テクニック編

卒業研究作成の仕方

1. 卒業研究(卒業論文)の意義

大学における4年間の学びの集大成ともいえるのが卒業研究です。本学部では現在、この卒業研究が必修(2018年度入学生以降)となっています。なお、「卒業研究」は、いくつかの要件を満たせば論文以外の形態をとることも可能です(ただし、その場合も成果物について説明する付属文書が必要です)。

卒業研究は、最低1年、通常2年間かけてじっくり取り組むもので、通常のレポートとは根本的に異なります。論文形式の卒業研究は、特定の研究テーマについて、文献や資料を基に客観的な事実を分析・考察し、論理的にまとめた学術的な文章です。本学部では、論文形式の卒業研究は20,000字と定められています。

本格的な論文をしっかり書くことで、大学で何を学びたかったのかが明確になり、自らの問題意識で物事を解明する力を身につけることができます。調べた情報を単に要約・整理しただけでは論文にはなりません。何らかの問いに対して自分で考え、論理的に答える文章こそが論文です。インターネットや生成AIが普及する中で、自らの力で論理的に考え、その内容を文章として表現する能力、すなわち論文執筆能力を養う必要性はこれまで以上に高まっています。高等教育を受けた証として、水準の高い論文を完成させ、高度な知的能力をぜひ身につけてください。

論文形式をとらない卒業研究についても同様です。4年間の学修の集大成となる知的成果物である以上、高等教育の成果に相応しい内容とすることが求められます。

2. 卒業研究(卒業論文)とは何か

(1) 論文形式をとる卒業研究(卒業論文)

学部生の卒業研究(卒業論文)には何が求められるのでしょうか。大学院の博士論文のように高いオリジナリティが必ずしも必要とされるわけではありませんが、以下の点は不可欠です。

  1. ① 4年間の学修の集大成として相応しい研究課題であること
  2. ② 研究課題に沿って体系的・論理的に検証され、結論が導かれていること
  3. ③ 国内外の既存研究の成果を踏まえていること
  4. ④ 検証に裏づけられた主張やメッセージ性を持つこと
  5. ⑤ 注・参考文献など、論文としての形式を整えていること

まとめると、必要な要素は①4年間の集大成に相応しいこと、②論理性・体系性、③既存研究のフォロー、④メッセージ性、⑤論文としての形式です。

(2) 論文形式をとらない卒業研究

論文形式をとらない卒業研究を提出することも可能です(その場合でも成果物を説明する付属文書が必要です)。ただし、その場合でも4年間の学修の成果であることが求められます。

  1. ① 4年間の学修の集大成として相応しい成果物であること
  2. ② テーマに沿って作成され、適切に表現されていること
  3. ③ 国内外の同類の成果物を踏まえていること
  4. ④ 既存の成果物にはない主張やメッセージ性を持つこと
  5. ⑤ 所定の形式を整えていること(フォーマットなど)

3. 卒業研究(卒業論文)作成のプロセス ─テーマ設定から完成まで─

(1) 論文形式をとる卒業研究(卒業論文)

ステップ0 前提となる知識や理論の習得

国際関係に関するさまざまな学問(国際関係学はもちろん、法学、政治学、経済学、社会学など)を幅広く学んでいることは、卒業研究を作成する上での前提となります。その意味で、1回生以来の大学での学び全体が卒業研究の基礎になります。

そのうえで、関心のあるテーマについて基礎的な知識を身につけることが重要です。このバックグラウンドリーディングでは、テーマに関する文献を幅広く収集し、大まかでよいので一通り目を通しておくことが肝心です。バックグラウンドリーディングは、対象の周辺領域を理解するための作業であり、リサーチした内容をそのまま論文に反映させるものではありません。すべてを書き込もうとするのではなく、テーマの全体像を把握し、卒業論文のテーマを絞り込むための準備作業と理解してください。

こうしたバックグラウンドリーディングを行わずに、いきなり研究テーマを設定しようとして行き詰まる学生は少なくありません。これは、「どのようなテーマについてどのような議論が行われているのか」という点を踏まえずに問いを立ててしまうことが原因です。研究を始めてみたものの、自分のテーマが的外れであることや、すでに議論が尽くされていることに気づき、再度テーマを探し直す羽目になるケースも多く見られます。

まずは、自分の関心のあるテーマについて広く浅くバックグラウンドリーディングを行うことが、基礎知識を身につけるうえでも、こうした事態を避けるためにも不可欠です。

ステップ1 研究テーマの探索

関心のあるテーマについてバックグラウンドリーディングがある程度進むと、いよいよ研究テーマの探索を開始します。どのようなテーマで論文を書くのか、何について書くのかを決めることから論文作成は始まります。研究テーマを設定する上での重要なポイントは以下の通りです。

