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2015.12.04
新興国・発展途上国における静脈産業に日本が協力できることは何か? —政策科学部2回生の「中国プロジェクト」における国際交流と現地調査
経済発展著しい新興国・発展途上国において、消費者の生活をより便利で豊かなものにするための商品を提供する「動脈産業」に加え、それらの消費に伴って発生する廃棄物や汚水などを適切に回収、運搬、処理する「静脈産業」の形成が求められています。特に廃棄物に着目すると都市部の拡大・高密度化の進む中国においては、最終処分場の処理容量の限界から、新しく排出される廃棄物の減量化が不可欠であると言われています。政策科学部2回生の政策実践プロジェクト「中国プロジェクト」では、中国における廃棄物処理プロセスの課題のなかでも、廃棄物の減量化のための「ゴミ分別」に着目して研究を進めています。 夏季休暇期間には、大きく2つの活動を行いました。1つは中国大連市の東北財経大学からの短期留学生との意見交流、もう1つは大連市、吉林市、および北京市におけるフィールドワークとインタビュー調査です。これらを通して中国における廃棄物処理のプロセスやゴミ分別の実態を分析しています。
中国、東北財経大学の留学生との交流
2015年8月2日〜7日の6日間、東北財経大学からの短期留学生らとともに、本学にて合宿を開催いたしました。合宿においてはフィールドワークを通した交流とあわせて、「中国プロジェクト」の調査課題として中国におけるゴミ分別に関する認識や日本のゴミ分別に関する所感について、留学生を対象にインタビュー調査とアンケート調査を行いました。この交流により、中国と日本では廃棄物の種別に相違点があるということ、およびゴミの分別に関する認識面での実態を把握することができました。
大連市での現地調査
2015年8月29日から9月6日の間は中国国内での現地調査を、フィールドワークを通したゴミの現状把握と関係者に対するヒアリングによって行いました。また一部の学生は8月28日までの約2週間、東北財経大学での短期留学プログラムに参加していたため、言語や文化にある程度慣れた状態での調査開始となりました。
大連市ではまず東北財経大学の教員、大連理工大学の教員およびJETRO大連事務所の職員から、中国の都市化の現状について講義をしていただきました。また大連市信用協会でのヒアリング調査では、大連市における廃棄物政策や廃棄物処理の現状について情報提供していただきました。さらに、大連市における焼却処分と焼却熱を用いた発電を行う事業者であるTEDAでのヒアリング調査では、環境教育のために開放されている施設を見学させていただき、廃棄物が焼却処分に至るまでの過程について説明をしていただきました。全体として、大連市内におけるゴミ分別の方針と実態について理解が深まる、貴重な機会となりました。
吉林市での現地調査
続いて大連市内から高速鉄道で3時間強の移動を経て、吉林市内で調査を行いました。吉林市のゴミ発電プラントはメンテナンス中であったこともあり、バスの中でプラントの計画者の方から設備に関する説明をしていただきました。その後、プラントの処理能力、発電量や主たる収入源など、施設運営に関わる具体的な話を聞かせていただきました。また、吉林市の開発に関連し、満州国時代に建設された豊満ダムの見学をする機会も得られました。
吉林市は中国東北部ということもあり、滞在中は南部の朝鮮半島および西部のイスラム文化といった多様な文化が融合している様子を感じ取ることができました。中国プロジェクトの調査成果とともに、学びの多い滞在となりました。
北京市での現地調査
中国での現地調査の締めくくりとして、北京市の北京理工大学日本語学院において、「中国プロジェクト」の調査報告と意見交換をしました。北京理工大学の学生の皆さんからは、日本におけるリサイクルや分別収集に関する法制度や教育などに関する質問や、廃棄物処理の中国との違いに関する質問が提起されました。中国および日本における諸制度が、お互いにとって当然のものでは必ずしも無いことが、改めて確認される機会となりました。
帰国をして、これより政策実践プロジェクトの中間発表、および最終発表に向けて分析を磨いてまいります。特に、日本の事例に関する調査も目下進行中です。
2015.11.16
GLO演習(ベトナムプロジェクト)がベトナム・カントー大学WEBページで紹介
