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2021.09.29

第36回AJI 研究最前線セミナー開催

 2021年9月14日、第36回AJIリサーチフロンティアセミナーがオンラインで開催されました。今回は、Dr. 孫怡(Cindy Yi Sun)(立命館大学アジア日本研究機構研究員)が“Influences of the COVID-19 Pandemic on Families with Young Children: A Comparison between Japan and China”と題する発表を行いました。Dr.孫は、家族関係、特に母親と幼児の生活の質 (QOL) に関する比較研究をご専門としています。

 コロナ禍において、中国や日本でも、家族が家に閉じ込められ、親族や友人からも離れ、さらに失業や経済的な問題が生じています。その結果として、特に幼稚園児を持つ母親の間で健康状態の悪化、精神的ストレスの増加などの問題が表面化しています。コロナの母親のQOLへの影響を評価するために、Dr.孫はアンケート調査を実施し、回帰分析を用いてデータを作成しました。そのデータを通じて、中国では強制措置がはるかに厳しいにもかかわらず、日本人の母親の間でストレスレベルが高く、怒りを感じる回数が増え、充足感が低下しているという驚くべき結果が示されました。その理由の一つとして、中国では祖父母と子どもが同居する傾向があり、母親の負担が軽減されていることが指摘されました。それと関連して、中国の母親は、子供の学習時間の喪失と電気機器の過剰使用により関心があり、一方日本人の母親は、子供が友人と外で遊べないことに最も関心がもつ傾向があるという違いが見出されました。また、パンデミックによるポジティヴな側面については、パンデミックのために父親が在宅することで家族で共有する時間が増えたことが母親と子どもの健康に良い影響を与え、困難な状況のなかでも家族の間の結びつきが強化されたという点が示されました。

 発表後は、中国と日本の子どものサンプル調査の間に年齢の違いがあることをめぐって質疑応答が行われました。Dr.孫は、今後も比較研究の有効性の向上のためにサンプルの収集に取り組んでいます。今回の発表では、非常にアクチュアルな問題設定をめぐって、参加者の間で非常に活発な意見交換の場を共有することができました。

2021_09_29_02
発表を行うDr.孫怡
過去のAJI最前線セミナーについては以下のリンクからご覧いただけます。
https://www.ritsumei.ac.jp/research/aji/young_researcher/seminar/archive/