  1. ① 明確な分析・調査対象があること(What)
    例えば「日本外交」だけでは研究テーマとしては漠然としすぎています。日本外交の「何(What)」を分析しようとしているのかを明確にすることが重要です。「軍縮問題をめぐる日本外交」「核軍縮問題をめぐる日本外交」といった具合に、徐々にテーマを絞り込んでいく必要があります。2万字の卒業論文は、書籍でいえば一章程度の長さです。壮大なテーマを掲げても具体的な考察ができないまま終わってしまいます。できる限り具体的なテーマを設定することが、しっかりした分析につながります。
  2. ② どのような範囲を対象とするのか(When)
    「核軍縮問題をめぐる日本外交」といっても、「いつ(When)」を扱うかによって研究内容は大きく変わります。①のWhatを絞り込む過程で、どの時期に焦点をあてるのが適切かを考える必要があります。例えば、核兵器禁止条約形成過程における日本外交に焦点を絞るのであれば、分析対象とすべき時期は自ずと定まってきます。
  3. ③ なぜ(Why)このテーマを選んだのかが明確になる問題設定
    自分が論文を通して何を明らかにしたいのか、この問題を分析すればどのような知見が得られるのか、何のためにこの論文を書くのかを言語化することが重要です。単に「面白そうだから」「興味があるから」では論文として成立しません。
    例えば「日本が核兵器禁止条約形成過程においてどのような外交を展開したのか」を分析することで、唯一の被爆国でありながらアメリカの核の傘に依存して安全を確保しようとする日本の安全保障政策の課題を明らかにできる、というように説明できる必要があります。
  4. ④ どのように(How)この問題に取り組むのか
    上記の問題意識を明らかにするために、どのような理論的枠組みや分析手法を用いるのかを考えなければなりません。

こうした研究テーマの探索・絞り込みにおいて不可欠なのが、先行研究のサーベイです。自分の研究テーマに関して、具体的にどのような研究がなされ、どのような議論があり、どの部分が十分に考察されていないのかを把握することが、①から④を定めるうえで決定的に重要です。

ステップ2 本調査

先行研究についておおよそ理解し、研究テーマが定まったら、いよいよ本格的な研究を開始します。調査・研究方法は分野やテーマによって異なるため、担当指導教員のアドバイスを受けながら進めてください。

まず行うべきことは、研究テーマに関して「具体的にどのような問いに答える論文とするのか」を明確にすることです。何らかの仮説を検証するのか、あるいは「なぜ●●なのか」「どのように▲▲が行われたのか」といったリサーチクエスチョンを設定し、それに答えるために調査を行い、検証・考察を進めていきます。

ステップ3 論文執筆

論文執筆は、収集した学術論文や調査結果を論文の趣旨に沿って体系的に文章化していく作業です。これはステップ2(本調査)と並行して進められることが一般的です。

執筆に際しては、研究テーマ、具体的な問い、それに答える方法を改めて整理し、それに基づいた論文構成=全体のアウトラインを書き出すとよいでしょう。その上で、各項目を徐々に具体化し、詳細なレジュメを作成すれば、いきなり文章を書き始めるよりもスムーズに進むことが多いです。

実際の執筆過程では、当初のアウトラインが変わることも少なくありません。一度書いた文章も、論理展開に注意しつつ、恐れずに構成を見直すことが、読み手にとって理解しやすい、論理的な論文を仕上げるコツです。

また、論文は必ずしも第1章から順に書く必要はありません。書きやすい部分から取り組むのが実際的です。ただし、全体構成を見失ったり、周辺的な事実や背景説明に文字数を割きすぎて肝心の論旨がなおざりになったりすることは避ける必要があります。常に論文全体の構成やバランスを意識し、自分がいまどの部分を書いているのかを確認しながら進めることが重要です。

ステップ4 参考文献

論文はあくまでも自分の名前で発表するものであり、そこに書かれている言葉はすべて自分で考えた内容を、自分の言葉で表現していることが前提となります。とはいえ、実際には自分の考察を行う上で、他者のデータや資料、先行研究に依拠することが一般的です。そのため、自分の言葉と他人の言葉・アイディアを明確に区別し、参照した資料やデータを適切に明示することが決定的に重要です。これが適切に行われないと剽窃とみなされ、論文として認められません。

自分の論文を読んでもらい、メッセージやアイディアを正しく伝えるためには、適切な形式にのっとって執筆することが何より大切です。形式が整っていなければ、いくら内容が優れていても論文として評価されないことを肝に銘じてください。