2015年9月7日から13日まで、政策科学部のグローバル/ローカル・オンサイト演習(2回生ゼミナールのリサーチフィールド科目)において、ベトナムプロジェクトの学生が、ホーチミン市およびカントー市を訪れました。プロジェクトの内容はすでに公開されていますが、この訪問は、メコンデルタの名門国立大学であるカントー大学の公式ウェブページにも掲載されました。今般日本語訳ができましたので、以下に紹介します。なお、オリジナルの記事には、プロジェクトの教員や学生の写真も掲載されていますので、ぜひご覧ください。
カントー大学公式ウェブページ
立命館大学の仲上健一教授、立命館アジア太平洋大学の田原洋樹教授が7名の学生とともにカントー大学を訪問した。両教授とレー・ヴィエット・ズン副学長との会合もあわせて行われ、熱烈な歓迎に謝意を表明した。立命館の学生たちは、ドンバン地区クーロン河の環境問題について調査を行うために来訪したもので、現地の専門家からその詳細について学習することになっている。あわせて、立命館・カントー両校の友好的かつ堅固な関係構築を視野にいれて意見・情報交換が行われた。
仲上教授によると、立命館は京都に本部を置く私立大学であり、日本の有力私立大学の一つ。その教育理念は自由、平和、人類愛、国際理解だとされ、未来の国際社会で活躍するリーダーを育成するためのプログラムの充実につとめている。また、立命館は多くの海外大学と協力関係にあり、その研究教育上のネットワークは世界中に広がっている。今後も協力校の拡大に力を注いでいくという。
中山隼佑をリーダーとする学生のグループは、ホーチミン市の環境問題とその解決策に関する学習の成果について報告を行なった。ホーチミン市の環境問題のうち、長谷川慈が水質汚染、木戸智里が廃棄物投棄、木村美咲が大気汚染について、それぞれ研究計画を披露し、学生たちの問題理解の深さをうかがわせた。
この報告を受けて、カントー大学副学長をはじめ、環境自然資学部、法学部、社会学部、人文学部や関連する研究所から出席した専門家たちが、コメント・意見を述べるとともに、日本からの来訪学生がさらに学習を進めるために役立つ資料などを紹介した。とくに、環境問題に関わる地域住民の理解や意識、態度について、学生たちは新たな知見を獲得するとともに、政府がこれまでにとりくんできた生活環境改善へ向けた住民の意識向上策についても情報を得ることができた。さらに、今後目を向けるべき政策争点として騒音問題、ストリートチルドレンの実情がカントー大学側から示唆された。
訪問の締めくくりとして仲上教授は、アジア諸国をはじめ世界各国との協力関係構築への意欲を改めて表明した。メコンデルタ地域のトップ大学であるカントー大学も、国際的なネットワーク構築のために広く海外にパートナー大学を求めている。今回の訪問、会合が両校の有益なパートナーシップ関係構築の出発点となることを願う。
2015.10.30
国際シンポジウム「都市の持続性と公共政策」を開催します!
国際シンポジウム「都市の持続性と公共政策」開催について
政策科学部では国際シンポジウムを次の通り開催いたします。
政策科学部 OIC開設記念事業
「アジアのゲートウェイ」による共創型人材育成シリーズ②
国際シンポジウム 都市の持続性と公共政策
(日中同時通訳、英語ウィスパリング通訳あり)
日時:2015年11月19日(木) 13:00~17:20
場所: 大阪いばらきキャンパス B棟3F コロキウム(B374)
司会(13:00~14:30): 宮脇 昇 立命館大学政策科学部教授
13:00~13:05
開会挨拶
重森 臣広 立命館大学政策科学部長、教授
第1部 基調講演
13:05~13:35
基調講演 「公共政策のパラダイムの転換」
講演者: 張 向達 東北財経大学公共管理学院院長、教授
第2部 研究発表
13:35~13:55
第1報告 地域資源の活用―「住宅事情の比較分析からみる東京と北京の郊外化」
報告者:吉田 友彦 立命館大学政策科学部教授
13:55~14:15
第2報告 地域資源の活用―「港湾都市におけるイノベーションシステムの構築」
報告者:苗 麗静 東北財経大学公共管理学院教授
14:15~14:20
コメンテーター:桜井 政成 立命館大学政策科学部教授
14:20~14:30 休憩
司会(14:30~16:10): 西村 陽造 立命館大学政策科学部教授
14:30~14:50
第3報告 社会保障制度の改革―「中国における高齢者介護サービスの現状と問題点」
報告者: 劉 暁梅 東北財経大学公共管理学院教授
14:50~15:10
