8つの学域

人間研究学域

人間研究学域

HUMAN STUDIES PROGRAM

正解のない問いに満ちた
現在(いま)を、
予測不可能な
未来を生きのびるために

本学域は、哲学・倫理学専攻と教育人間学専攻から成り立ちます。両専攻はともに、現代の切迫した問題を、表面的、流行的、一時的な見方にとらわれず、〈人間〉を軸にして、より根本的な次元に立ち返ってとらえなおすことによって、人間の可能性、人知の可能性を創造的に切り拓いていくことを特徴としています。
正解のない問いに満ち満ちた現在を、予測不可能な未来を、軽やかに、したたかに、時には這いつくばってでも、生きのびるための「智慧(アイディア)」と「技術(アート)」という秘宝(ワンピース)を求めて、冒険の旅路に私たちと一緒に出かけませんか?

COLUMN

教育・研究の“リアル”を発信、教員コラム

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学生時代にデリダに受けた衝撃がいまも研究の動機

20世紀後半に活躍したフランスの哲学者、ジャック・デリダを研究しています。とくにこれまで取り組んできたのが、1960年代に彼の思想がどのようにつくられたのかというテーマです。私がデリダの本を初めて手に取ったのは、立命館大学文学部の哲学専攻に在籍していた学部1回生のときでした。『声と現象』など、デリダの初期の代表作を読んだのですが、当時の私には難しくてよくわからなかったというのが正直なところです。謎に満ちた哲学の本。でもなぜか強烈に惹かれ、「彼の思想を理解したい」と強く感じたのです。

デリダは「脱構築」という概念を提唱することによって、古代ギリシア以来の伝統的な哲学の言葉や考え方をぐらつかせたことで知られています。私たちは物事を考えるときに、「二項対立」の図式に当てはめがちです。男性と女性、善と悪、敵と味方……。そのような二項対立の考え方は馴染み深く、物事を理解しやすくしてくれます。そしてこの二項対立は、ヨーロッパの哲学(形而上学)の伝統的な考え方を縛るものでもありました。哲学者たちは、自己と他者、西洋と東洋、精神と物質といったように、物事を2つに切り分けて哲学を構築していったのです。しかしデリダは、その二項対立の考え方が本当に正しいのか、疑問を投げかけました。二つに分けるということは、片方のなかには、もう片方がまったく存在しないということを意味します。デリダは、そのような切り分け方をすることで、哲学が何かを見失ってきたのではないかと問うたのです。

デリダの問いは、人間の「自己」にも向かいます。ふつう人は、自分と自分以外の他人を、 切り分けて考えています。しかし、「自己」はいつも本当に同じ「自己」でしょうか。私たちが誰かの話を聞いたときにメモをとるのは、「今の自分はこの話を覚えているけれど、明日の自分は忘れているかも知れない」と考えるからです。また10年前に自分が書いた文章を読んで、「これを本当に自分が書いたのだろうか」と驚くこともよくあります。そのように、言葉を読むことと書くことを通じて、私たちは「自己」のなかに「他者」がいることを経験しているのではないでしょうか。このようなデリダの考えに引き込まれたことが、学生時代から今にいたるまで研究を続ける動機となっています。

亀井 大輔

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