教員紹介
- 生命倫理
理性的に考え、他人に頼らずに自分の判断で行動する。哲学という学問分野では、そんな人間のあり方を前提として、人間の認識や行動を理解しようとするのがずっと主流でした。しかし、人間は理性的な精神だけでなく、生身の体や喜怒哀楽の感情をもち、おたがいに頼り頼られする関係の中で生きる存在でもあります。必ずしも理性的なばかりではない人間のあり方に注目する流れは、最近になって大きくなっていますが、それにつながる思想は、200年以上も前から、たとえばヒュームという哲学者によって展開されています。私は、こうした過去の遺産にも学びながら、相互依存の中にいる生身の人間のあり方を探究しています。
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現代社会では、価値観が多様化し、伝統的な倫理は自明とはいえなくなっています。各人の自由を尊重するならば、それを制限する倫理は邪魔なもののようにさえ映ります。ある人のいう正義は、他の人にとっては単なる偏見であったりもします。倫理なんて現代社会ではもはや成り立たないのかもしれません。他方また、凶悪事件や不祥事が生じると倫理観の欠如が嘆かれますし、クローンなどの新たな科学技術が生まれるとどう対処すべきかという倫理が求められもします。いったいいかなる倫理が求められ、またいかなる倫理が可能なのでしょう。答えは1つではなく、さまざまな可能性を提起することができます。ここに私の研究の面白さがあるのです。
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20世紀米国の哲学者ジョン・ロールズの正義論を中心とした規範倫理学や政治哲学、ならびに生命倫理・スポーツ倫理等の応用倫理学を研究しています。研究対象となるトピックは多種多様ですが、これらに共通するのは公平性に対する関心です。例えば、社会制度のあり方は人々の人生の見通しを生まれながらにして大きく左右します。では、どんな社会が公平な社会でしょうか。また、勝利のためならどんなに汚いプレイも厭わないというスポーツ選手は、反則さえしなければフェアプレイの精神に則っているのでしょうか。こうした重要だけれども曖昧な倫理の言葉の意味を具体例に即してひとつひとつ解きほぐして行く点に、私の研究の面白さがあります。
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