第4報告 社会保障制度の改革―「日本の公的保険制度の現状と課題
―経済財政の視点から―」
報告者: 本田 豊 立命館大学政策科学部教授
15:10~15:15
コメンテーター: 岸 道雄 立命館大学政策科学部教授
15:15~15:35
第5報告 サステナビリティ―「東アジア低炭素共同体の構築と政策工学の創成
報告者: 周 瑋生 立命館大学政策科学部教授
15:35~15:55
第6報告 サステナビリティ―「中国のレジャー農業の産業化促進における政府の役割 ―台湾地域への事例調査に基づいて―」
報告者: 葉 萌 東北財経大学公共管理学院大学院生
15:55~16:00
コメンテーター: 小幡 範雄 立命館大学政策科学部教授
16:00~16:10 休憩
司会(16:10~17:20): 石川 伊吹 立命館大学政策科学部教授
第3部 学生報告
16:10~16:20
梁 平慧(立命館大学・院)
「高齢者の近隣ネットワーク ―遼寧省開原市、京都府亀岡市における現地調査から―」
16:20~16:30
張 馨月(東北財経済大学・院)
「家族による高齢者介護方式の考察 ―親孝行文化の伝承に基づいて―」
16:30~16:40
翟 釗漢(東北財経済大学・院)
「中国における高齢者施設の経営モデルと問題点」
16:40~16:50
左 源(立命館大学・院)
「中国の公的年金制度における格差の考察」
16:50~17:00
孫 玥(立命館大学・院)
「南京市親意識の変化と親支援のあり方 ―京都こどもみらい館を手がかりとして―」
17:00~17:10
李 月琪(東北財経済大学・院)
「教育の公平性と品質」
17:10~17:15
コメンテーター:大塚 陽子 立命館大学政策科学部教授
劉 暁梅 東北財経大学公共管理学院教授
17:15~17:20
閉会挨拶
岸 道雄 立命館大学OIC総合研究機構副機構長、地域情報研究所所長
主催:立命館大学政策科学部・東北財経大学公共管理学院
対象:本学教職員・学生
2015.10.21
2015年度「国際PBLセミナー」を開講
政策科学部では、「大学の世界展開力強化事業・国際イノベータ育成プログラム」の一環である 国際PBL(Problem/Project-based Learning)セミナーを2015年度より開講しました。受講生は日本、インドネシア及びタイ出身者で合わせて19名でした。これからタイとインドネシアにそれぞれ留学する本学学生(政策科学部生ならびに経済学部生)、今年1月タイとインドネシアから帰国した日本人の本学学生(いずれも立命館大学政策科学部の学生)、そして、タイとインドネシアから立命館大学に短期留学しているタイとインドネシア人の学生という多国籍かつ多種多様な学生でした。
本科目は前半・後半と2つのパートに別れ、前半の授業は3つのテーマに分かれました。1つ目は日本の歴史と文化、2つ目は戦後日本の経済と社会問題、3つ目は環境政策です。授業においては日本と東南アジアの社会と環境問題といったテーマを学習し問題点を見つけながら、日本、インドネシアとタイ各国の事情を比較しました。受講生は「なぜごみ処理に対する理解と減量はある程度日本で実現できたが、タイとインドネシアではまだできないのか」、あるいは「日本の雇用問題と男女の格差はなぜ東南アジアにはあまり見られていないのか」などについて、自分の経験、観点そして収集したデータを発表し活発に議論しました。また、茨木市環境衛生センターごみ処理施設を訪問しました。ごみ処理の流れや燃焼方法を見学し、センター長と業務員からいろいろ話を聞くことができ、充実した授業ができたと思います。
後半では、学生はビジネス戦略について事例を通じて学びました。東南アジア各国に焦点を絞り、学生グループが選択した国の社会経済や文化、政治環境の相違に基づいて、当該国で実現可能だと考えられるビジネスの提言を行いました。また、異なる文化をもつ学生間が協力することの重要性に気づかせ、創造性、チーム力などを涵養するため、ゲームを取り入れました。また、アサヒビール工場を見学し、ビール製造工程を学ぶとともに、アサヒビールのビジネスモデルとマーケティング活動について学びました。また、特に東南アジアにおけるアサヒビールの拡大戦略について担当者と議論を交わしました。
このように、異文化を背景とする学生間での共同作業、フィールド調査、議論、課題である発表やレポート執筆を通じて、受講生は異文化理解に基づいた問題の理解と創造的な問題解決策の提案能力を培いました。

