の民主デモへの支持を表明。
7月 蔡英文総統、カリブ海の友好国を歴訪。途中、ニューヨークを訪れ、駐ニューヨーク台北経済文化代表処(実質大使館)での友好国の国連代表とのレセプションに参加する。現職の総統がアメリカの在外代表部で公式なイベントに参加するのは1979年の断交後初。
12月 台湾を訪れる観光客が5年連続で1千万人を超える。1111万人の新記録を樹立。
2020年
1月 蔡英文再選。民進党、立法院選挙で議席を7減らすものの、前回に続き過半数を獲得。

同月、中国でコロナ・ウイルスが発生、世界中に感染拡大。台湾では厳しい水際対策が功を奏し、ウイルスの国内侵入を抑える。4月12日から12月20日まで252日間「本土感染者ゼロ」を記録。
6月 高雄市長韓國瑜の罷免投票が行われ、「同意する」が96万票を超え、可決される。県・市長が罷免されるのは初。
7月 前中華民国総統李登輝死去(97歳)。
8月 台湾の外貨準備量が5千億ドルを超える。
2021年
4月 台湾東部で特急列車脱線、転覆、49人死亡、213人負傷。
5月 台湾でコロナ感染拡大。同月末には警戒レベル3が宣言され、全国の小・中・高の学校が登校を停止する(7月末にレベル2に引き下がる)。
10月 高雄市の老朽化したマンションで深夜火災が発生、死者46人。
2022年
7月 安倍晋三元首相が暗殺。弔問に特使として副総統・頼清徳が来日する。1972年の断交以来、最高位の政治人物の訪日。
8月 ペロシ米下院議長が台湾を訪問。中国猛反発、大規模軍事演習を実施し、台湾海峡緊張高まる。
9月 台湾東部で震度6強の地震が発生、各地で強い揺れを観測。
11月 統一地方選挙、民進党惨敗。県市長選で民進党5席、国民党14席獲得。

書誌情報
天江喜久「台湾21世紀年表」『《アジア・日本研究 Webマガジン》アジア・マップ』1, TW.3.03(2023年7月5日掲載)
リンク: https://www.ritsumei.ac.jp/research/aji/asia_map_vol01/taiwan/timeline/