卒業生からのメッセージ

文学部での学びが社会でどのように活かされているかを、卒業生からのメッセージを通じて紹介します。

2020

その他

夢がかなった作家デビュー。 立命館の4年間が、私の原点。

哲学専攻 2011年卒業

小説家

小説家になる――。それが、子どもの頃からの夢でした。夢が現実になったのは2019年。文芸誌「すばる」(集英社)に掲載された小説『犬のかたちをしているもの』が「第43回すばる文学賞」に選ばれ、作家高瀬隼子としてデビューを果たしました。昼間は教育関係の会社で事務の仕事をしながら、夜は自宅でパソコンを叩いて小説を書く。そんな毎日が続いて、もうかれこれ10年近く。あきらめなかったことで、夢をひとつ、かたちにすることができました。graduate/graduate28_sub01 第43回すばる文学賞授賞式の様子

立命館大学文学部は、そんな私の作家活動の原点ともいえる場所です。文芸誌の新人賞に初めて応募したのは、まだ立命館の学生だった頃。なにより文学部での学びや、そこで出会った人たちと過ごした時間が、その後の作家活動に大きな影響を与えています。

今でも思い出すのは、文学部の建物にある「共同研究室」です。そこは大学院生だけでなく、学部生も自由に出入りができる“サロン”のような場所。「最近読んだ○○は面白い」「フランス文学は、今これが熱いぞ」。人が集まれば、誰が号令をかけるわけでもないのに、たちまち議論が始まります。そんな自由な雰囲気が大好きで、授業がない日でも通って議論に加わっていました。知らない情報や知識に触れる機会も多く、私にとっては「大学生をしている実感」を味わえる学びの場でもありました。

また文芸サークルに所属し、感動を共有できる多くの仲間と出会えたことも貴重な経験でした。作品を読み、具体的にどこが、どんなふうに面白かったのか、何を感じ、何を得たのか、思ったことを思った通りに言い合える。そんな環境の中で、少しずつ価値観や感性が磨かれていきました。当時のメンバーとは、卒業から10年近くたった今でも、交流が続いています。互いの作品を持ち寄る「合評会」は、図書館からWebへと場所を変えて継続中。短歌や現代詩を雑誌に投稿し続ける仲間もいて、作家活動の刺激ももらい続けています。 graduate/graduate28_sub02 Webでの合評会の様子

もちろん専門だった哲学も、一生懸命勉強しました。哲学の勉強は予想どおり(?)に難しく、わずか4年で答えにたどり着けるほど生易しいものではありません。それでも谷徹先生の授業やゼミ(専門演習)で議論を交わし、多様な意見に触れる中で、人と違う意見を持つことを恐れない姿勢だったり、他者の目線で物事をとらえる視点を育てたりすることができました。小説を書く時に大切なのは、少し距離をおいて対象を観察すること。学生時代に身に付けた感性は、きっと自分でも気付かないところで作品づくりに役立っているに違いありません。 立命館大学で過ごした4年間を振り返ると、楽しかった記憶しかありません。
それはきっと、数えきれないほど多くの素晴らしい出会いがあって、たくさんの「引き出し」を得ることができたから。
一人ひとりが自分の力を伸ばせる環境が整った大学。それが立命館大学です。

(インタビューした内容を大学で構成して掲載しています)


『犬のかたちをしているもの』

著:高瀬隼子
作品はこちら

*新作『休学(国産のため)』(文藝2021年春季号)、『水たまりで息をする』(すばる2021年3月号)もよろしくお願いします!


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