茨木市環境衛生センターへの訪問

ゲームによるチームビルディングの様子

アサヒビール工場の見学
2015.10.21
政策科学部開講科目「Gaming Simulation」におけるゲーム作りを通じた社会システムの理解
2015年度政策科学部開講科目「Gaming Simulation」では、受講生がゲームを活用した社会・政策の理解とともに、自分たちでデザインしたゲームを受講生に向けてプレイしました。ゲーミング・シミュレーションとは、社会(システム)の重要な要素を抽出した単純なモデルをゲームに組み込み、ゲームを通じて社会の仕組みについて、当事者の立場から体験を通じて理解する教育ツールです。本科目では、防災や意思決定、国際貿易などをテーマとしたゲーム体験を通じて、ゲームと社会の関係について学び、後半はグループに別れてゲーム作りならびに実践をしました。
あるグループは海外における市場での麻薬取引を題材に、警察はディーラーを発見することを目的とし、ディーラーは取引が警察にばれないように振る舞うことによって、闇市の実態をゲーム上に再現しました。別のグループは、資本主義や社会主義などの経済システムをゲームに組み込み、企業間の合併や自由市場などをゲーム上に再現し、プレイヤーはいくつかの経済システムを経験しました。また、 カードを資源(木材)に見立てて宝探しゲームを応用した不法伐採をテーマとしたグループもありました。さらに危機管理をテーマにしたグループは、様々な代替案を用意しておくことが必要であることを、イベントを通じて再現しました。
このように、ゲーミング・シミュレーションを作成することは、ゲームによって楽しく社会について学べることだけでなく、社会(システム)を単純なモデルに置き換え、それをゲームに実装するという、社会に対する深い洞察が必要です。本科目を通じて、受講生はその一端を経験学習することができたと思います。
なお、本科目は「大学の世界展開力強化事業」により派遣された交換留学生への受講推奨科目に指定されており、政策科学部の英語プログラムの学生だけでなく、インドネシアやタイからの留学生も受講しました。
ゲーミング・シミュレーション実施時の光景

