教員コラム

文学部には100名を超える教員が在籍しています。一人ひとりのリアルな教育・研究活動を紹介します。

COLUMN

メディアで変わる「観光」の最前線を追う


地域観光学専攻

地域研究学域
教授

遠藤 英樹

皆さんはもうご存知だと思いますが、今、新しいメディアの登場によって、旅行の形が大きく変わってきています。写真アプリのInstagramを愛好する世界中の若者たちにとって、旅行は「インスタ映え」の絶好の機会です。外国人観光客たちの間では、浴衣を着て神社・仏閣などで写真を撮り、それをInstagramにアップすることが、京都を訪れる目的になっていたりもします。それを見た友だちや家族は、旅行ガイドブックだけでなく、「インスタ映え」の写真も参考にして、日本を訪れるというサイクルが生まれているのです。

京都以外の観光地も、新しいメディアを活用して観光客を呼び寄せる工夫を始めています。アニメ作品の舞台となった場所を訪れる旅を「アニメ聖地巡礼」と呼びますが、「聖地巡礼」の目的となった地域の中には、AR技術によってアニメキャラと一緒に撮影ができるスポットを用意することで、集客につなげているところがあります。こうしたメディア・テクノロジーの活用はディズニーリゾートなどのテーマパークでも見てとれます。このように、観光のスタイルがメディア・テクノロジーによって大きく新たなかたちへと変化することに関心を持ち、「観光とメディアの関係」の最前線を研究し続けてきました。

マレーシアにおけるオランアスリ村のフィールドワーク

日本は数年前から「観光立国」を目指し、外国人観光客の誘致に力を入れています。その結果、実際に外国から来る観光客の数は激増し、今年2020年の東京オリンピック・パラリンピック催で、さらに増えることが予想されています。全国の自治体も、それぞれの特色を生かしてスポーツ、食、医療、自然などをテーマとした観光開発を進めています。私のゼミに所属する学生も、東京2020オリンピック・パラリンピックに注目して卒業論文を書いている人もいます。また地域観光学専攻の学生を中心に、自治体から「地域を盛り上げるための観光のアイディアを出してほしい」と依頼され、学生が自主的に企画を練って提案する活動なども行われています。学びがそのまま社会とつながって、地元の人々と観光客双方に喜んでもらえることに、学生たちも大きなやりがいを感じているようです。

このように「観光学」は単なる机上の学びではなく、密接に今の社会と関係し、成果を社会へ還元することができる学問です。卒業生の中には旅行会社で働いたり、自治体で地域活性化に取り組んだり、テレビ局などのメディア関連の企業で働く人もいます。単に旅行を楽しむだけでなく、一歩引いた視点を持って、「なぜ人はそのような行動をとるのか」を分析してみたい方は、ぜひ「観光学」を学んでみてください。

PERSONAL

遠藤 英樹

専門領域:
観光社会学
オフの横顔:
ロック音楽が好きで、中学、高校とバンドをやっていました。そのためもあって、ロックフェスや音楽の聖地巡礼といった「ミュージックツーリズム」も研究テーマの一つです。