基本的な考え方として、自分のアイディアや言葉として消化されているものには注をつける必要はありません。しかし、その着想が特定の文献に基づいている場合は、必ず文献注をつける必要があります。また、一般的な事実(例:「アメリカ大統領に与えられている権限は…である」)には注をつける必要はありませんが、一般的とはいえない事実については、客観的証拠を示す必要があります。

  1. 注を付けるべき典型的な場合は以下の通りです。
  2. ① 引用する場合(カギカッコを用いた場合は必ず注を付ける)
  3. ② 自分の言葉ではない分析や評価を用いる場合(資料を参照しながら書く際に多い)
  4. ③ 「~~と言われている」「~~と述べられている」といった表現を使う場合
  5. ④ 自分で収集したものではない数値を使う場合(例:世論調査や予算の数値など)

論文執筆後にまとめて注をつけようとすると、どの文献を参照したのかが分からなくなってしまうことが少なくありません。面倒がらず、執筆の段階から注をきちんと付けておくこと(大まかにではなく、後で調べ直さなくても済むよう正確に記録すること)が、結果的に大きな時間の節約につながります。ステップ3(論文執筆)とステップ4(参考文献整理)は並行して行うと効率的です。

※参考文献や注の表記方法は、IRナビの「論文・レポートの書き方」に準拠してください。

ステップ5 コメントをもらい、加筆修正する。

ゼミでの報告や指導教員への草稿提出を通じて、批判的なコメントを受けることは非常に重要です。論文の目的は、自分が調査・分析した研究内容を他者に伝えることにあります。自分の主張が読み手に正しく伝わらなければ意味がありません。

論理的な研究内容を文章で効果的に表現する技術を、一人だけで身につけるのは極めて困難です。他者の視点を取り入れ、コメントを受けながら文章を修正していくことが大切です。この段階では、①自分の伝えたい内容が正確に伝わっているか、②論文全体の論理に矛盾がないか、の両方を意識して加筆修正を行いましょう。

ステップ6 誤字脱字、変換ミスの見直し、文章の見直し、完成

論文の完成度が高まってきたら、「てにをは」のレベルで細かい修正を行います。パソコン画面上では誤字脱字や変換ミスを見落としやすく、また何度も推敲を重ねると注意力が散漫になりがちです。

そのため、論文をプリントアウトして読む、声に出して読む、友人とお互いに読み合う、といった工夫が有効です。これにより、見落としていた誤りに気づき、論文全体の完成度をさらに高めることができます。

(2) 論文形式をとらない卒業研究

論文形式をとらない卒業研究も、表現形式は異なるものの基本的なステップは同じです。最後に、成果物の意義を説明する付属文書を必ず作成する必要がある点に注意してください。

4. 文献・情報・題材の見つけ方

(1) 既存研究の見つけ方

① 芋づる式

図書館に足を運び、研究テーマに関連する図書・雑誌を手に取り、そこに掲載されている参考文献をたどって、テーマに直結する論文を見つけていく方法(いわゆる「芋づる式」)です。書籍や論文で引用されている文献は、当該テーマに関して学術的意義が高い可能性が大きく、闇雲にインターネットやデータベースで検索するよりも重要文献に出会える確率が上がります。さらに、キーワード検索では引っかからない文献が思いがけず見つかることもあります。図書館を大いに活用してください。

② インターネット・データベース検索

本学関係者は、立命館が契約している有料データベースを無料で利用できます。立命館大学図書館のホームページから論文・記事データベースにアクセスすれば、主要新聞・雑誌記事のキーワード検索も可能です。近年はPDFでダウンロードできる論文・記事が多く、保管場所も不要なため、関係しそうな文献は積極的に保存しておくと便利です。本学に所蔵のない文献についても、図書館カウンターで複写依頼(実費負担)や文献貸借(ILL)を申請できます。

(2) 関連情報のみつけ方

① 関連機関のホームページ

学術情報と同様、図書館サイトには各種統計・情報の有料データベースがリスト化されています。まずは一通り確認しておくとよいでしょう。あわせて、調べるテーマに関係する機関・団体、関係省庁、各種審議会のホームページにも有用な資料が掲載されている場合があります。どのサイトが適切かはテーマによって異なるため、指導教員に助言を求めると効果的です。

② インターネット上の情報に注意

関連機関の公式報告書や研究者による査読論文等を除き、インターネット情報には信頼性に欠けるものが少なくありません。特にWikipediaは一般的情報の入口としては便利ですが、誤りや網羅性の問題が指摘されることもあるため、卒業論文の一次資料として用いるべきではありません。参照した場合でも、記載内容が事実であるかを出典まで遡って検証することが必須です。

執筆者:足立 研幾
執筆日:2025年10月31日