麻薬密売人役を逮捕している警察役

より多くの資源を得るためのミニゲーム

資源を得るためのペン拾い競争

ゲームの重要性についてのプレゼン
2015.10.01
政策科学部2回生の政策実践研究プロジェクト「日本の安全保障とユーラシアプロジェクト」現地調査
政策科学部2回生のプロジェクトフォロワー「日本の安全保障とユーラシアプロジェクト」では、日露、日蒙の関係に注目し研究を進めています。特に、モンゴルとロシアのエネルギー産業の投資環境を踏まえ、これからの日本や日本企業がどのように協力を行うべきかを提言するために一年を通して研究を進めていきます。
夏季休暇中に海外での現地調査を下記のとおり行い、前期から行ってきた研究をもとに、リサーチ・インタビューや見学等を行いました。
モンゴル
大草原の中にたたずむモンゴルの首都ウランバートルは、近代的都市です。ウランバートルでは、JICAモンゴル事務所、ISS、在モンゴル日本大使館、モンゴル国エネルギー省などでインタビューを行いました。インタビューを通して、モンゴルのエネルギー資源は日本にとって、輸送ルートの問題や採掘できる石炭の種類など、エネルギー分野での課題が依然として多いものの、EPA締結によりモンゴルでの投資環境は改善の兆しが見えつつあることが調査の結果明らかになりました。
モスクワ~ユジノサハリンスク
ロシアの首都モスクワと同国サハリン州ユジノサハリンスクに滞在しました。モスクワでは、在モスクワ日本大使館で総合的な日露関係について外交の第一線を担う方々より詳細に教えていただきました。
サハリンでは、サハリン大学寮に宿泊しました。寮での生活は日本人でもたいへん過ごしやすい環境でした。北海道サハリン事務所、在ユジノサハリンスク日本総領事館、サハリン州立郷土博物館、サハリンエナジー社、北海道銀行支店でインタビューを行い、モスクワで得たサハリン(極東)の情報を現地でさらに詳細に伺うことができました。特にサハリンプロジェクトのLNG基地を訪問し、同プロジェクトの優れた点を発見し、私たちの研究の方向性は大きく変わりました。
サハリン大学ではロシア語のレクチャーを受けさせていただきました。ロシアでロシア語を学ぶことは、日本でロシア語を学ぶのとはまた違ったもので、貴重な体験ができました。ロシアでの滞在は私たちの研究に大いに役立ったのと同時に研究における外国語習得の重要性を改めて実感しました。
モスクワ
ユジノサハリンスク
北海道
9月9日には北海道庁で3グループに分かれて海外実習で得た知見をもとに調査報告会を行いました。お忙しい折にもかかわらず、北海道庁の方々から、私たちの研究報告に対して、貴重なご意見をたくさん得ました。また北海道議会議員より1990年代の日本の対ロ・対モンゴル外交について当時のお話を伺う機会を得ました。史料収集で訪れた北海道大学スラブ・ユーラシア研究センターでは、豊富なユーラシア・スラブに関する資料が所蔵されており、私たちのこれからの研究に役立つ史資料を多く得ることができました。
上記のとおり、今回の海外でのリサーチ・インタビューや見学などの現地調査は非常に実りの多いものでした。今回の現地調査で得られた知見をもとに、これからの研究をさらに豊かにしていきます。
2015.10.01
海外・国内特定プロジェクト(GLO演習)ベトナム
政策科学部2回生の小集団演習科目である海外・国内特定プロジェクト(GLO演習)では、2015年度にベトナム研究プロジェクトを設定しました。ベトナム研究プロジェクトは、今年度で3年目になりますが、GLO演習として新しいスタイルで出発しました。演習の研究テーマとして、「ベトナム・ホーチミン市における環境汚染の現状と改善」を設定し、1年間に渡り研究するとともに、「グローバル言語科目」(LGA: Languages for Global Actions)として、ベトナム語を学んで参加しました。1986年に行われた「ドイモイ(刷新)政策」により急速に発展を遂げたベトナムの大都市ホーチミン市では、近年、都市化・工業化による環境汚染の問題が深刻化しています。ホーチミン市の「水質汚染」、「廃棄物問題」、「大気汚染」の3つの環境問題に焦点を当て、環境汚染問題の根本的な解決には市民の環境に対する意識の向上が不可欠であると考え、“市民への啓蒙”を主とした環境政策的提言を研究目的としました。7名の受講生が2015年9月7日~13日に渡り、引率教員の仲上健一政策科学部特任教授、田原洋樹立命館アジア太平洋大学准教授とともに、ホーチミン市、カントー市を中心に訪問調査を行いました。以下に調査日程に従って、調査内容と研究成果を紹介します。これまでのベトナム調査では、ハノイ・フエ・ホーチミンと長期間にわたるものでしたが、今回はホーチミンを中心としたメコンデルタ地域調査に焦点を当てました。毎日ハードなスケジュールでしたが、実り多い楽しい調査でした。
- 9月7日に、関西空港からホーチミンのタンソンニャアット空港へ、6時間のフライトで無事に着きました。市内中心部のRoyal City Hotelにチェックイン後、アオザイの仕立に出かけました。すっかり、ベトナム気分に浸り、いよいよ調査開始です。ホテルは、ホーチミンの中心街で、ベトナムの中で最も輝いている観光拠点です。
