8つの学域

日本文学研究学域

日本文学研究学域

JAPANESE LITERATURE PROGRAM

豊潤な文学・語学の世界を感受し、
新時代を切り拓く思考を磨く

日本文学研究学域は、日本文学専攻と日本語情報学専攻で構成されています。日本文学専攻では、歴史的、空間的、さらには社会的な視野を教育・研究の方法に組み込みながら、国際化する現代社会における日本文学(研究)の意義を探求します。
日本語情報学専攻では、情報技術を活用した新しい日本語研究、図書館を通して見えてくる高度情報化社会の問題の発見と解決に取り組みます。

COLUMN

教育・研究の“リアル”を発信、教員コラム

コラムを見る

「黄昏」は、「誰そ彼(そこにいるのは誰)」だった。 変わり続ける日本語、1000年の長い旅。

夕暮れ時を「黄昏(たそがれ)」といいますね。これはもともと「誰そ彼(たそかれ)」で、この「かれ」は、今の日本語の「あれ」に(同じではないのですが、ほぼ)あたる指示詞。平安時代以降、この「か」はだんだんと使われなくなり、現代語では「あ」となっています。

「かれ・あれ」だけではありません。「これ」「それ」「こう」「そう」など他の指示詞にも、それぞれ長い歴史と物語があります。では、それらは古代語ではどのように使われ、時間の流れの中でどのように変化し、現代語のようになったのでしょうか。私はそこに強い興味を抱き、いわゆる「こそあど」とよばれる指示詞の歴史をずっと追いかけてきました。

指示詞の歴史をひも解くと、面白い発見がいくつもあります。たとえば奈良時代に成立した『万葉集』にみられる指示詞は、3つめ系列「か」がほとんどなく、「こ」と「そ」の2系列です。「か」が頻繁に登場するのは平安時代になってから。さらに奈良時代以前には「こ」の1系列しかなかったといわれます。奈良時代になって、それが2つになり、平安時代に「か(あ)」が加わって3系列になったと推測できます。きっとむかしの人びとは、ものを指差す言葉を、近くのもの、遠くのもの、中間にあるものと、それぞれ区別できるようにしていったのでしょう。言葉の世界は、新たな発見に満ちた、わくわくワールドです。

研究にあたっては、国立国語研究所が開発した「日本語歴史コーパス」「現代日本語書き言葉均衡コーパス」と呼ばれる日本語データベースをツールとして使います。コーパスは、奈良時代から現代までのあらゆる文書資料を網羅し、高度な検索・集計も可能です。日本には『万葉集』をはじめ、日本語で書かれた文書資料が多く残されています。私たち研究者は、そうした資料を丹念に分析しながら研究を進めていきますが、資料ひとつひとつから、目視で例を集めていたのでは、時間がいくらあっても足りません。「日本語コーパス」は、そんな研究活動をさらに早く、データは大量に、そして正確におこなう目的で構築された基礎資料のインフラ。開発プロジェクトには私自身も共同研究員の一人として参加し、コーパスを研究にどのように生かすか、主に運用面での調査研究に携わりました。

岡﨑 友子

コラムを見る