- 8日は、メコンデルタの都市ミトーに向けて、バスでホテルを7:00に出発しました。メコン河クルーズでメコンデルタの河川流況・植生・観光・人々の生活について実感できました。ミトーからバスでカントーに移動しましたが、途中、スコールで、カントーに着いた時には道路が冠水していました。9月はベトナムの雨季です。
- 9日は、6:30にカントー大学の国際課職員NGUEN THI HUYENさんのご案内で、メコン河のクルーズを行い、日本のODAで建設されたカントー橋を船上から視察し、水上市場、農場など訪問しました。ベトナムは、豊かな農業国家であり、その中心都市がカントーです。今、ベトナムでは農業の重要性が再認識されています。 カントー大学LE VIET DZUNG副総長以下、各学部長のご参加のもとで、学生による研究発表が行われました。立命館大学学生による瑞々しい英語による研究発表と真摯な発表態度に共感を持たれ、本来なら20分程度の会見予定が、2時間弱に渡る熱心な議論の場となり、様々な研究提案をいただきました。副総長は、北海道大学出身で、日本についての知識も豊富で、研究テーマとしてホーチミン市の環境問題だけでなく、メンコデルタ地域及びカントー地域の環境問題(騒音・地下水等)にも関心を持ってほしいと学生を励ましてくださいました。
- 10日は、ベトナム南部のビンズオン省において,下水道システム(管渠・中継ポンプ場,下水処理場(17,000立方メートル/日)等)の整備・拡張について、下水処理場整備等のコンサルティングサービスに携わっておられる(株)日水コンの勝木隆昌氏を訪問しました。LE VAN GON副所長による挨拶と、ビデオによる下水道プロジェクトの概要の説明がありました。ホーチミン市の中心を流れるサイゴン川の水質環境保全のために重要なプロジェクトであり、日本のODAの重要性を認識するとともに、運営の会社であるBIWASEについて関心を持つことができました。 勝木氏より下水道工事の現場視察、ご高話を頂き、サイゴン川の環境保全の重要性を認識しました。また、勝木様には、海外で働くことに意味について、学生に情熱をもって語られ、学生も感動を覚えていました。
- 11日は、トン・ドゥック・タン大学(ホーチミン市第7区)を訪問しました。大学の代表として、TRAN TRONG GIANG先生の歓迎を受けました。引き続き、国際部職員による大学紹介の後、立命館大学学生による研究発表、学生発表に対して、トン・ドゥック・タン大学の学生との個別ディスカッションが行われ、英語による活発な意見交換とともに交流も行われました。その後は、トン・ドゥック・タン大学の学生による学内施設(図書館)の案内があり、交流が深まりました。午後は、在ホーチミン市日本国総領事館を表敬し、三宅妙子領事を囲んで勉強会を行いました。まず、三宅領事より、ホーチミン領事館の活動内容の紹介があり、その後学生は「自分が見たベトナム」について報告を行い、三宅領事より一人ずつの報告に対して、懇切丁寧なコメントを頂きました。午後3時30分から6時15分の165分にわたる充実した報告会でした。最後に、三宅領事から、外交官として働く意味を話していただき、学生の意識も大いに高まりました。
- 12日は、クチ・トンネルを視察しました。たんなる観光ではなく、クチはベトナム戦争の意味を考える意味でも重要な拠点です。ベトナムの環境問題を考える場合、ベトナムの歴史とりわけベトナム戦争の意味について学びました。帰りにホーチミン郊外のイオンを視察しました。日本以上に素晴らしい施設や商品内容で、今日のベトナムへの印象が変わりました。
- 13日の最後の日は、ホーチミン市中心部でアオザイ記念写真を撮影し、市内を観光しました。
今回の訪問調査先は受講生たち自身で決めた研究テーマに合わせて決定され、日本における文献調査と調査デザインを踏まえた明確な目的意識をもって現地調査に取り組みました。文献による学習だけでなく、現地を見ることにより、その実態を直接認識するとともに、大学教授、学生、そして領事による最新の動向と考えに触れ、秋からの研究意欲の盛り上がりを感じる調査旅行でした。全員が研究発表ではベトナム語で挨拶することにより、一気に距離が縮まり、研究だけでなく、人間的な触れ合いもできました。さらには、英語によるディスカッションにより、専門研究を深めることができました。語学の重要性を再認識することができました。学生同士の議論の中でメールの交換もあり、後期の研究展開に弾みがつきました。
訪問受け入れにご協力いただいた現地の大学、大使館、企業の皆様、また、準備にあたってご支援いただいた、政策科学部執行部・事務職員並びに担当していただいた旅行社の方々には、この場所を借りて厚く御礼申し上げます。最後に、ベトナム調査研究の訪問するにあたって、プラン作成の段階から、現地とのコーディネート、現地指導をしていただいたAPUの田原洋樹准教授にお礼申し上げます。

メコンクルーズ

カントー大学訪問

ビンズオン省下水処理場視察

トン・ドゥック・タン大学訪問

トン・ドゥック・タン大学における学生との意見交換

クチトンネル
2015.10.01
ラーニングシアターで学生の英語プロダクト発表会を開催しました(EPS Type-C)
EPS Type-Cでは、学習の成果物を英語でとりまとめ、役立つ日本の情報を英語で発信するというPBL(Project-Based Learning)型の授業に取り組んでいます。 "Decoding Japan Project"を実施した1回生(Project I)クラスのうち4クラス(担当:田林葉教授、池上久美子非常勤講師、木村一紀非常勤講師、渡辺文助教)では、7月にラーニングシアターでの合同発表会を開催しました。立命館大学広報ビデオBeyond Bordersシリーズへの英語字幕製作をおこなったチームが、インタビューなどの背景調査を含めた発表とビデオ上映をおこなったほか、回転寿司、和食の作法について英語でとりまとめたチームがそれぞれ工夫に満ちた発表をおこないました。会場となったラーニングシアターは、四面の壁に映しだされる映像、部屋全体に響きわたる音響、そしてアイランド型の着席構造など、さまざまな趣向が凝らされており、学生たちはダイナミックな設備を駆使しながらのびのびと発表をおこなっていました。なお“Learn to Contribute"(社会貢献)というType-Cの理念のもと、現在、一部のチームはプロダクトの公開へむけて作業を進めています。




2015.09.14
バンコク郊外のスラムが直面する退去問題について調査 (グローバル/ローカル・オンサイト演習II〔タイ・プロジェクト〕)
8月21日より9月1日にかけて、グローバル/ローカル・オンサイト演習II(タイ・プロジェクト)の一環としてタイ・タマサート大学建築計画学部でワークショップを開催しました。ワークショップには教員2名(豊田祐輔准教授、ションラウォーン・ピヤダー助教)の引率のもと、本科目受講生の6名(政策科学部専攻4名、Community and Regional Policy Studies専攻2名) が参加しました。
ワークショップの前半はタマサート大学教員や現地の行政(国家住宅公社、コミュニティ組織開発機構)、NGO(ドゥアンプラティープ財団)による講義、そして改善されたスラムを訪問し、現在のスラム改善のためのプログラムや成功要因などについて学びました。さらに、バンコク郊外のスラムを事例としてインタビュー、そしてアンケート調査を通じて改善策を提案しました。
今回の事例は、水路沿いの行政が所有する土地に不法占拠する住民に対して、洪水対策へ向けた水路の整備に伴う強制退去が大きな問題でした。本事例の課題は、住宅を購入するための行政ローンの申請にはコミュニティが一体となって貯蓄をする必要がありますが、所属格差のため貯蓄額に格差が生じ、一致団結できていない地域です。また、行政などへの不信感も大きな課題です。受講生は、他事例の教訓や本事例での調査をもとに、行政が立ち退きにあたって金銭的保障をすること、移転先として提案されているフラットをより住みやすいものとすること、そして立ち退きに伴う環境の変化が子どもの就学意識に悪影響を与えることといった、問題発見ならびに政策提言を行いました。今後は他国の事例や貧困のサイクル(貧困が次世代の貧困を再生産する)に関わる理論的側面から本事例を捉えていくことが課題です。
また、来年度より政策科学部と1セメスターもしくは1年間の交換留学を開始するマヒドン大学教養学部との学生交流や小学生への折り紙教室など、交流活動も積極的に行いました。 本ワークショップはタマサート大学建築計画学部の主催により開催されたものです。ウェルカム・パーティでの歓迎や調査へご協力いただいた先生や学生をはじめ、関係者各位にこの場をお借りして深く感謝の意を表します。
ワークショップ時の光景

タマサート大学建築学部による
ウェルカム・パーティの様子

国家住宅公社での講義

改善された元スラムの視察

マヒドン大学教養学部と共同で実施した
小学校での折り紙教室
2015.07.10
2015年度西園寺育英奨学金給付証書授与式を挙行しました
2015年7月8日(水)、2015年度西園寺育英奨学金給付証書授与式を挙行しました。
西園寺育英奨学金制度は、学業において優秀な成績を修め、学びと成長の模範となる学生を励まし、援助することを目的としています。
政策科学部から24名が2015年度の奨学生として選ばれました。
AN328号教室で政策科学部の授与式が行われ、重森臣広政策科学部長から奨学生一人一人に証書が手渡された後、祝辞が述べられました。
祝辞では、「政策科学部の人材育成目標に沿って奨学生に選ばれたみなさんは、他の学生の模範となって頑張ってほしい。各回生で取り巻く状況は異なるが、奨学生として今後も励んでほしい。」と奨学生を激励しました。
最後に記念撮影をおこない、授与式は終了しました。